「学資保険」がおすすめできない理由
「子どもが生まれたら、すぐに学資保険に加入するもの」
そんな意識を持っている人は、今でも少なくありません。実際に、ソニー生命が2023年に行った「子どもの教育資金に関する調査」によると、教育資金の準備方法として、約5割の人が学資保険を利用していました。
結論からいうと、私自身は学資保険のメリットはほぼないと考えています。私も加入したことがありませんし、生命保険会社に勤めていたころも、クライアントへ積極的にすすめたことはありませんでした。
その理由の一つに、「一部引き出しができない」ということがあります。
例えば、学資保険に加入する人の多くは、満期を大学入学時の18歳に設定しています。しかし、想定外に子どもが私立高校に入学することになったとき、手持ちの貯金では心細くなることもあるでしょう。
このとき「学資保険の一部だけを解約する」といったことができません。しかたなしに中途解約すれば、ほとんどの場合で元本割れをしてしまいます。
対して、投資信託であれば、一部引き出しも可能です。その分、自由度が高いので、使い勝手がよい教育資金準備法といえるでしょう。
「学資保険には貸付制度がある」と考える向きもありますが、当たり前ですが貸し付けは返済が必要です。しかも、利息をつけて返すことになるため、やはりあまり効率のよい方法とは言えません。
さらに、「長期にわたって毎月一定額がブロックされてしまう」のも、理由の一つ。家計が苦しいときも、問答無用で引き落としがなされる……これは、精神的にもかなりの負担になります。
子どもの未来に投資しすぎて、「今だから」経験できることに投資してあげられないことも出てくるでしょう。その不自由さに、ストレスを感じることが必ず発生するだろうと感じたのも、私が学資保険に加入しなかった大きな理由でした。
「学資保険にメリットがない」と考える理由3つ目は「投資効率の悪さ」です。相談を受けていると、「学資保険の性質を正確に理解している人が少ない」と感じることがよくあります。というのも、学資保険を蓄財方法の1つと考えている人がとても多いからです。
しかし、学資保険は貯蓄性はあるものの、あくまでも親に万一のことがあった場合に保険金を受け取れたり、保険料の払い込みが免除される「保険」商品です。例えば、親に生命保険をしっかりかけているのに、学資保険にも加入する……というのは、保障がダブついているため、非常に投資効率が悪いわけです。
死亡保険と貯蓄は分けたほうが、投資効率は当然ながら高くなります。学資保険はあくまで「生命保険」のくくりです。貯金感覚で加入しているという人は、認識を変える必要があるでしょう。
また、学資保険に子どもの医療保険をオプションでつけている人も多いのですが、これもまた、非効率です。
ご存じのとおり、最近は保険制度がどんどん変わってきている過渡期にあります。
各自治体で「医療費助成制度」をさらに拡充する動きが出始めました。例えば、東京23区では15歳までだった助成制度が18歳までとなり、高校生も医療費無料の対象(マル青・高校生等医療費助成制度)となりました。国の保険制度がここまで子どもに手厚くなっている今、医療保険は本当に必要なのか、もう一度考える必要があるでしょう。
中には、学資保険に医療保険がオプションでついていることに気が付いていない人もいます。そのため、無駄に高くなっていることがあります。学資保険に加入している場合には、もう一度保険証券をしっかり確認してみてください。
学資保険のメリットを1つ挙げるとしたら、「親に何かあった場合には、保険料をそれ以上払わずに満額もらえる」という点です。
しかし、それだけをカバーするならば、死亡保障がある掛け捨てタイプの生命保険のほうが、ずっとコストを抑えることができます。