「お墓参り」と聞くと、何をイメージするでしょうか? 一般的には、墓地や霊園に行ってお墓やその周りを綺麗に掃除し、お花やお水を供え、お線香を焚き、手を合わせて故人への敬いの気持ちを伝える。こういったことを思い浮かべるのではないでしょうか。日本は古くから仏教との結び付きが強く、先祖供養が重要視されてきました。しかし、最近では若年層からミドル世代を中心に「仏教離れ」や「檀家離れ」が見られ、お墓参りのあり方にも変化が生じています。本記事では、コロナ禍を経たお墓参りの変化や、最新のテクノロジーによる新たなスタイル(お墓テック)について取り上げ、今後のお墓参りの展望を探ります。
進む「お墓参り」のテクノロジー。お墓参りの新たなかたちと変わりつつある“その意義”とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

仮想空間上の霊園も。進む「お墓」の多様化

屋内型の自動搬送式納骨堂は、都内ではすでにお墓の新しいあり方として広く受け入れられつつあります。さらに近年では、最新技術を活用した「メタバース上のお墓」や「デジタルお墓」など、より新しいスタイルのお墓が登場し始めていることをご存じでしょうか。

 

コンパクトに思い出を残しておける「デジタル墓」

「デジタル墓」(写真提供:スマートシニア株式会社)
「デジタル墓」(写真提供:スマートシニア株式会社)

 

スマートシニア株式会社が提供するのは、自宅に置けるお墓(写真立て)と、インターネット上のネット墓地(ネット墓)を組み合わせた「デジタル墓」です。

 

大切な人との想い出は、時間が経つにつれて記憶が薄れていったり、色褪せてしまったりします。デジタル墓では、小さなQRコードの付いた墓標をスマホで読み取ることで、故人との想い出の写真やメッセージ、動画などを見ることができます。自宅に置けるコンパクトなお墓として納めることができるのです。

 

通常、お墓を継承する際には、管理をする手間や費用がかかります。子や孫に負担をかけたくないという人もいるでしょう。デジタル墓であれば負担なくお墓を継承することができます。また、自然災害などの影響を受けることもありません。

 

墓石を残しておくこともできる「NFT墓」

「NFT墓」(写真提供:スマートシニア株式会社)
「NFT墓」(写真提供:スマートシニア株式会社)

 

それでも物理的なお墓を残しておきたいという需要もあるでしょう。同社は2023年5月31日に「NFT墓」というサービスをリリースしました。このサービスでは、仮想空間上の永代供養墓と物理的な納骨の併用が可能です。二つの世界を繋ぐためにお墓にQRコードを追加します。NFT墓には、墓誌(故人の事績などを墓石に書き記したもの)にメッセージ・写真・動画などを追加することができます。これまで継承してきたお墓をいきなり手放すことに抵抗がある人にも、今後物理的なお墓を手放す「お墓じまい」を選択肢の一つに入れられるようにするため、また「自然墓」(散骨・樹木葬)の継承手段としても最適です。

 

テレビモニター型サイネージシステムを利用した映像サービス

墓地開発大手の株式会社ニチリョクは、屋内型の墓の横に設置するデジタルサイネージに、家系図や故人の思い出となる映像などを表示する「家系樹」というサービスを提供しています。このサービスでは、家系図や思い出の写真・ビデオの表示、指定した開封日にメッセージが表示されるタイムメッセージ、お参り履歴などがお墓の横に映し出されます。東京都港区にある納骨堂「威徳寺赤坂一ツ木陵苑」では、このデジタルサイネージがすでに搭載されています。

日々変わり続ける「お墓参り」 選択肢が増える中、どう選ぶべきか

少子高齢化問題を抱え、家族や親族との血縁のつながりが薄れつつある日本において、今後求められるものは何か……。伝統や慣習を重んじることを重視するのか、それとも時代の流れに沿った新しい方法を取り入れるのか、意思決定は個人個人の自由に委ねられています。

 

お墓参りの需要は残り、テクノロジーが進化し続ける現代社会において、「お墓参り」や「お墓」の選択肢は今後も増え続けるのではないでしょうか。選択の幅が広がっている今だからこそ、「供養×IT」という、一件交わることが難しい分野における最適解を探り続けることが求められます。

 

 

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飯塚祐世

株式会社スタルジー代表取締役。新卒でベンチャーの WEB 制作会社にエンジニアとして就職。3 年後に介護・医療系のメガベンチャーである株式会社エス・エム・エス(東証プライム上場)に転職し、エンジニア兼マーケターとして従事。その後起業をし、WEB システム開発や WEB マーケティングを主な事業としている。

 

出典:    万松寺納骨堂

出典:    スマートシニア株式会社「新しい時代に対応する「デジタル墓」」

出典:    株式会社ニチリョク「思い出テレビ「家系樹」」