2025年の大阪・関西万博で「空飛ぶクルマ」を実際に使った旅客飛行を実施予定――。そんなニュースを耳にした方もいるかもしれません。果たして「空飛ぶクルマ」とはなんでしょうか? ハッキリと答えられる人はまずいないでしょうし、インターネット上でも様々な情報が並存するばかりで回答は見つかりません。それもそのはず、「空飛ぶクルマ」明確な定義は、まだなされていないのです。表現を替えるなら、「空飛ぶクルマ=多くの可能性があり、人々がワクワクする気持ちになれる乗り物」といったところでしょうか。車を運転するように、空を気軽に駆け回れたら…。多くの企業がその実現に情熱を傾ける「空飛ぶクルマ」ですが、2020年代後半にも、実用化のめどが立っているようです。開発状況を見ていきましょう。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
2020年代に実用化も⁉「空飛ぶクルマ」開発の最新事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本はSkyDriveとホンダが開発に奮闘!

3つ目は、日本の「SkyDrive」(スカイドライブ)です。

 

元々、トヨタ自動車やトヨタ関連部品メーカーなどに勤務する人たちが有志として集まった製作集団でしたが、その後、トヨタグループ企業各社などからの出資を受けて企業となり、量産化を目指して研究開発を進めているところです。

 

大阪・関西万博での実用化を目指している商用第一号「SD-05」は、乗員1名とパイロットの2人乗りで、どちらかというとヘリコプターに近いイメージのe-VTOLです。

 

2023年1月には、先に紹介した「ボロコプター」のCTO(最高技術責任者)がスカイドライブに移籍しており、今後「SD-05」の開発が一気にスピードアップしそうです。

 

そして4つ目は、ホンダです。

 

筆者は、埼玉県和光市の本田技術研究所で、e-VTOLの開発メンバーから直接説明を受けています。こちらも、e-VTOLなのですが、他のベンチャーとはいろいろな面で違いがあります。

 

まず、乗員数が10人弱程度で、飛行距離は400km程度を想定。他のベンチャーでは、飛行距離は100km程度の都市内や地域内の飛行を主体としているのに対し、ホンダは都市間飛行を考えた設計になっています。

 

また、垂直離陸用に8つのローター、また推進用に機体後部に2つのローターというレイアウトとしています。

 

その上で、ホンダ「e-VTOL」の特長は電力の作り方です。

 

他のベンチャーは、大型電池を搭載した「空飛ぶEV(電気自動車)」であるのに対して、ジェット機などで用いるガスタービンエンジンを発電機としてローター駆動の電力を作り出す、「空飛ぶハイブリッド車」というシステム構成です。

 

ホンダはアメリカを拠点に商用小型旅客機「ホンダ・ジェット」を量産していますので、まさに「クルマ」と「飛ぶこと」を自社の技術で融合した形といえるでしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

早く乗りたい「空飛ぶクルマ」…実用化はいつごろ?

こうして各地で着々と進む「空飛ぶクルマ」の研究開発ですが、具体的にいつ、どのような形で、人々は「空飛ぶクルマ」に乗ることができるようになるのでしょうか?

 

この点について、日本では経済産業省が「空の移動革命に向けたロードマップ」を公開しています。

 

それによりますと、2024年度までは「試験飛行や実証実験」。続く2025年の大阪・関西万博を機に、2025年度から2030年にかけて「商用運航の拡大」をして、2030年代以降に「サービスエリア、路線・便数の拡大」という流れです。

 

運航するのは、都市内や都市と周辺都市との間、地方では観光や離島との交通。また、離島や山岳では荷物の輸送。そして、救急対応として、医師の派遣や患者の搬送も含まれます。

 

大阪・開催万博では、ANAやJALも商用運航を予定していますし、また商用だけではなく、自家用「空飛ぶクルマ」についても、2020年代後半から市場導入が検討されています。

 

まだまだ技術的な課題も残っている「空飛ぶクルマ」ですが、実用化に向けた道筋は徐々に見えてきているようです。

 

はたして、サービス料金や、新車(新機?)の価格はいくらになるのか?

 

今後の動向がとても気になります。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 

桃田 健史
自動車ジャーナリスト、元レーシングドライバー。専門は世界自動車産業。エネルギー、IT、高齢化問題等もカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。