日本はSkyDriveとホンダが開発に奮闘!
3つ目は、日本の「SkyDrive」(スカイドライブ)です。
元々、トヨタ自動車やトヨタ関連部品メーカーなどに勤務する人たちが有志として集まった製作集団でしたが、その後、トヨタグループ企業各社などからの出資を受けて企業となり、量産化を目指して研究開発を進めているところです。
大阪・関西万博での実用化を目指している商用第一号「SD-05」は、乗員1名とパイロットの2人乗りで、どちらかというとヘリコプターに近いイメージのe-VTOLです。
2023年1月には、先に紹介した「ボロコプター」のCTO(最高技術責任者)がスカイドライブに移籍しており、今後「SD-05」の開発が一気にスピードアップしそうです。
そして4つ目は、ホンダです。
筆者は、埼玉県和光市の本田技術研究所で、e-VTOLの開発メンバーから直接説明を受けています。こちらも、e-VTOLなのですが、他のベンチャーとはいろいろな面で違いがあります。
まず、乗員数が10人弱程度で、飛行距離は400km程度を想定。他のベンチャーでは、飛行距離は100km程度の都市内や地域内の飛行を主体としているのに対し、ホンダは都市間飛行を考えた設計になっています。
また、垂直離陸用に8つのローター、また推進用に機体後部に2つのローターというレイアウトとしています。
その上で、ホンダ「e-VTOL」の特長は電力の作り方です。
他のベンチャーは、大型電池を搭載した「空飛ぶEV(電気自動車)」であるのに対して、ジェット機などで用いるガスタービンエンジンを発電機としてローター駆動の電力を作り出す、「空飛ぶハイブリッド車」というシステム構成です。
ホンダはアメリカを拠点に商用小型旅客機「ホンダ・ジェット」を量産していますので、まさに「クルマ」と「飛ぶこと」を自社の技術で融合した形といえるでしょう。
早く乗りたい「空飛ぶクルマ」…実用化はいつごろ?
こうして各地で着々と進む「空飛ぶクルマ」の研究開発ですが、具体的にいつ、どのような形で、人々は「空飛ぶクルマ」に乗ることができるようになるのでしょうか?
この点について、日本では経済産業省が「空の移動革命に向けたロードマップ」を公開しています。
それによりますと、2024年度までは「試験飛行や実証実験」。続く2025年の大阪・関西万博を機に、2025年度から2030年にかけて「商用運航の拡大」をして、2030年代以降に「サービスエリア、路線・便数の拡大」という流れです。
運航するのは、都市内や都市と周辺都市との間、地方では観光や離島との交通。また、離島や山岳では荷物の輸送。そして、救急対応として、医師の派遣や患者の搬送も含まれます。
大阪・開催万博では、ANAやJALも商用運航を予定していますし、また商用だけではなく、自家用「空飛ぶクルマ」についても、2020年代後半から市場導入が検討されています。
まだまだ技術的な課題も残っている「空飛ぶクルマ」ですが、実用化に向けた道筋は徐々に見えてきているようです。
はたして、サービス料金や、新車(新機?)の価格はいくらになるのか?
今後の動向がとても気になります。
桃田 健史
自動車ジャーナリスト、元レーシングドライバー。専門は世界自動車産業。エネルギー、IT、高齢化問題等もカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。