四肢障がいをサポートするテクノロジーとは
音声操作の一般化や、公共交通機関・街中のバリアフリー化により、四肢障がいをもつ人のサポート体制は目に見えて進歩していますが、極めて限定的であるのもまた事実です。
手足の不自由な人をサポートするテクノロジーを見ていきましょう。
手指による操作が難しい人のキーボード「KEY-X(キーエックス)」
「KEY-X」は縦約30センチ✕横約30センチの正方形のパネルに、直径およそ5センチ弱の大きなボタンが11個のみ設けられている、パソコンやスマートフォンを入力するためのキーボードです。
一般的なキーボードと比べてボタンが大きく、間隔が広いため、手や指の細かい操作が苦手な人でも操作しやすいのが特徴。脳性麻痺、パーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー、ダウン症、自閉症といった人の利用を想定して開発されました。
ボタンは軽い圧力で反応するうえ、強く押しても壊れにくく、足を使った操作も可能です。さらに、まばたきを認識するデバイス「a-Blin-X」などの拡張機能も用意されており、利用者の幅が広いのが特徴です。
美の自己表現のためのビューティーテック「HAPTA(ハプタ)」
メイクアップのような指先の細かな動作が難しい人は、世界におよそ5,000万人いると言われています。
より多くの人がメイクを楽しめるよう開発されたのが、化粧品メーカー・ロレアルのサイエンティストとエンジニアが開発した「HAPTA」です。
手や腕が不自由な人が食事をする際に食器を安定させる、介助テクノロジーを採用しており、2023年にロレアル傘下のランコムで試験的に導入される予定です。
手や腕が不自由な人でもきれいに口紅を塗ることができるようになります。内蔵されているスマートモーション(動作)コントロール技術により、幅広い動きに対応でき、開けづらい化粧品パッケージも開封しやすく、細かいメイクの動作も可能です。
車椅子の概念を拡張する次世代モビリティ「TRANSELLA(トランセラ)」
足が不自由な人の移動手段は車椅子が主流ですが、階段を降りる、段差を乗り越えるという動作には不向きです。
最先端テクノロジーを駆使するベンチャー企業のLIFEHUBが車椅子の課題を解決すべく現在開発を進めているのは、 次世代の椅子型モビリティ「TRANSELLA」です。
現在主流の車椅子は後方に大きなタイヤ(駆動輪と呼ばれる)が2輪、前方に直径10センチ弱のキャスタ―が2輪、ついているものが主流ですが、「TRANSELLA」は直径15センチ程度の小ぶりなタイヤの4輪構造をしています。
ロボットの歩行技術を応用しており、なんと4輪でありながら2輪構造に変化することが可能です。
4輪移動の際は、座席と前輪を繋ぐレバー、前輪と後輪を繋ぐレバーが、ちょうど人間が足を膝から折り曲げて正座をしているようなくの字型をしています。このくの字型をしているレバーが天井へ垂直に伸びることで、「立ち上がる」という動作ができ、4輪から2輪に変化します。
このスタイルが加わることで小回りが格段に向上します。狭い場所、たとえばレジやカウンターでの動作や、駅のホームの移動などで力を発揮します。
また、段差を乗り越えるといった動作が得意で、エスカレーターにも乗ることができます。一般的な車椅子は大型トラック、本製品は軽自動車にたとえると、分かりやすいかもしれません。
「狭い場所」「混んでいる場所」「段差がある場所」に適応でき、利用者が歩行者とほぼ同じルートで移動可能になることが期待されます。2023年12月に発売予定です。
最新テクノロジーが人生を豊かに
身体に障がいをもつ人の日常的な不自由をサポートすることで、行動範囲や知見を広げるきっかけをつくり、人生をそっと後押ししてくれる。そんなテクノロジーが続々と登場しています。
直感的に操作や認識ができ、よりユーザーの負担を軽減できるのも最新デバイスの特徴です。今後ますますの発展に期待が高まります。
文/小沼 理
企画から執筆・編集まで多彩なメディアのコンテンツ制作に携わる編集プロダクション・かみゆに所属。得意ジャンルは日本史、世界史、美術・アート、エンタテインメント、トレンド情報など。