近年のAI技術の発展によって、以前は難しいとされていた「無人店舗」が実現され始めています。なかでも日本国内に増えつつある「無人コンビニ」について、技術面・生活面の両方から分析し、その最新事情をご紹介します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
「無人決済店舗」の躍進。ファミマやローソンなど日本大手企業の最新事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本文化に合わせたシステム導入の取り組み

コンビニチェーンという業態は、もともと米国にあった「7-Eleven」のライセンスを得て「セブン-イレブン」が日本に展開されたという経緯からも分かるように、どちらかといえば舶来ものだったとも言えます。

 

ただ、現在では日本で普及したコンビニが独自の進化を辿り、業務内容も多様化しています。そのため、「無人決済店舗」の仕組みが米国からやってきたとしても、そのまま実装すると日本のコンビニ事情には合わないケースも当然出てくるでしょう。

 

その典型的なものが「決済」です。前述のように、Amazon Goではクレジットカードまたはデビットカードを利用したキャッシュレス決済が前提となっています。

 

ところが、日本のコンビニにおけるキャッシュレス決済比率はまだ3割程度で、残りはすべて現金です。そのため、同じ仕組みをそのまま導入すると、残り7割の顧客を取り逃がしてしまうことになりかねません。

 

TOUCH TO GO(TTG)は、ファミリーマートと提携し、「無人決済店舗」を日本全国に拡大しているJR東日本系列の企業が展開する店舗です。TTGでは、入店時は特に認証などを行わずにすべての顧客を招き入れ、退店する直前にレジを設置し、現金やクレジットカード、電子マネーなど、複数の手段で支払いが行えるようにしています。

 

店内の行動で、手に取った商品はすべて把握できているので、レジにはそれら商品の一覧が表示され、あとは支払うだけです。来る者は拒まず、去る前に支払ってという訳ですね。

 

高輪ゲートウェイ駅にあるTOUCH TO GOの店舗(筆者提供)
高輪ゲートウェイ駅にあるTOUCH TO GOの店舗(筆者提供)

 

他にも、日本で無人決済店舗を実装する上で考慮しなければならないのは、商習慣的事情です。ローソンでは富士通と共同で米Zippinの技術をライセンスした「Lawson Go」という「無人決済店舗」を展開していますが、この店舗展開にあたって富士通は、Zippinに対していくつか日本向けの機能強化を要求しています。

 

その1つは「商品の小まめな入れ替えへの対応」です。棚の商品の入れ替えがほとんど発生しない米国に対し、日本では季節限定商品など小まめに棚の配置や商品の入れ替わりが発生するため、こうした作業が楽に行えるよう改良が加えられています。

 

このほか、日本のコンビニでは他国と比べてホットスナックや冷凍食品などバラエティ豊かな商品を取りそろえていますが、こうした高温や低温商品を従来の重量センサーとそのまま組み合わせることは難しいため、前述のTTGは専用に開発したセンサーを取り付け対応しています。

 

三菱食品本社内に設置されたLawson Goの店舗(筆者提供)
三菱食品本社内に設置されたLawson Goの店舗(筆者提供)

 

また、TTGの場合、この仕組みがうまくはまるのは「普通のコンビニを出店するには売上が足りないが、ニーズはある程度ある」という商圏の場合であると現状では考えています。

 

コンビニで一番のコストとなるのは人件費なので、「売上が少なくても、少ない人数で店舗をまわせば利益は確保できる」というのがTTGのビジネスモデルとなります。

 

「少ない人数」と言ったように、店舗自体は無人ではなく、監視の人員が1人張り付いていますし、商品の補充などで人手が必要になります。商圏を広げようとすると人件費や流通の問題が必ず絡むため、技術的問題というよりも、採算性の問題で一気に広げるのは難しいというのが現状で見えている課題といえます。