(航空機イメージ画像)

財務戦略の効果的手法として知られる「航空機オペレーティングリース」の中でも、「直接保有型」が投資家の関心を集めています。「直接保有型」の航空機オペレーティングリースを展開する株式会社ITCアエロリーシングの中山美梨香社長は、「当社の扱う航空機は、運用手段として魅力が高いこともありますが、それ以上に『社会貢献性』が高いことも、投資家様からご好評をいただいている特色として挙げられます」と話します。中山社長にその魅力を語っていただきました。

 


※前回記事:これまでにない〈直接保有型〉航空機リースの柔軟性・メリットとは【オペリースのプロが解説】

オペレーティングリースの魅力は「償却メリット」だけではない

当社がご案内する航空機は世界的に評価の高い償却資産で、経済耐用年数は30、40年と非常に長いにもかかわらず、製造したばかりの航空機でも5年という短期間で償却が可能です。製造から3年以上経過している中古機の場合は、当該償却期間が2年まで短縮されます。定率法を採用した場合は、償却期間が2年であっても、12ヵ月で機体金額の100%を減価償却費として計上することができます。

 

オペレーティングリースを投資対象として検討される投資家様の多くは、財務戦略の一環としての償却メリットのみに価値を見出していらっしゃるかもしれません。

 

しかし、当社が組成する案件は、償却メリット以外にも非常に魅力のある案件です。当社が提供する直接保有型の案件では、ゼネラルアビエーション(エアラインと軍事航空を除く民間航空の総称)を対象としています。匿名組合型でよく知られているエアライン案件とは異なり、投資家様にご購入いただいた機体は、医療搬送、消火活動、人命救助、物資輸送、地質調査などの公共性・社会貢献性が非常に高いプロジェクトで運航・運用されています。

 

当社は現在、世界5カ国で55機をリース中で、その約60%を医療搬送用機材が占めます。ここ日本では、今年春にドクターヘリの全国配備が完了していることから、医療搬送用ヘリコプターの認知度は高くなった印象です。今回は敢えて、ドクターヘリ同様に社会貢献度が高いものの、皆様のなじみが薄い「消火活動用」、「物理探査用」ヘリコプター、そして、地元住民の生活の安心・安全に直結する小型航空機等を用いた「不可欠路線」向けの運航についてご紹介してみようと思います。

 

世界中で頻発する「森林火災」に立ち向かう

まず一つが、森林や林野の火災時に用いられる空中消火活動用ヘリコプターです。空中消火とはヘリコプターなどの航空機を使って空から消火活動を行うことをいいます。日本では、年間平均で約110件(2019年まで10年間の平均)の消火活動が都道府県や消防機関の消防防災ヘリ、都道府県知事から要請を受けた自衛隊ヘリコプターによって実施されています。

 

2019年から2020年にかけオーストラリア南東部で発生した豪州史上最悪といわれる一連の森林火災は日本でも報じられましたが、この火災では日本の国土面積の3分の1にあたる面積が焼失しました。欧州地中海沿岸、米カリフォルニア州、豪州などは森林火災が多い地域で、近年特に大規模な森林火災が頻発しており、気候変動の影響で従来と異なる様相を呈しているという多くの専門家からの意見が報道されています。

 

森林火災による被害は、貴重な森林資源が消失することだけではありません。その被害は森林地帯やその近隣地域の家屋等のみならず、遠く離れた都市部に及んでしまうこともあります。また、延焼範囲が広く地形が険しい森林や林野では、消防設備からのアクセスが制約されて、現場まで消防車ではたどり着けないことも多くあります。

 

森林火災が頻発し広範囲に及ぶ海外では、小型、中型に加えて大型ヘリコプターや飛行機も消火活動で多く活躍しています。空中消火活動用ヘリにはバケット方式と、より効率がよい消化タンク方式があり、水だけでなく消火剤を散布する場合もあります。

 

米国では、2012年から2021年の10年間における米国全土の森林火災の延焼面積は、1992から2001年の10年間から倍増したと発表されており、国内外で異常気象により森林火災が頻発する近年において、空中消火活動用ヘリの役割はますます期待されています。

 

(空中から消火活動を行うヘリコプターのイメージ写真)
(空中から消火活動を行うヘリコプターのイメージ写真)

 

資源開発の場でも活躍する航空機も投資対象に

そしてもう一つが、資源開発で活躍している航空機です。日本の産業と私たちの生活は、輸入される多くの海底・地下資源に依存していますが、地下の天然資源は広域に偏在しています。これらの貴重な地下資源を、センサーを装着したヘリコプター等の航空機を使って効率的に測定・データ解析する総合技術が空中物理探査です。

 

資源探査は、直接行う方法と間接的に行う物理探査等の2つに大きく分けられます。それぞれさまざまな手法がありますが、まず広域的な調査を行い、徐々に範囲を狭めて詳細な調査へ進みます。この過程の広域調査などで活躍するのが空中物理探査です。

 

空中物理探査は、広域に存在する地下資源を探査する際などに、電磁や重力などの特性(物理現象)を利用して地質の探査を行います。空中から探査を行うことで広域を効率よく探査することができるだけでなく、立入禁止地区など地上での調査が困難な場合にも活躍します。日本では、地熱発電の発電量増加を目的とする新規開発地点の掘り起こし、各種天然資源の安定供給を目的とした日本周辺海域における資源調査、防災分野などでも空中物理探査が実施されています。 

 

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が実施する地熱資源のポテンシャル調査では、時間領域空中電磁探査という手法が用いられています。電磁探査では一般的に、ヘリコプターなどに吊り下げた発信器から電磁波を地下に発信し、地下で発生した誘導磁場を同じヘリコプターに吊り下げた受信機で測定します。

 

航空機に装備するハードウェアの開発技術に限らず、操縦技術、探査で得られたデータを解析する技術等、さまざまな技術が要求される空中物理探査は、一見日常生活とかけ離れた存在のようでありながら、実は重要な役割を担っているのです。

 

(空中物理探査用航空機のイメージ)
(空中物理探査用航空機のイメージ)

空のローカル線、非常に重要な「不可欠路線」も

弊社は、僻地の生活水準の向上を目的として僻地と主要都市を結ぶ不可欠路線運航サービス(EAS: Essential Air Service)向けのリースを米国と欧州で展開しております。

 

政府からの補助金を元にした運航で、米国では小型ターボプロップ機が主流ですが、欧州ではリージョナルターボプロップ機やリージョナルジェット機の需要が高く、これらの機材を対象としたリース案件をご案内しております。旅客輸送というと、コロナ禍で長らく影響を受けているエアライン向けの運航等を思い浮かべられる方が多いかと思いますが、生活に根差した助成金運航は、エアラインのような影響を受ける事なくコロナ禍でも堅調に推移しました。

 

不可欠路線へのリース提供を通じて当社の投資家様は、地域の経済や産業の活性化といった社会的意義の高い事業に貢献する事も可能になります。法人、個人に拘らず投資の際に社会的責任を意識する「社会的責任投資(SRI:Socially Responsible Investment)」にも通じる事だと考えます。投資家様は、航空機に投資することで、「資産の防衛」を行いつつ、実は、社会的責任を担う事業を支援することになるのです。

 

 (不可欠路線で活躍する小型機のイメージ写真)
 (不可欠路線で活躍する小型機のイメージ写真)

 

このように当社では、特定の機種や用途に限定されない柔軟で競争力があり、社会貢献性も高い案件を数多く組成し投資家の皆様にご案内しており、常に「50機以上」の航空機をリース・管理しております。

 

税制上、財務面でのメリットをご理解いただいた上で、社会貢献に直結した投資対象として、ITCの「直接保有型航空機オペレーティングリース」をご検討しただけましたら幸いです。

 

※前回記事:これまでにない〈直接保有型〉航空機リースの柔軟性・メリットとは【オペリースのプロが解説】