近年は電子デバイスやITテクノロジーを活用した学習「エドテック」が注目を浴びています。たとえば、小学校でタブレットを配布し、事前にタブレットのコンテンツを活用し個人学習をしたうえで対面の授業では、ディスカッションや分からない問題の解説を行う「反転授業」など、これまでの概念を大きく覆す学習方法が見受けられます。「エドテック」が変えていく未来の教育スタイルについて、詳しく解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
バーチャル世界の利点は「思いっきり失敗できる」こと。メタバース空間が、子どもの教育に適している理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

オープンワールド型ゲームは、未来をたくましく生きる訓練に

教育関係者に教育的な価値を評価されているのが、オープンワールド型ゲームです。ゲーム内のバーチャル空間において、移動の制限がなく、プレイヤーは自由にその世界を探索し、何らかのゴールに到達できるように設計されたゲームのことを指します。

 

オープンワールド型ゲームの良さは、自由度と創造性、共同作業にあり、学校現場でも利用されている最も有名なものは「マインクラフト」というゲームです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「いくら創造性といっても所詮はバーチャル空間での創作だし…」、「やはり実際に触れる材料を使ってモノづくりをしないと…」と斜に構えているようでは、時代に取り残されてしまう可能性があります。

 

今の子どもたちが社会で活躍する2040年〜2050年代には経済活動の大部分がバーチャル空間で完結している、いわゆるメタバースが実現されると予想されます。

 

バーチャル空間で見ず知らずの世界中の友だちと、翻訳ツールを駆使してコミュニケーションを取りながら、小さな意思決定を繰り返し、モノづくりに励むのは、未来を生きるための立派な訓練なのです。予想される未来から逆算すると、社会に出る前の準備期間に行う教育として「ゲーム」というバーチャルなツールを過小評価すべきではありません。

バーチャル空間の利点は「思いっきり失敗できる」

技術的視点では、バーチャル空間に入り込むためのデジタルツールはまだ発展途上です。スマートフォンでは体験に限界がありますし、ARスマートグラスは高価でさらなる軽量化が望まれます。VRヘッドセットの販売台数は着実に増えているものの、愛好家向けの域を脱していません。

 

しかし、ツールの性能が向上し、軽量化や低価格化が進むことは疑う余地のない流れです。将来、よりウェアラブルなハードウェアとして進化してくると、リアル空間とバーチャル空間を行き来することは、息を吸うように自然にできるのかもしれません。

 

バーチャルの世界は思いっきり失敗することができる点でリアルよりも「やさしい空間」です。一発勝負でないだけに、納得のいくまで、いくらでもチャレンジできるのです。それは、試験本番の一日だけですべてが決まってしまう今の教育とは対極をなすものです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

知的好奇心が十分で、幅広い興味関心がもてる大人になっていくために、今の教育はどうあるべきかを考えると、一人で与えられた宿題をこなすだけよりも、仲間と協調して行う創造的な学びの方が大事であることは自明でしょう。

 

個々人のもつ多様な価値観を受け入れ、性格や個性に合わせた自由な教育を与えることが、未来のイノベーション創出につながるはずです。

 

(*1) https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/__icsFiles/afieldfile/2019/10/24/a1422163_02_1.pdf

(*2)

「National Home Education Research Institute」の調査結果より

 

礒津 政明
株式会社ソニー・グローバルエデュケーション 取締役会長

教育フューチャリスト