売却がスムーズに進む「軽井沢の別荘」、その条件
都心の生活にはない魅力にあふれる軽井沢暮らし。「同地に拠点を持ちたい」と魅了される人は増え続け、コロナ禍でも地価は上昇。前年比110%以上を記録するエリアさえある。しかし念願を叶えたオーナーは、いずれ訪れる「軽井沢暮らしの終わり」を意識しておくことも必要だ。その方法は大別して、2つ。売却か相続である。
会沢「旧軽井沢などのエリアは、資産家の方々の物件で占められています。親子代々に受け継がれながら100年以上の時を経ている物件も少なくないので、比較的売却を検討する方は少ないでしょう。
しかし、私どもがお付き合いさせていただいているオーナーさまからは『相続するかしないか、迷っている。年間の維持管理費も考えて決めなければならない』というお声も聞きます。前回お話しした通り、軽井沢の物件には定期的な管理が必要不可欠で、そのランニングコストを年間で30万円程度みていただかなくてはなりません」
売却の申し出を受けた場合、西武リアルティソリューションズは豊富な取引実績から土地と建物の査定を開始。周囲の成約事例を参考にしつつ、顧客の希望金額も考慮に入れたうえで、販売活動を進めていく。査定額は「3ヵ月以内の売却」という目標をもとに算出されるが、ホームページへの情報掲載からすぐに申込みが寄せられるという、スピーディなケースもあるそうだ。
藤原「軽井沢の中古物件を購入検討される方は『以前はどんな方が住んでいたのか』を気にされる傾向があります。管理が行き届いていない状態で売りに出された物件は敬遠されますので、不具合なく即入居も可能な状態に整えておくことが、成約への近道となるでしょう。そのためにも所有中の維持管理は非常に重要です。
私どもは360°カメラを使って室内を撮影し、ご自宅にいながらお気軽に内覧ができる3Dモデルルームのサービスを使うことで、早期成約に繋がるよう努めています。
また建物に関しては、一般的なデザインに人気が集まります。具体的には、軽井沢の風景にマッチしたログハウスなどが挙げられますね。斬新なデザインの個性的な物件、部屋数が多すぎる、あるいは少なすぎる物件は、売却に時間を要します。広さとしては2LDK~3LDK程度なら、汎用性が高く出口戦略も立てやすいということになるでしょう」
軽井沢の別荘…手放すことを決断したら
上記のように、軽井沢の不動産を遺された親族が、売却を検討するケースは少なくない。「それでも利益が手元に残るのであれば、良いではないか」と考える人がいるかもしれないが、こと別荘となると、譲渡所得税は意外に多く課せられるという事実を知っておく必要がある。
会沢「マイホームの売却に伴い利益が発生した場合、『3,000万円の特別控除』、または『居住用財産の買換え特例』の優遇措置が適用されます。しかし、別荘として利用してきた物件は対象外。売却益の約40%が徴税されてしまうため、あまり多くが手元に残らなくなってしまうのです。ただし5年以上保有していた物件の場合は、譲渡所得税率も約20%まで低下します」
建物部分の経年劣化が考慮され、査定額が購入時の半額近くまで低下してしまうケースは少なくない。加えて売却のためにリフォームを施すこととなれば、数百万円単位の出費が必要になる。総合的に見て、別荘売却には損益発生の可能性もあることをオーナーはあらかじめ理解しておかなくてはならない。
藤原「私どもにも、相続前の売却相談は数多くいただきます。仲介させていただく場合、成約額の3%に6万円と消費税をプラスした金額を手数料としていただくことになります。また内部の荷物の撤去や処分代なども少額ではありません。売却がご親族にとって負担になる可能性が高いのであれば、オーナーさまご自身が元気なうちに、資産整理を検討されると良いでしょう」
「遺してくれた軽井沢の別荘」を使い続ける選択
ここまで軽井沢の不動産の売却について話を伺ってきたが、もちろん「親族が遺してくれた不動産を相続して軽井沢生活を楽しみたい」というケースも多い。その際に不動産は相続税の課税対象となるので、相続人はきちんと対策を講じておく必要があるだろう。
藤原「ご親族が旧オーナーさまの不動産を相続した場合、私どものところでの手続きは別荘管理事務所での名義変更くらいです。とは言え『相続人の数が多いので、査定して欲しい』という複雑な内容の相談が寄せられることもあります。別荘の相続税評価は、時価と比較したうえで高低が生じるなど複雑になりやすいもの。やはり専門性の高い士業の方に相談されることをおすすめします」
[コラム]別荘の相続の基本
■別荘の土地の相続税評価額
別荘地の土地部分の相続税評価をするときは、まず「地目」を確認します。地目が宅地であれば、別荘の所在地が「路線価地域」と「倍率地域」のどちらにあてはまるかを確認します。地目が「山林や原野」であれば、宅地の「倍率地域」に準じた方法で評価します。「雑種地」であれば、近隣の宅地の固定資産税評価額を調べたうえで、所定の宅地の評価倍率をかけた金額をもとに評価します。
路線価地域と倍率地域、それぞれの土地の相続税評価額は、以下の式で求めることができます。
- 路線価地域の土地の相続税評価額=路線価×面積(㎡)×(各種補正率・加算率)
- 倍率地域の土地の相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率
■別荘の建物の相続税評価額
別荘の建物の相続税評価額は、固定資産税評価額と同額です。固定資産税の課税明細書で確認することができます。
■別荘の相続税評価と時価
別荘地の中には、上記の方法で算出した相続税評価額が時価より高いこともあります。大きくかけ離れているような場合は、不動産鑑定評価のうえ、相続税を申告することもできます。
不動産鑑定評価の費用は数十万円。相続税が大きく圧縮できそうな場合は一考の価値があります。しかし不動産鑑定評価に基づく申告は否認されるケースもあるので、相続実務に詳しい専門家に相談したほうがいいでしょう。
(監修:多賀谷会計事務所 税理士 宮路幸人)