65歳以上の公的年金受給者に配偶者や子等の扶養家族がいる場合、所定の要件の下、年金の「加算」を受けられる「加給年金」「振替加算」の制度があります。本記事では、年金制度に詳しい社会保険労務士の小泉正典氏が監修した『知った人から得をする! 60歳からの「届け出」だけでもらえるお金 最新版』(宝島社)より一部抜粋してお伝えします。
「もらい忘れ」は損…65歳以上で扶養家族がいる人は“要チェック”!公的年金にプラスしてもらえる「加給年金」と「振替加算」【社会保険労務士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

65歳のときに扶養家族がいれば年金が加算される「加給年金」

65歳のとき配偶者との年齢差が「5歳以上」ならもらえる

厚生年金に20年以上加入した人が65歳になったとき、専業主婦(夫)や子等の扶養家族がいると、年金に加算される「加給年金」がもらえます。

 

ただし、配偶者については、夫(妻)が65歳になった時点で妻(夫)は65歳未満であることが条件です。妻(夫)が1日でも年上の場合は支給されません。支給期間も妻(夫)が65歳になるまでと決まっています(要件は[図表1]、届出については[図表2]参照)。

 

[図表1]加給年金の支給額

 

[図表2]加給年金の受給要件と手続き

 

よって、「加給年金」がフルで支給されるのは妻(夫)が5歳以上年下の場合ということになります。妻(夫)が年下でも、1歳違い等、年の差があまりない場合は、支給される期間が短くなります。

 

「加給年金」は、「老齢厚生年金」の繰り下げ受給をするときに注意が必要です。夫(妻)が65歳のとき妻(夫)が60歳だったとしても、夫(妻)が70歳まで「老齢厚生年金」を繰り下げると、妻(夫)は65歳を過ぎてしまい、「加給年金」を受給する権利がなくなってしまうのです。

 

共働き夫婦」は妻(夫)の厚生年金加入期間をチェック

また、この年金は、妻(夫)が厚生年金に20年以上加入した期間があると、妻(夫)が65歳未満でも支給停止となります。パート等、正社員でなくても厚生年金に加入した場合もありますから、年金定期便等でチェックしましょう。

 

「加給年金」は、妻(夫)が65歳になると、夫(妻)の年金への加算が停止され、妻(夫)自身の年金に「振替加算」されます。ところが、厚生年金に妻(夫)が20年以上加入していた場合は、「振替加算」もありません。

 

ただし、夫(妻)が年下の場合、夫(妻)が65歳になるまで妻(夫)の年金に「加給年金」がつくケースもあります。この場合の夫(妻)は、「特別支給の老齢厚生年金(特老厚)」がない世代の人に限られます。

 

「特別支給の老齢厚生年金(特老厚)」とは、1986年の法改正で年金の支給開始年齢が60歳から65歳へと引き上げられた際に、経過措置としておかれた制度です。1961年4月1日以前生まれの男性と、1966年4月1日生まれ以前の女性が、60歳~64歳の間で該当する年齢から厚生年金を受給できます。

 

たとえば、妻が1958年生まれ、夫が1963年生まれで、それぞれ厚生年金に20年以上の加入歴がある場合、妻は「特老厚」を受給できますが、夫には「特老厚」の支給がないため、夫が65歳になるまで、妻の年金に「加給年金」が加算されます。なお、この場合、夫も20年以上の厚生年金加入歴があるので、この次に紹介する「振替加算」はありません([図表3]参照)。

 

[図表3]妻が年上で加給年金がつく例