新薬を開発する「創薬」は研究着手から販売に至るまで長い年月がかかることが一般的であり、その成功率は2〜3万分の1といわれています。そのようななか、研究プロセスを自動化し、ビッグデータの分析を正確に行える「AI」を活用することで、創薬分野における既存課題が解決できるのではないか、という可能性に期待が集まっています。「創薬×AI」が今後発展することにより、私たちが受けられる医療はどのように変わるのでしょうか?
人工知能が難病の新薬を開発?AI活用で変わる「創薬の世界」 (※写真はイメージです/PIXTA)

難病が治る、医療費が下がる…AI創薬の発展がもたらす未来

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

創薬分野にAIが活用されることで、どのようなことが可能になるのでしょうか。

 

1.難病に対する新薬の開発

もっとも望まれるのは、これまで治療薬がなかった難病に対する新薬の開発です。現在、有効な治療薬がない疾患は3万種以上あるといわれており、国内でも338の疾患が難病として指定されています。

 

また、すい臓がんやアルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病の合併症など、患者数が比較的多いにもかかわらず決定的な治療薬が開発されていない疾患に対する治療薬の開発にも期待がかかります。

 

2.医療費の削減

日本において、「薬価」はさまざまな要素を勘案して決められていますが、その要素のひとつに「開発にかかった費用」があります。薬の値段は、一定期間で開発コストが回収できるように設定されているのです。AIの活躍で開発コストが下がれば薬価も下がり、医療費全体の節約につながることが期待できます。

「AI×創薬」には課題も

一方で、AI創薬のさらなる推進には、AI学習の対象となるデータ不足、データ共有のためのプラットフォームの未整備、研究者のAIに対する知識不足やスキル不足などいくつかの問題点や課題が指摘されています。

 

現状、課題も散見されていますが、さまざまな企業によるAI創薬事業への新規参入や、自社にはない技術を利用できる企業同士の協業により、AI創薬を取り入れるハードルは下がっていくことが見込まれます。

 

始まったばかりですが、近年着実に発展を遂げている「AI創薬」。今後、わたしたちがその恩恵を肌で感じる日も確実に近づいているのです。

 

 

 

関根 昭彦

医療ライター。大手医薬品メーカーでの医療機器エンジニアや医薬品MRなどを経て、フリーランスに。得意分野は医療関係全般。