コロナ禍のタイ最新事情…往来制限緩和へ
2020年のタイは新型コロナウイルス感染症の影響をそれほど受けておらず、11月まで新規感染者数が30人を超える日はありませんでした。しかし12月になると状況は急変。その数は3桁に上昇し始めます。
いったん鎮静化したのち、2021年4月から再び新規感染者数は大幅に拡大。1日あたり数千人という日々が数ヵ月続きました。8月にはピークを迎え、1日の新規感染者が2万人を超えるという事態に発展したのです。
それから約2ヵ月が経過した10月の半ば、新規感染者数はピーク時の約半数に減少。現在は鎮静化の気配が濃厚となっています。
北浦「タイの首都であるバンコクの現状*は、いまのところ飲食店では『店内での飲酒禁止』という対応が続けられています。またワクチンの接種率ですが、私の周囲を見渡す限りでは、50%程度。2人に1人は接種を済ませているといった印象ですね」*取材時、2021年10月12日時点
また10月11日には、タイのプラユット首相がテレビ演説を行い、11月1日から「新型コロナウイルス対策の往来制限を緩和する方針」を発表。ワクチン接種などを条件に「低リスク国」から入国する外国人の隔離義務を、免除する意向を示しています。
北浦「今回、規制緩和対象となっているのはアメリカや中国、そしてイギリスなどの数ヵ国国で、その中に日本が含まれているかどうかは、まだ明らかになっていません*。とは言え、段階的な措置であることは明らかですから、遅くとも来年早々には、日本も規制緩和対象となるでしょう」*取材時、2021年10月12日時点
富裕層の目線でチェックする「タイの魅力」
タイは、人気の渡航先として世界中から熱い注目を集める国です。本社がニューヨークにあるマスターカードが2019年に発表した「世界渡航先ランキング」では、パリやロンドンなど名だたる強豪を抑え、バンコクが第1位に輝きました。また日本人からの人気も高く、外務省が2018年に発表した渡航先ランキングでは、第5位にランクインしています。
このように旅行者を魅了してやまないタイですが、近年は日本の富裕層からも熱い注目を集めています。その理由は?
北浦「私どもが日々お話をさせていただくお客様からは『タイはASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国の中で、抜群にバランスが良い』という声を、よくお聞きします。気候が温暖で、都市部に生活機能がきちんと整っている一方で、不動産価格や賃貸料が安いからでしょう。これは東京や香港、そしてシンガポールと比較した際、大きなアドバンテージになります」
バンコクには近代的なショッピングモールも、土着的なマーケットも(写真はイメージです/PIXTA)
タイは「アジアのデトロイト」の異名を取るほど自動車産業が盛んであり、トヨタや日産など、多くの日系企業が進出しています。このためタイには現在6万人以上の日本人が在留しています。バンコクの街を走る車の多くは日本車で、日本語の看板も多く見られるほか、上質な日本食レストランの数も豊富です。
北浦「タイと日本の間には江戸時代から交流があります。またともに仏教国であり、日本は天皇、タイには国王がいるという点も似ています。アニメなど、日本のカルチャーはタイの人々にも人気です。こうした文化的背景から、日本に好感を抱くタイ人は多く、親日家の国として知られています。そのような事情を考慮して、タイに拠点を構え滞在を楽しむ、あるいは投資を検討するという富裕層が増えているのでしょう」
「投資対象」と「資産防衛」の観点で見るタイの魅力
北浦氏が言うように、単なる保養先としてタイを捉えるのではなく、分散投資の対象として、成長著しいタイの不動産に注目する富裕層は増加しています。
北浦「タイでは不動産価格が10~20年連続で上昇の一途を辿っていますが、まだ割安感があります。今後もキャピタルゲインを見込めるでしょう。またタイの税制は投資家に有利で、物件所有中のランニングコストを低く抑えることができます。たとえば1億円程度の物件にかかる固定資産税は年間3万円程度。ハワイなどと比較すると驚くほど低水準です」
先述の通り、タイには日系企業の従業員が多く駐在しています。彼らをターゲットに考えれば、安定的な家賃収入が得られます。また、経済成長が目覚ましいタイでは、高額物件に興味を示す現地富裕層の厚みも増していると北浦氏は指摘します。
北浦「タイの人口は都市圏に集中しており、非常に活気がありま
「住みやすさと投資の旨み」という利点を同時に叶えるタイ。日本国内の富裕層を惹き付けるのも頷けます。実際に「タイに拠点を構えて、資産運用に取り組みたい」と考える人も多いようです。
次回はタイでのスムーズな資産運用をサポートする永住権や、国営の長期滞在プログラム「タイランドエリートビザ」の概要などを伺っていきます。