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「脱炭素社会の実現」に向けて、世界では従来のガソリン車から電気自動車(EV:Electric Vehicle)へのシフトが急速に進んでいる。そのようななか、日本でもEVシフトが本格化していると、テンフィールズファクトリー株式会社の市川裕CEOは語る。全3回で「EV充電器投資」の全貌を明らかにする本連載。第1回目となる今回は、いまなぜ「EV充電器投資」が注目されているのか、市川氏に話を伺った。

日本で「EVシフト」の流れが加速しているワケ

脱炭素社会の実現に向けて、世界中でガソリン車・ディーゼル車から、電気自動車(EV)へのシフトが加速している。日本ではまだガソリン車が主流とはいえ、EVシフトの波はすでにやってきており、今後、急速に転換が進むのは確実といえる。

 

そうした市場の変化をいち早くとらえ、EVに必要な電気エネルギーを補給するための超高速のEV充電器「FLASH」を独自開発したのが、テンフィールズファクトリー株式会社だ。

 

市川「EV充電器とは、EVやプラグイン電気自動車(PHV・PHEV)の充電設備のことです。

 

『FLASH』は国内最大級の出力180kWを実現。今回、同充電器を活用した「EV充電器投資」のサービス提供を始めました。

 

『EV充電器投資』の課金システムは、国内で主流の『分課金制』(時間課金制)ではなく、『従量課金制』のため、実質20%の超高利回りで、10年間で元手の2倍が得られることが期待できます。

 

[図表1]分課金制と従量課金制の違い

 

この『EV充電器投資』のスキームや、そのメリット・デメリット(リスク)については別途、詳しくご説明します。今回は、いまなぜ『EV充電器投資』が注目されているのかについて、EV市場の動向から解説したいと思います。

 

世界的な潮流となっている自動車のEVシフトですが、日本はその流れに乗り遅れてきました。そしていまなお多くの日本人が、国内のEVシフトはこれから徐々に進んでいくだろうと考えています。

 

しかし実際は、すでにEVシフトは本格化し始めています。2021年度の国内の新車販売台数におけるEVの比率は約200台に1台でしたが、22年度は約50台に1台と4倍に増えました。22年12月単月で見ると約100台に3台売れていますから、2023年は通年で新車販売の3%がEVになるのは必至で、それ以上に増える可能性もあります。

 

つまり、日本はこれからEVシフトの波が来るのではなく、私の感覚では、今年はすでに波が来ている状態なのです」

日本のEVシフト…「トヨタ次第」で急加速か

EV先進国のデータを見ると、中国やノルウェーなど欧州では、EVの販売比率が3%になったのが2017年頃で、その約3年後には10%以上に拡大。現在は4台に1台がEVとなっている。日本でも今年3%に乗るということは、数年以内に新車販売4~5台に1台がEVになる時代がくると予測できる。

 

市川「これまでEVに慎重な姿勢を示していたトヨタ自動車も、EVの普及に大きく舵を切りました。4月7日、2026年までに新たに10モデルのEVを投入し、年間150万台を販売する事業計画を明らかにしました。また、2030年にはEVを同350万台販売する目標を掲げています。


一方で、国内でのEV普及の足かせとなっているのが、充電インフラ整備の遅れです。EVは自宅の電源コンセントから充電することもできますが、外出先で充電する場合には公共のEV充電スタンドを利用することになります。

 

充電スタンドに設置されているEV充電器には、小規模なコンセントタイプから大出力タイプまで、さまざまなタイプがあります。EV充電器の種類によって、電気が貯まる時間が変わります。

 

EVの停車時間が比較的短い施設(高速道路SA、コンビニエンスストア、自動車ディーラーなど)は、大容量を速く充電したいユーザーが多いため、『急速充電器』が設置されているケースが一般的です。

 

世界における急速充電器の普及状況は、中国が全国で約50万台、米国は約5万台ですが、2030年までに50万台の設置を目指しています。

 

他方、日本はわずか9,500台です。ケタが2つ違います。国はインフラ整備を後押ししており、3万台を目標にしていますが、私は20万台必要だと考えています」

 

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「ユーザーが満足するほどオーナーが損する」不思議

日本でここまでEV普及が遅れているもうひとつの大きな要因として、市川氏は「EV充電器の充電スピードの遅さ」を挙げる。

 

市川「急速充電器といいながら、充電スピードが遅い。これは致命的な弱点だと考えています。

 

なぜ、遅いのか。それは現在、日本のEV充電器の課金システムのほとんどが分課金制だからです。分課金制は充電時間に応じて課金されるシステムです。1分間あたりの料金を設定し、充電終了時までのトータル時間に応じて課金されます。

 

充電時間に比例して料金が発生するので、EV充電器の所有者であるオーナーにとっては、充電スピードが遅いほど収益が増える仕組みです。

 

[図表2]分課金制の仕組み

 

実際、国内の約9,500台の急速充電器の大半は、出力50kW以下のものです。50kW以上の高出力の急速充電器も多く発売されていますが、普及していません。

 

しかし、ユーザー側からすると当然、高出力の急速充電器で短時間に充電したいと思います。ですから、顧客サービス向上のために商業施設や自動車ディーラーなどは収益減の赤字覚悟で高出力の急速充電器を設置しています。

 

この市場ニーズの矛盾を解決するのが、『従量課金制』です。時間ではなく、電力量1kWhあたりの料金を設定し、充電された電力量に応じて課金されます。ガソリンスタンドと同じです。

 

ただ現状、日本のパブリック充電施設には、従量課金制の充電器は1台も設置されていません。その理由は、パブリック充電市場が事実上1社に独占されているからで、いまのところ分課金制から従量課金制に転換する方針は示されていません。

 

従量課金制のハードルとしてはもう一つ、国の計量法の規定による検定に合格したメーターの設置が必要なこともあげられます。現在の分課金制の充電器では対応できません。

 

こうしたなかで、弊社が開発した超急速充電器『FLASH』は、国内最大級の出力180kWを実現。計量法の検定にも対応した従量課金制のモデルです。

 

『FLASH』は、日本のEV充電インフラ市場のゲームチェンジャーになり得ると確信しています。それには早期に設置台数を増やす必要があり、多くの投資家のみなさまに力を借りなければなりません。『EV充電器投資』はそのための新商品です」

エンジン車は将来「富裕層のステータス」に

将来的なEV市場の拡大は確実にみえるが、一方でガソリンエンジン車との兼ね合いはどうなるのか。

 

EU(欧州連合)が2035年にエンジン車の販売を全面禁止するとしていた方針を転換し、35年以降もエンジン車の販売を認めると発表。これを受けて日本でのEVシフトが遅れるのではという見解も一部で聞かれるが、市川氏はこれを明確に否定する。

 

市川「EUの発表がEVの普及を阻害するという意見もありますが、これは大きな誤解です。EUが認めたエンジン車の燃料は『eフューエル』というもので、日本のメディアで報道されている『合成燃料』とは別物です。詳しいことは省きますが、eフューエルは大気中の二酸化炭素と水素を結合させてつくる燃料で、1リッターあたり700円もするような超高コストな燃料です。

 

フェラーリやポルシェなどの高級車に乗る一部の富裕層は使うでしょうが、一般に普及するとは考えられません。つまり、日本を含め世界のEVシフトにはほとんどなにも影響がないということです」

 

「EV後進国」であり、まだまだインフラが整っていない日本。しかし、だからこそ「投資先としての大きな旨み」が残っているといえそうだ。