「タクシー配車アプリ」は、少子高齢化や担い手不足が進む日本において、ラストワンマイルの移動を効率化させる手段として期待されており、手を挙げて空車のタクシーを探す手間を省いたり、キャッシュレス対応を促進させるなど、利用者に便利さとスムーズな移動体験を提供しています。近年ではAIを活用した配車サービスの登場により、タクシー配車アプリの利便性が高まり、今後さらに普及していくことが予想されます。本記事では、タクシー配車アプリの現状やAIによるタクシー配送がタクシー業界全体の未来に与える影響について紹介していきます。
「すぐに乗れる」を実現する「タクシー配車アプリ」──AIの活用で高まる利便性とタクシー業界に“与える影響” 写真提供:GO株式会社

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

「タクシー配車アプリ」の国内シェアNo.1は「GO」

 

正確な現在地が分からなくても、スマホの位置情報を活用してタクシーを呼ぶことができる「タクシー配車アプリ」。あらかじめ決済方法を登録しておけば、タクシー降車時に支払いをする必要がないなど、さまざまな便利な機能が搭載されており、首都圏や都市部を中心に利用者が増えています。

 

タクシー配車アプリが世界的に普及し始めたのは、2010年にアメリカで配車サービスを開始した「Uber」がきっかけでした。日本では2011年にJapan Taxi社が開発したタクシーアプリを皮切りに、2014年には「Uber」が日本に上陸、さらに2018年には中国企業とソフトバンクの合弁会社が「DiDi」を開発するなど、さまざまなタクシー配車アプリのサービスが展開されてきました。現在、タクシー配車アプリの利用者数は、2020年に「JapanTaxi」アプリと「MOV」が統合して誕生した「GO」が一番多く、2位が「DiDi」、3位が「Uber」となっています。

 

タクシー配車アプリのAI活用も進んでおり、「GO」と「S.RIDE」ではAIによる予約サービスが提供されています。「DiDi」でも、AIを使った高度な分析と予測テクノロジーを活用し、タクシーに乗りたい人と乗せたい人をスムーズにマッチングするシステムを実現しています。

AIを活用したタクシー配車アプリの仕組み

 

ここからは、代表的なAI活用アプリの「GO」と「DiDi」について解説します。まず「GO」についてです。タクシーアプリ「GO」は、配車機能の特徴として高度な「配車ロジック」があります。タクシー車両1台1台のリアルタイムの位置情報をベースに、AIを活用したアルゴリズムでアプリユーザーと近くのタクシー車両をマッチングさせています。

 

また、2020年9月にアプリがリリースされてから2ヶ月後、新たな機能として「AI予約」機能(当時「希望日時配車」機能として開始)をリリースしました。「AI予約」機能とは、利用者の希望した日時に合わせてタクシーを手配できる機能です。時間帯に限らず、予約した日時にタクシーが自動で配車されるため、機能のリリース後2週間ほどで約10,000件の利用実績を達成しました。

 

これまでのタクシーの配車予約では、タクシー利用者がどこまで・いつまで乗車するか事前に把握することは難しく、予約を受ける際には車両と乗務員の待機時間を余分に見積もる必要があり、注文があっても実際には配車できないといったケースが多くありました。「GO」の「AI予約」では、AIが指定時間前後に手配できる車両の数を予測し、注文を受ける仕組みを実現させ、従来の10倍以上の注文件数が受けられるようになっています。

 

例えば、同じ「8時台」という時間帯でも、「8時ちょうど」と「8時半付近」では供給量が異なるなど、細かい状況の違いもAIの技術で把握することができます。AIによって予測される供給量に応じて注文を受けることで、希望の時間に合わせた配車を実現しました。

 

「DiDi」は、細かな業務にも一切人の手を介さず、100%AIによって配車を完了させているのが強みです。また、日本だけでなく海外を含めた1000都市以上で利用されているのも特徴です。アプリから配車の希望があれば、AIが一番早く配車できる車両を瞬時に把握してマッチングします。平均5分という素早いマッチングは、AIの高度な分析・予測機能を活用しており、稼働率の向上を実現しています。