複雑で深刻な社会課題である「食料廃棄」。その解決に向けて世界中で様々な取り組みが行われています。近年では各企業が技術開発に注力し、より効果的な手法が模索されています。日本では、パナソニックホールディングスや東芝グループが最新技術を駆使し、独自の取り組みを行っています。こうした技術の進歩が、食品ロス削減に貢献する可能性が高まっているのです。
果物・野菜の熟度が1秒で明らかに?技術革新がもたらす「食品ロス問題」解決への希望 (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

世界を取り巻く食品ロスの現状

飢餓は一部の国で依然として深刻な課題となっていますが、先進国ではむしろ食糧の過剰供給が問題視されており、多くの食糧が廃棄されている現状にあります。食べ残しや売れ残り、賞味期限が迫った食品など、まだ食べられる状態の食品が廃棄され続けてきました。

 

この問題は「食品ロス」と呼ばれ、FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によれば、世界全体で年間約13億トンもの食糧が廃棄されています。これは、世界の食糧生産量の1/3に相当します。

 

日本でも年間約612万トンもの食料が破棄されており、この量はじつに東京ドーム5つ分に相当します。これは国民一人あたりが毎日茶碗1杯分の食糧を捨てている計算になります。

 

日本における食品ロス問題には、大きく2つの要因があります。まず一つは、スーパーやコンビニなどの小売店や飲食店での売れ残りや食べ残し、売り物として規格外となり廃棄された食品です。これらは事業系食品ロスと呼ばれ、約328万トンが計上されています。もう一つは家庭における料理の作りすぎや買っても使わずに捨ててしまうケースなどで、これを家庭系食品ロスと呼び、約284万トンも計上されています。

 

じつは開発途上国でも、飢餓と並行して食品ロスが存在していることをご存じでしょうか。開発途上国では、育てた作物が技術的に収穫できない、インフラの不備により市場に出る前に腐ってしまうなど、先進国とは異なる理由があります。

 

世界の人口約77億人のうち8億人以上が十分な量の食糧を得られず、栄養不足で苦しんでいます。一方で、日本を含めた先進国では、余った食糧を大量に捨てている現状があります。

 

国連の世界人口推計2019年版によれば、2050年には、世界人口は現在よりも20億人増えると予測されています。世界の人口増加に伴い、食糧不足の問題は間違いなく加速するでしょう。この危機的状況は、開発途上国だけでなく、やがて先進国にも波及することは確実です。このような現状を打破するべく、各企業による技術を駆使した取り組みが始まっています。