2020年、新型コロナウイルス感染症の流行により、世界中の美術館が休館を余儀なくされました。パンデミックのなか、開発が進んだのが「バーチャルミュージアム」です。スマートフォンやPC、タブレット端末を使って、いつでも・どこからでもアート作品を楽しめるシステムです。外出が制限されるなか、自宅で美術を鑑賞できる方法を提供し、多くの人々を元気づけました。本記事ではその魅力に迫ります。
スマホで手軽に楽しむ「バーチャルミュージアム」──いつでも・どこでも美術館巡りが可能に? (※写真はイメージです/PIXTA)

個性あふれる「バーチャルミュージアム」

 

[図2]

 

美術館の来館者数がコロナ禍以前の状態に戻りつつある現在も、「バーチャルミュージアム」はサービスが中止されることなく、むしろより多くの美術館が採用しはじめています。ここからは、各美術館の個性あふれる「バーチャルミュージアム」の一例を紹介しましょう。

 

来館者数世界No.1のルーヴル美術館が公開した「バーチャルツアー」

来館者数が毎年世界ナンバーワンを誇り、所蔵作品は約38万点、展示作品は3万点と「1週間かけても見きれない」といわれているのが、ルーヴル美術館です。レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ=リザ」が所蔵されていることでも有名ですね。

 

ルーヴル美術館は公式ウェブサイトで「バーチャルツアー」というページを公開しています。展示室のパノラマ写真を繋ぎ合わせて作ったブラウザ上の空間で、ユーザーはGoogleストリートビューのように視点や方向をタップやフリックで操作しながら、自由自在に歩き回ることができます。

 

バーチャルツアーには5つのコースがあり、「芸術家の降臨」「動く体」などテーマに沿った展示室を鑑賞できます。レンブラントやドラクロワなど、著名な芸術家の作品もじっくり見ることができます。

 

・ルーヴル美術館「バーチャルツアー」

https://www.louvre.fr/en/online-tours

 

建築業界向けビジネスを行う企業が構築した「バーチャルミュージアム」

コロナ禍で急速に普及した「バーチャルミュージアム」ですが、国内での浸透に貢献した企業が「Matterport」です。

 

Matterportは空間を3Dスキャニングし、デジタルデータ化するサービスを提供している企業です。主に建築・不動産業界向けに、完成後の建物のイメージ図や、オンライン上での内見などを手掛けています。このMatterportが、展示室をスキャンし、「バーチャルミュージアム」を構築するサービスを多くの美術館に提供しました。

 

実際にMatterportが作成した「バーチャルミュージアム」の一つが、森美術館(東京都)の特別展「未来の芸術展」です。この特別展では、美術館全体の3D模型が画面上に現れ、好きな展示室を選択できます。展示品をタップすると解説テキストのほか、作品によってはYouTubeにアップされた動画が埋め込まれており、学芸員のギャラリートークを視聴できます。

 

Matterportが制作した「バーチャルミュージアム」にはVR機器との連携機能も備わっており、VRゴーグルを使えば、実際に美術館に入り込んだような臨場感あふれる体験が可能です。

 

・森美術館「未来と芸術展」3Dウォークスルー特別公開

https://www.mori.art.museum/jp/digital/03/