2020年、新型コロナウイルス感染症の流行により、世界中の美術館が休館を余儀なくされました。パンデミックのなか、開発が進んだのが「バーチャルミュージアム」です。スマートフォンやPC、タブレット端末を使って、いつでも・どこからでもアート作品を楽しめるシステムです。外出が制限されるなか、自宅で美術を鑑賞できる方法を提供し、多くの人々を元気づけました。本記事ではその魅力に迫ります。
スマホで手軽に楽しむ「バーチャルミュージアム」──いつでも・どこでも美術館巡りが可能に? (※写真はイメージです/PIXTA)

その他の「バーチャルミュージアム」

「バーチャルミュージアム」のプラットフォーム「MU」

「バーチャルミュージアム」「MU」は、日本の複数の美術館が提携し、それぞれの収蔵品をオンラインで鑑賞できるプラットフォームです。一つのサイトで複数の美術館の作品を見られるのが特長です。

 

「MU」では、美術館の特別展のように、特定のテーマに沿った企画展が常時開催されています。その中には「MU合同企画展」と題して、世界各地の美術館の作品を一堂に集めた展覧会も行われています。2023年4月28日から6月25日までの期間では、「お酒とアートに、ほろりと酔う」というテーマの企画展が開催され、アメリカ・ヨーロッパ・日本など、各地の美術館に所蔵されている「お酒」を描いた作品が展示されました。

 

・MU

https://museum-u.com/

 

江戸庶民になって、江戸の街を駆け巡る!

2025年度まで大規模工事のため休館中の江戸東京博物館(東京都)が公開したアプリ「ハイパー江戸博Hyper Edohaku」は、ゲーム制作会社ライノスタジオとの共同開発で生まれた「バーチャルミュージアム」です。現在、「江戸両国編」と「明治銀座編」の2種類が公開されており、それぞれ江戸東京博物館に展示されている江戸時代の両国・明治時代の銀座の町並みの模型が3Dで再現されています。

 

プレイヤーは町の中に隠された江戸東京博物館の所蔵作品を探していき、すべての作品を回収すればゲームクリアとなります。見つけた作品をタップするとキャプション(説明文)が表示され、江戸庶民の暮らしやカルチャーも学ぶことができます。作品だけでなく、ゲームプレイと直接関係のないモブキャラクターも実際の浮世絵に描かれている人物を再現しているなど、細かな作り込みがなされています。

 

ただ作品の写真を見るだけではなく、ゲームをプレイしながらのアート体験ができる点も、「バーチャルミュージアム」ならではの楽しみ方ですね。

 

・江戸東京博物館「ハイパー江戸博 Hyper Edohaku:江戸両国編」

https://hyper.edohaku.jp/ryogoku/

 

・江戸東京博物館「ハイパー江戸博 Hyper Edohaku:明治銀座編」

https://hyper.edohaku.jp/ginza/

 

目覚ましい発展を続ける「バーチャルミュージアム」

 

[図3]

 

今回はスマホで見られる「バーチャルミュージアム」をいくつか紹介しましたが、「バーチャルミュージアム」は現在も進化を続けています。メタバース(インターネット上につくられた仮想空間)にギャラリーをつくるもの、AR(拡張現実)機能を使って自宅の壁などに芸術作品を再現させる試みなど、新たな取り組みが行われています。また、現代アーティストが個展を開くなど、アーティスト側の新たな作品発表の場としても活用が期待されています。

 

普段美術館に行かない方も、ぜひ「バーチャルミュージアム」で気軽にアート体験をしてみてはいかがでしょうか。

 

 

<出典>

美術手帖「名作を自宅で鑑賞。世界の主要美術館・ギャラリーが実施するオンラインビューイング&バーチャルツアーまとめ」

Advalay「Matterportで作るバーチャル美術館が超話題!その効果や特徴とは」

【新しいサービスをローンチ】ミュージアムとあなたをつなぐオンラインプラットフォーム「MU(ミュー)」が誕生PRTIMES

「手の中に江戸を」。江戸の生活や文化をスマートフォンで楽しむ体験型アプリ「ハイパー江戸博」誕生!

美術館やハイブランドが「どうぶつの森」に 任天堂との深い関係

 

 

[プロフィール]

中村蒐

 

企画から執筆・編集まで多彩なメディアのコンテンツ制作に携わる編集プロダクション・かみゆに所属。得意ジャンルは日本史、世界史、美術・アート、エンタテインメント、トレンド情報など。