少子高齢化や都市への人口一極集中などを背景に、過疎化した地方などでは公共交通機関の利便性が低下し、移動を制約されている「交通弱者」が増加し、社会問題となっています。その解決策のひとつとして考えられるのが、「MaaS(マース)」です。MaaSとは、複数の交通公共機関やカーシェアなどのサービスを組み合わせ、ITの力を使って予約から決済まで一括で行えるようにする画期的な仕組みです。本記事では、そんなMaaSを通じて、公共交通機関の利用者に新たな利便性を提供し、また気軽に活用できる「MaaSアプリ」についてご紹介します。
都市の「渋滞」と地方の「交通弱者問題」を一度に解決!?「MaaSアプリ」が叶えるサステナブルな未来 (※写真はイメージです/PIXTA)

JR西日本が開発したMaaSアプリ「WESTER」

交通機関ではMaaSを重要な経営課題と捕らえ、大手鉄道会社を中心にMaaSを推進しています。

 

JR西日本は2023年2月22日、観光型MaaS「setowa(現:tabiwa by WESTER)」に続き、MaaSアプリ「WESTER」をリリースしました※3。スマートフォンに「マイ駅登録」や「マイ区間登録」などをしておけば、間もなく到着する列車や周辺の列車走行位置などの情報に、すぐにアクセスできます。

 

全国の経路検索機能、ネット予約サービスとの連携によって、移動のプランニングや列車予約もワンタッチで可能に。最寄り駅や現在地周辺駅の平日・休日別の混雑度傾向も確認できるほか、イベント・スポット情報やそれに関連した経路検索もスムーズにできます。さらに、利用先の駅周辺で使えるクーポンも配信されるなど、機能が充実しています。

 

また、JR西日本は2023年3月からグループ共通の新たなポイントサービス「WESTERポイント」の新規会員受付をスタート。「J-WESTポイント」や「ICOCAポイント」といった、既存のグループのポイントサービスを統合するそうです。

 

「WESTERアプリ」には、ポイントカード機能が搭載されています。たとえば、グループのショッピングセンターやホテル、駅ナカ店鋪などで提示したり、ネット列車予約サービスを利用したりすると、料金の約1%分のポイントを獲得できるとのこと。貯めたポイントを1ポイント=1円相当として、店鋪やネットサービスで使ったり、商品に交換したりするほか、グループの交通系ICカード「ICOCA」へのポイントにもチャージできます。

 

つまり、WESTERは、交通手段や関連サービスを一体化させるMaaSの機能だけでなく、ポイント機能を拡充することによって、キャッシュレス決済の推進につながっているのです。

 

さらに、4月からはWESTERのアップデート版も提供されるようになりました。

アップデート版では、

 

1.WESTERポイントが貯まる・使える機能

2.予約履歴から再予約できる機能

3.WESTERのIDを作成してICOCAの番号を登録する機能

4.スタンプラリー実績の端末引継ぎ

 

という、4つの機能を追加したとのこと。ポイントが貯まる・使える機能には、WESTERポイントの付与・利用ができる会員証も表示できるようになるそうです。

 

なお、JR西日本は2023年3月、顔認証機能を使ったチケットレス・ウォークイン型の自動改札機を大阪駅に設置しました※4。これもMaaSの一環と位置づけられています。