Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft、5社の頭文字をとって「GAFAM」と呼ばれる世界的ビックテック企業。これら企業が銀行業務や決済、セキュリティに関わる分野にまで台頭してきたら、どうなるのでしょうか。また、それらが日本で開業されるとしたら──専門家が詳しく解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
GAFAM銀行は静かに生活の一部に。初開業は「米国ではなく日本」? (※写真はイメージです/PIXTA)

GAFAMはアメリカでなく日本で銀行を発足させる?

GAFAMが日本を銀行の誕生地として選ぶ可能性は大いにあると思います。その理由は、「本拠地アメリカで本格的な銀行を設立させることが事実上不可能だから」です。アメリカでは、銀行の議決権を25%以上保有する会社は、法令により銀行持ち株会社となります。さらに、アメリカも日本と同じように銀行が手掛けられる業務範囲を厳しく制限しているため、銀行持ち株会社となったが最後、GAFAMは多くのビジネスを失うこととなります。

 

日本では、銀行の議決権の20%以上を保有する株主について、銀行法上の銀行主要株主(50%以上は銀行支配株主)として認可されれば、銀行持ち株会社に指定されるのを避けることが可能です。それは、セブン銀行、ソニー銀行、楽天銀行などを見れば明らかです。

 

アマゾン銀行が誕生したら

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

アマゾンを例にとりましょう。楽天銀行は個人事業中心ですが、アマゾンは非銀行である現時点でも、アマゾン・レンディングというサービスを通してEコマース出店者への貸し付けを行っています。もし、銀行免許を取得し預金を取り込むことができれば、より積極的に資金供給を行うことが可能です。ちなみに、アマゾンの商品の在庫保管・配送代行サービスを利用している事業者は、すでに7万社に達しています。

 

預金の供給源として期待されるのが、5千万人を超えるアマゾンユーザーの存在です。アマゾン銀行の最大の武器は、UX(User Experience、ユーザー体験)に根ざした顧客満足度の向上です。ユーザーの消費行動を分析し、マイカーやマイホームといった大型消費の可能性を検出し、新たな購買行動を促しながら、ファイナンス機能も提供していくことができるでしょう。旧来型の銀行マーケティングでは実現できない、真の消費者欲求をとらえる金融サービスの提供となります。

 

ちなみに、全都道府県に出店しているみずほ銀行の個人口座は2千4百万口余りですが、アマゾン銀行にはこれに匹敵する口座を獲得する潜在力があります。何よりも重要なのは、「その多くがアクティブユーザーとなる可能性が高い」点です。

 

多くの銀行は、お付き合いで作らされた口座や転勤で使わなくなった口座など、少額の預金が残るだけの「不稼働口座」というコストの塊を抱えています。しかし、日常生活において不可欠となっている経済圏の中で開設したアマゾン銀行の口座は、不稼働に陥る割合は低いでしょう。