複雑で深刻な社会課題である「食料廃棄」。その解決に向けて世界中で様々な取り組みが行われています。近年では各企業が技術開発に注力し、より効果的な手法が模索されています。日本では、パナソニックホールディングスや東芝グループが最新技術を駆使し、独自の取り組みを行っています。こうした技術の進歩が、食品ロス削減に貢献する可能性が高まっているのです。
果物・野菜の熟度が1秒で明らかに?技術革新がもたらす「食品ロス問題」解決への希望 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本企業が打ち出した最新技術による食品ロス削減の可能性

2023年3月末、パナソニックホールディングスは冷凍させた食品を乾燥させる「常圧凍結乾燥技術」を発表。「未来の食プロジェクト」と名付けられたこの技術開発プロジェクトは、京都大学などとの共同実験で行われました。

 

この技術は、食品の鮮度を保ちながら乾燥を制御することが可能です。出来上がった乾燥食品は常温で長期保存ができ、また従来の乾燥技術では実現困難だった食品の豊かな風味や食感を保持します。

 

パナソニックホールディングスでは、この技術を用いて「料理を科学する」をテーマに掲げる料理作家のフードラボ・KYOTO SNT LAB.メンバーの中村元計氏、才木充氏、髙橋拓児氏とも協働。常圧凍結乾燥技術の新たな価値創造に取り組みました。

 

この技術は今後、和食の海外展開や、機内食、宇宙食、災害食などへの展開が期待できるほか、これまで廃棄されてきた規格外の青果物や未利用魚などを乾燥食品に加工することで、食品ロス削減にも貢献することが期待されています。

 

見た目も鮮やかな色をした苺は、乾燥させても風味が豊か(写真提供:パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社)

 

常圧凍結乾燥技術によって、フリーズドライでは従来実現が難しかったしっとりとした食感も再現できるようになりました。管理面においても、従来のフリーズドライでは必要だった真空状態と複雑な管理技術が不要となりました。

 

食品にもよりますが、常温保存が1カ月可能となる場合もあり、このような特長から、食品ロス削減への期待も高まっています。

 

さらに、「未来の食プロジェクト」では、その一環として、レトルト食品にこの技術を活用・販売することもすでに決まっています。第一弾となる今回は、常圧凍結乾燥技術を用いた乾燥食品のプロトタイプとして「鰻の炊き込みご飯」「雑炊」「ぜんざい」の3品を完成させました。なお、「鰻の炊き込みご飯」は、家電と食のサブスクリプション「foodable」で限定販売を予定しているとのことです。

 

器に入れて湯を注げば、たちまち雑炊が出来上がる(パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社)

 

東芝グループは、今年1月、サッポロホールディングスらと協力して、フードロス削減のためのスマートフォンアプリを開発しました。このアプリでは、電子レシートサービスを利用して、購入した食品のデータをアプリに登録します。すると、アプリが登録データを分析し、フードロスを防ぐためのレシピや食生活の提案をしてくれます。提案が実行されると、連携するスーパーでポイントがもらえる仕組みです。

 

東芝グループは、すでに100名のモニターによる実験を実施。同社の担当者によると、モニター参加者からは食品の廃棄量が減ったという声がたくさん届いているといいます。今後、このサービスは本格的に一般ユーザーに提供される予定であり、家庭での食品廃棄問題の解決に貢献することが期待されています。