「お墓参り」と聞くと、何をイメージするでしょうか? 一般的には、墓地や霊園に行ってお墓やその周りを綺麗に掃除し、お花やお水を供え、お線香を焚き、手を合わせて故人への敬いの気持ちを伝える。こういったことを思い浮かべるのではないでしょうか。日本は古くから仏教との結び付きが強く、先祖供養が重要視されてきました。しかし、最近では若年層からミドル世代を中心に「仏教離れ」や「檀家離れ」が見られ、お墓参りのあり方にも変化が生じています。本記事では、コロナ禍を経たお墓参りの変化や、最新のテクノロジーによる新たなスタイル(お墓テック)について取り上げ、今後のお墓参りの展望を探ります。
進む「お墓参り」のテクノロジー。お墓参りの新たなかたちと変わりつつある“その意義”とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

お墓参りの需要は増加傾向に。その背景にあるのは

お墓参りは、亡くなった方の冥福を祈るとともに感謝の気持ちを表現する行為で、その意義や重要性は、日本人の間でこれまで脈々と受け継がれてきました。

 

著者が2023年7月に全国に住む20~50代の男女400人を対象に行ったアンケートでは、「過去1年以内にお墓参りに行きましたか?」という質問に対して67%の方が「はい」と回答しています。また、そのうち過去1年間に2〜3回お墓参りをした人が半数近くを占めることがわかりました。

 

 

 

この結果からも分かる通り、現代でもお墓参りの需要はあることが分かります。お墓参りの重要性は、依然として多くの人々に認識されているようです。

 

一方で、お墓参りに積極的に行かないという人々も存在します。その理由として、「感染リスクへの懸念」や、「元々お墓参りをする習慣がない」という意見が挙げられました。そのうち、最も多く挙げられた理由は「お墓が遠い・移動手段がない」という回答でした。

 

確かに、郊外にあるお墓は、場合によっては何時間もかけて車を走らせ、山道を登っていかなければならないケースもあるようです。そのため、高齢者や移動手段が制限されている人々にとって、お墓参りはハードルが高くなってしまう傾向にあります。

 

「屋内型納骨堂」自体は以前からありますが、最近はさまざまな進化を遂げていることも選ばれている理由のようです。

都市部の「屋内型納骨堂」…人気の理由は?

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「屋内型納骨堂」は、東京都などの都市部や駅周辺に多く存在し、お墓の新たな形態として広く受け入れられています。

 

最大の特徴は、従来の墓石でできたお墓とは異なり、室内に納骨スペースを備えていることです。普段は収納棚に保管されている遺骨を納めた厨子(ずし)が、参拝スペースにあるパネルにICカードをかざすことで、参拝者の元まで自動的に運ばれてくる「自動搬送式」となっています。高さや奥行きの空間を有効活用することで、限られた用地内により多くの区画を設けることが可能となっています。

 

室内に保管されているため、従来のお墓のように清掃をしたり、草むしりをしたりといった定期的なメンテナンスが不要です。また、 アクセスの良い駅近のビルに建てられていることが多いため、天候にも左右されることなく気軽にお墓参りに行くことができます。

 

さらに、屋内型納骨堂は最新の技術を取り入れやすく、時代に合わせたスタイルを実現しやすいという特長もあります。例えば、愛知県名古屋市にある万松寺の納骨堂では、入館の際に顔認証システムを搭載。エントランスに設置されているモニターで顔を認証すると受付表が発行され、入館できるシステムとなっています。また、会員登録すると顔認証の際にポイントがたまり、線香やお花に交換できるといったサービスも提供されています。参拝スペースでは液晶ディスプレイ上に戒名や遺影が映し出され、そこで参拝が行われます。賽銭箱もデジタル化されており、キャッシュレスで支払いが可能です。

 

屋内特有の利便性に加えて、最新の技術を取り入れてさらに利便性を向上させ、快適な環境を提供できることから、屋内型納骨堂は人気を集めています。著者が行ったアンケートでは、「屋内型納骨堂を知っている」と回答した262名のうち67%にあたる175名が、「従来のお墓よりも魅力的だと思う」と回答しました。

 

こうした結果からも、都市部の屋内型納骨堂に対する需要は今後も高まっていくと予想されており、お墓参りのあり方や意識に変化が生まれていることを示唆していると言えます。