23年5月、福井県永平寺町で運転士や乗務員が乗っていない無人の自動運転の小型バスの運行が国内で初めて開始されました。実は、乗務員が添乗している自動運転バスはもう少し前から運行を始めており、20年9月には東京都大田区が大規模複合施設の敷地内で、また20年11月には茨城県境町が「公道」で、時刻表通りの定常運行を開始しています。このように自動運転バスは技術的にはすでに実用化のレベルに達しています。とはいえ、これが広く日常に定着していくまでには制約や課題がいくつも残されています。この記事では、自動運転バスの現状と最新動向をレポートします。
ついに“公道での無人運行”が始まった「自動運転バス」…運転士不足による影響が懸念される「2024年問題」解決のカギとなるか? (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

福井県永平寺町、国内初の「無人運転士」運行サービス開始

23年5月22日、ヤマハ発動機と産業技術総合研究所、三菱電機、ソリトンシステムズが共同で、決められたコースや敷地など、限定された条件下でのシステムによる自動運転を指す「レベル4」の無人運行サービスを国内で初めて開始しました。運賃は片道大人100円。

 

福井県永平寺町の山間部で、ほかの自動車や通行人が少ないという条件下ではあるものの、国内で自動運転バスの運行が始まった記念すべき日になりました。

 

ヤマハ発動機の小型バスを使用し、約2kmを無人で走行する (出典:4社のプレスリリースより)
ヤマハ発動機の小型バスを使用し、約2kmを無人で走行する (出典:4社のプレスリリースより)

 

「運転士や車掌がいない」と聞くと「トラブルが発生したらどうするのか」と不安に感じる人もいるのではないでしょうか。

 

「レベル4」では無人運転の条件として、遠隔監視センターのスタッフが常に車両やその周辺、乗客等の状態を自動運転バスに逃走されたカメラやセンサーで監視することが義務づけられています。そのため、車両故障はもちろん、万一の事故や車内での乗客の転倒や病気など、異常が起こると遠隔監視センターのスタッフが無線で声がけを行なったり、すぐにかけつけたりできる仕組みになっています。

 

20年9月、東京でハンドルのない自動運転バスが運行開始

上でみた永平寺町の事例は「無人運行」ですが、乗務員が添乗した自動運転バスの運行は実はもう少し前に始まっています。

 

国内で初めて定時運行(時刻表通りに運行) を開始したのは東京都大田区。20年9月22日、大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」(HICity)の広大な駐車場内で、乗客を乗せて巡回する自動運転バスの運行を始めました。 非常時には乗務員がコントローラで操作し、対応にあたるとともに、遠隔監視も行われています。

 

広大な駐車場を巡回して乗客を運ぶ自動運転バス『NAVYA ARMA』(ナビヤ アルマ) 筆者撮影
広大な駐車場を巡回して乗客を運ぶ自動運転バス『NAVYA ARMA』(ナビヤ アルマ) 筆者撮影

 

21年12月には、それまで事故なく安全に運行してきたことが評価され、次の段階として「HICity」から公道に出て、羽田空港第3ターミナルを結ぶ往復ルートを時刻表に沿って運行することになりました。

 

実績を積み上げながら、東京のような都会でも着実に「レベル4」の自動運転バスの実用化が進められているのです。

 

今後、運転士のいない「レベル4」で運行するために、現在は国土交通省 関東運輸局や東京都公安委員会、警視庁東京空港警察署からそれぞれ許認可を得るための手続きを進めているところです。

 

羽田みらい開発、鹿島建設、ソフトバンクの子会社のBOLDLY、マクニカ、日本交通の協力で実現 筆者撮影
羽田みらい開発、鹿島建設、ソフトバンクの子会社のBOLDLY、マクニカ、日本交通の協力で実現 筆者撮影