ここ数年で炊飯器の高級化が進み、10万円を超える炊飯器も珍しくなくなってきました。高い分、“究極においしいごはん”が炊けますが、その一方で日本の米消費量は年々減少しています。そんな今、かつての炊飯習慣を取り戻すためにアプローチしたいのは、特に米離れが加速する若年層の単身者です。今回は、そんな昨今の炊飯器事情と、今注目のIoT炊飯器をご紹介します。
日本人の米離れは炊飯器で解決できる?水や米の軽量不要…。炊飯器の「新たな進化」 (※写真はイメージです/PIXTA)

 

水と米の計量不要! 外出先からごはんが炊ける炊飯器に注目

パナソニックの「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」
パナソニックの「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」

 

こうした時流の中、新たな炊飯習慣を生み出すと期待されるIoT炊飯器がパナソニックから登場しました。これは、アプリを操作するだけで、水と米を自動で計量してごはんを炊き始めてくれるという、業界初の「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」です。これがあれば、あらかじめ準備をしておかなくても、外出先からごはんを炊くことができます。

 

「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」の米タンク
「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」の米タンク

 

事前の準備は、米タンクに無洗米を2kg(13.3合)まで、水タンクに600mlの水を入れておくだけ。あとは本体と連携した専用アプリ「キッチンポケット」で、炊きたい量を0.5合〜2合から0.25合刻みで選び、炊き上がり時間を選ぶか、「今すぐ炊飯する」を選んで、「炊飯を開始する」をタップすれば、約55分で炊き上がります(通常の炊飯モード「銀シャリ」の場合)。

 

「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」と連携した専用アプリ「キッチンポケット」の操作画面
「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」と連携した専用アプリ「キッチンポケット」の操作画面

 

これらの機能は、単身者が炊飯器に対して抱えていた悩みを解消し、ごはん離れを食い止める可能性を秘めています。そもそも、帰宅後すぐにごはんを食べたいなら、朝、炊飯予約をしておけばいいわけですが、忙しい朝に米や水を正確に計量して予約するのは面倒です。また、予約時間が長くなると、水に浸ける時間も長くなり、水を吸いすぎて味が落ちる場合もあります。さらに、炊飯予約をしておいても、帰宅が遅くなったり、急に外食することになったり、予定通りにいかないことも多いでしょう。

 

その点、自動計量IH炊飯器なら、事前に予約しておいても、米と水が内釜に送り込まれるのは炊き始める直前なので、浸水しすぎる心配はありません。また、予定が変更になった場合は、外出先からアプリで炊飯時間を変更したり、キャンセルすることもできます。このときも、まだ米は水に浸されていないのでムダになりません。炊き上がったら、内釜をそのままおひつのようにテーブルに持って行けるのも便利です。

 

肝心な味については、IH式なだけあって、しゃっきりした粒感と甘みが感じられ、通常のIH炊飯器で炊いたごはんと遜色ありません。おそらく、水と米が正確に計量されることも、おいしく炊けるポイントでしょう。炊きたいときに外出先からごはんが炊けることの利便性は、米離れが進む若年層が炊飯習慣を取り戻す大きなきっかけになると実感しました。

 

 「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」で炊き上げたごはん

「自動計量IH炊飯器 SR-AX1」で炊き上げたごはん

これからの炊飯器は、おいしさだけでなく利便性も追求

炊飯器メーカーはこれまで、「昔ながらのかまどで炊いたごはん」をもっともおいしいごはんと位置づけ、さまざまなアプローチで炊飯器を開発してきました。現在では、かなり高いレベルでおいしさを競い合っており、もはやこれ以上行きつくところはないのではないかと思ってしまうほどです。こうしたなかで次に目指すのは、“究極の味”ではなく、毎日の食生活に寄り添ってくれる炊飯器です。今回取り上げた炊飯器たちは、今の時代に求められている炊飯器の概念が形になったものといえるのではないでしょうか。

 

 

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田中真紀子

家電ライター。早稲田大学卒業後、損害保険会社を経て、地域情報紙に転職。

その後フリーとなり、住まいや家事など暮らしにまつわる記事を幅広く執筆。

出産を経て、子育てと仕事の両立に悩む中、家事をラクにしてくれる白物家電、エステに行けなくても自宅美容できる美容家電に魅了され、家電専門ライターに。現在は雑誌、webにて執筆するほか、専門家として記事監修、企業コンサルタント、アドバイザー業務もこなし、テレビ・ラジオ出演も多数こなす。これまで執筆や監修に携わった家電数は1000近くに及び、自宅でも常に多数の最新家電を使用しながら、生活者目線で情報を発信している。