近年急速に注目度が高まっている暗号資産(仮想通貨)。暗号資産には、その個々の性質に応じ、決済手段やアプリケーションへの関与などの本来の役割がありますが、日本においては、投機対象として認識されることが多いのが現状です。そのようななか、国内外で暗号資産取引所をめぐる事件が耳目を集めるケースが散見されます。本記事では、暗号資産をめぐる近年の規制の動向についてご紹介します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
法整備、どこまで進んでいる?「暗号資産業界」における近年の規制動向 (※写真はイメージです/PIXTA)

暗号資産取引所をめぐる事件

日本での暗号資産取引所にまつわる最初の大規模な事件は、2014年に発生したマウントゴックス事件です。当時世界でも最大級の暗号資産取引所を運営していた株式会社MTGOX(以下「MTGOX」)が債務超過に陥り、民事再生手続きを申し立てました。

 

債務超過の原因は、MTGOXが取り扱い、保有していたビットコイン(BTC)が、ビットコインの基礎ソフトのシステムバグを悪用した不正アクセスによって引き出され、消失したことが主な原因とされています(※1)。

 

その後も、2018年にはコインチェック株式会社(以下「コインチェック」)が運営する暗号資産取引所において、580億円分のネム(NEM)が不正アクセスによって流出する事件が発生しました。直近では、米国において、FTXTradingLimited社が顧客から預託された資産を不正に流用した疑いが取りざたされています。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

日本の暗号資産をめぐる規制

日本では、資金決済に関する法律(資金決済法)により暗号資産の取扱業者を規制しています。資金決済法は、もともとは前払式支払手段の発行者と資金移動業者を規制対象とする法律でしたが、2017年4月1日に施行された改正法により、当時、仮想通貨交換業という形で取引所を対象とした規制が導入されました。

 

その後、後掲の仮想通貨交換業等に関する研究会での議論を踏まえ、2020年5月1日に改正資金決済法が施行され(この改正時において仮想通貨から暗号資産へと用語も変更されました)、主に利用者の財産を保護する観点から暗号資産交換業者に対して厳しい規制が課されるに至っています。

事件を受けた法整備

2018年に起きたコインチェックの事件を受け、2018年4月より、「仮想通貨交換業等に関する研究会」が設置され、同年12月までの約9ヵ月にわたり、今後の暗号資産交換業の規制のあるべき姿について議論が行われました。

 

この研究会では、不正アクセスに対するセキュリティに関する規制や暗号資産の極めて高いボラティリティに対する投資家保護、ICO(※2)などのトークン発行スキームに対する規制など、広範なトピックが議論の対象とされ、我が国における暗号資産取引業界のより適切な姿が模索されました。その結果、2019年5月31日に資金決済法の改正法が成立し、新たな規制が設けられました。