現代では主流となっている「ドラム式洗濯乾燥機」ですが、洗浄力や乾燥時のシワなどの問題から、購入せずにいる人も多いでしょう。しかし、確実に“ドラム式”の性能は進化を遂げているようです。今回は、ドラム式洗濯乾燥機のメリット・デメリットと、最新機の技術の進化について見ていきましょう。
キレイに洗えてフワっと乾燥は当たり前…「ドラム式洗濯乾燥機」の次なる進化とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

ヒーター乾燥の電気代はヒートポンプ乾燥の約2倍

前述のように、乾燥機能に期待するならドラム式一択です。

 

乾燥機能を搭載した縦型の機種もありますが、ドラム式が洗濯物をフワっと持ち上げて広げながら乾燥するのに対し、縦型は構造上、遠心力で衣類が洗濯槽に張り付きやすく、そのままシワになりがち。さらに縦型の乾燥方式は、ドライヤーのように高温の温風を吹きかける「ヒーター式」のため、電気代がとても高くなります。

 

そのため縦型の乾燥機能は毎日使うのには向いておらず、天気が悪くて洗濯物が干せない日や、明日の朝必要な衣類を洗いたいときなど、スポットで乾燥機能を使いたいというケースでの利用が多いようです。

 

一方のドラム式で多く採用されているのが「ヒートポンプ式」と呼ばれる乾燥方式です。

 

ヒーターは使わず、ヒートポンプ(熱交換器)で空気中の熱を取り出し、約65℃の温風を洗濯槽内に送り込んで乾燥させるため、電気代が大幅に抑えられるのです。実際どれほど電気代が変わってくるのか、パナソニックのヒートポンプ式ドラム「ななめドラム」と、ヒーター式ドラム「Cuble」で比較してみました。

 

ななめドラム「NA-LX113CL」(洗濯・脱水11kg /乾燥6kg)の定格洗濯乾燥時の消費電力量(1回の洗濯・乾燥で使用する電力量)は960Wh、電気代に換算すると約29.8円であるのに対し、Cuble「NA-VG2800」は1980Wh、電気代にして約61.4円と2倍近くかかります(目安単価31円/kWhで計算)。

 

このように省エネでランニングコストを抑えられるヒートポンプ式ですが、日立はこれまで搭載していませんでした。日立はパワフルな高速風で衣類を乾かし、シワが少ない乾燥技術「風アイロン」にこだわりを持っており、これがヒートポンプ式との両立が難しかったのです。

 

しかしついに11月中旬、風アイロンとの両立を実現したヒートポンプ式搭載モデルが発売されます。

これからのドラム式は省手間にも注目

各社こぞって洗浄・乾燥など基本機能の向上に注力してきたことで、多くのユーザーが満足できるレベルに近づいてきています。いま進化が進んでいるのが、さらに手間を省いてくれる機能。

 

画期的だったのは、パナソニックが17年に業界で初めて導入した「液体洗剤・柔軟剤自動投入」です。あらかじめ洗剤や柔軟剤をタンクに入れておけば、洗濯物の量に適した量の洗剤・柔軟剤を自動で投入してくれるため、その都度計量して投入する手間がなくなりました。いまでは多くの洗濯機に採用されている機能です。

 

パナソニックは、タンクを1つ増やして「トリプル自動投入」へと進化。最新モデルは、おしゃれ着洗いと酸素系液体漂白剤のいずれかを投入できるようになった
パナソニックは、タンクを1つ増やして「トリプル自動投入」へと進化。最新モデルは、おしゃれ着洗いと酸素系液体漂白剤のいずれかを投入できるようになった
 

さらにお手入れの手間を軽減してくれる機能も続々登場。乾燥機能を使用すると「乾燥フィルター」にホコリが溜まるため、使用するたびにフィルターのお手入れをする手間がありますが、東芝はレバーを押すだけでホコリがかき出される「プッシュdeポン!」、シャープはフィルターのホコリを自動で取り除く「乾燥フィルター自動お掃除」を搭載しました。

 

また昨年は、日立が乾燥フィルターそのものをなくし、ホコリは排水フィルターまで流してしまう「らくメンテ」が画期的だと話題になっています。

 

以上のように、ドラム式の機能性は大きく改善されていますが、やはりネックとなるのは値段。とくにパナソニックに続いて日立も、型落ちでも値下げをしない「指定価格制度」を導入したため、値下げが期待できなくなってきました。

 

洗濯物の手間が軽減されることで捻出される時間と体力、気持ちのゆとりの価値を換算し、購入を検討してみるといいのではないでしょうか。

 

[プロフィール]

田中真紀子

家電ライター。早稲田大学卒業後、損害保険会社を経て、地域情報紙に転職。
その後フリーとなり、住まいや家事など暮らしにまつわる記事を幅広く執筆。
出産を経て、子育てと仕事の両立に悩む中、家事をラクにしてくれる白物家電、エステに行けなくても自宅美容できる美容家電に魅了され、家電専門ライターに。現在は雑誌、webにて執筆するほか、専門家として記事監修、企業コンサルタント、アドバイザー業務もこなし、テレビ・ラジオ出演も多数こなす。これまで執筆や監修に携わった家電数は1000近くに及び、自宅でも常に多数の最新家電を使用しながら、生活者目線で情報を発信している。