近年のAI技術の発展によって、以前は難しいとされていた「無人店舗」が実現され始めています。なかでも日本国内に増えつつある「無人コンビニ」について、技術面・生活面の両方から分析し、その最新事情をご紹介します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
「無人決済店舗」の躍進。ファミマやローソンなど日本大手企業の最新事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

Amazon Goが「無人店舗」の歴史を変えた

「無人店舗」とは、常駐している店員がいない中で、商品を手に取り会計を行うまでの一連の流れを「顧客のみ」で行う形態の店舗のことです。野菜の路上販売など、店舗形態としては割と古くからあるものですが、代金を支払わずに持ち逃げする行為も見受けられるなど成り立ちにくい商売でもあります。

 

こうした課題の解決策の1つがお馴染みの「自販機」です。日本では飲料自販機をはじめ、お菓子やアイスなどの食品自販機を広く見かけますが、欧米などではホテルやオフィス、商業施設などで、小売店を設置する代わりに、食品から日用品までさまざまなものを自販機で販売しています。

 

ただ、自販機には取り扱う商品の数や種類が限られるという問題があり、必ずしも顧客のニーズを満たせるとは限りません。とはいえ、コンビニのようにそれなりの面積を持った店舗スペースを確保し、販売のために人員を張り付けるにはコスト的な問題があります。

 

こうしたビジネススタイルの折衷案とも呼べるのが、ここ数年急速に盛り上がりつつある「無人コンビニ」の存在です。英語圏では「Automated Store」あるいは「Cashierless Store」と呼ばれ、2018年に米シアトルで正式運用が開始された「Amazon Go」を皮切りに、世界中でAmazon Goのフォロワーと呼ぶべきさまざまな店舗が登場しています。

 

米サンフランシスコのAmazon Go店舗(筆者提供)
米サンフランシスコのAmazon Go店舗(筆者提供)

 

Amazon Goが革新的だったのは、これまでの小売店で当たり前だったレジでの「Checkout(会計)」という行為を、最新のAI技術を駆使して完全に無くしてしまった点にあります。

 

顧客は入店時からの行動をカメラで追跡され、店内でどの商品を取得したのか、また商品を棚に戻したのかといった行為が記録され、現在手に持っている、あるいはカバンに入れている商品の内容がすべて把握されています。つまり、顧客が興味を持ち、購入した商品の登録がすべて自動化されているのです。

 

そしてAmazon Goでは、すでにクレジットカードが紐付けされているAmazonアカウントの登録されたモバイルアプリを提示するか、あるいはクレジットカードを入り口の読み取り機に挿入してから入店します。

 

そのため、退店時にレジがなくても、店内で記録された商品情報を基にカード請求を行えばよいため、お金を取り損ねることもありません。買い物を終えた顧客が出口まで来たら、そのまま出してしまって問題ないのです。

 

先ほど「無人コンビニ」と書きましたが、Amazon Goも完全なる無人で運営されているわけではなく、商品の補充や店内の監視にスタッフが張り付いていたり、弁当(とはいっても米国なのでサンドイッチなどですが)のような生鮮食品を加工するスタッフも中で働いていたりします。

 

そのため、正しくは「レジなし店舗(Cashierless Store)」というのかもしれません。

 

日本国内で増えつつある「無人コンビニ」は、「無人決済店舗」という名称が付けられています。この「無人決済店舗」について、まず技術面から見ていきます。

 

ファミリーマート 岩槻駅東口/S店の外観。「無人決済店舗」と銘打たれている(筆者提供)
ファミリーマート 岩槻駅東口/S店の外観。「無人決済店舗」と銘打たれている(筆者提供)