米中をはじめ、各国が競って取り組む「宇宙事業」。日本でもKDDIと米スペースX社との提携事業「スターリンク」をはじめ、技術の発展に伴って宇宙に関連したさまざまなビジネスが生まれています。今回は、「スペーステックの現在地」をみていきましょう。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
「スマホとの直接通信も可能」な衛星通信…次世代の通信を狙う業界の動き (※写真はイメージです/PIXTA)

SARを活用した情報サービスが新登場

(※写真はイメージです/PIXTA)
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これまで紹介した事例のほか、宇宙ビジネスのホープとして期待されているのが、進化形の人工衛星を活用した宇宙通信の領域です。

 

従来の人工衛星は、主に気象観測や「GPS」のような測位、衛星放送などに利用されてきましたが、人工衛星の小型・高性能化によって、物流・農業・金融といったさまざまな領域でも、人工衛星を使った新しい情報サービスが生まれているのです。

 

なかでも注目されているのが、「SAR(合成開口レーダー)」です。人工衛星から地球に向けてマイクロ波を発し、跳ね返ってきたマイクロ波を解析して、地表の広域情報を把握するのがSARの仕組み。可視光に頼る従来の気象衛星とは違い、悪天候でも夜間でも、地表の凹凸などの状況を詳しく検知でき、水や人工建造物などの識別もできるのが利点です。

 

その反面、SARは電波を発するため、電力消費量が大きく、大型人工衛星にしか搭載できず、得られる画像データも粗いといったネックがありました。ところが、技術革新で超小型人工衛星にも搭載できるようになり、AI(人工知能)による画像解析技術も向上。コストダウンも進んで、SARの応用範囲が広がっているのです。

 

日本では、政府や自治体が大規模災害の発生に備え、救助活動の初動の質を高めるためにSARを活用しています。地盤沈下や隆起をSARで発見して、トンネルや道路の優先補修箇所を特定する試みもはじまっているそうです。

 

また、商用では、新興国の都市開発状況や海上船舶の動きの把握、海底油田の発見などに役立てようとしています。SARによって水害の被害エリアと浸水状況を高精度で調査し、これまで2~3週間かかっていた保険金支払いまでの期間を大幅に短縮した日本の損害保険会社もあるとのことです。