ホテルオープン1ヵ月で36室を完売
昨年の5月に本格参入したトレーラーホテル事業ですが、まずはホテル用の土地を確保しなければなりません。トレーラーホテルの最適な候補地は幹線道路沿いで、インターチェンジのそば。近くに工業団地があり、かつ、土地の値段が安いこと。当社独自のマーケティングによる候補地選定をすると候補地はたくさんありました。本来は借地でやりたいところでしたが、第1号店ですから土地取得をして自前の土地で運営しようということになり、国内自社工場からクルマで30分、現場の管理をしやすい那須塩原市に土地を購入しました。
土地の売買契約が完了したのが去年の秋口。トレーラーホテルの基本設計はできていたので、あとは工場のラインに乗せるだけ。販売開始は10月~11月。お客様にお見せできるのはホテル建設予定の土地、パースのみという状態で販売を開始しました。実際に投資家にお声がけをしたのは11月下旬からです。
どうやって告知するか悩んでいたところ、1本の記事が業界紙に載りました。
「賃貸のヒーローマンションのフランチャイズを展開するヒーローライフカンパニー(東京都港区)は、トレーラーを活用したホテル事業を開始する。2021年3月開業予定だ」──「全国賃貸住宅新聞」(12月7日付)です。
最初に大きな手応えを感じたのは、オープンを目前に控えた2月中旬に3日間開催した「完成現場見学会&試泊会」でした。工場で実際の製造過程やモデル棟を見学後、ホテル計画地まで熱心に足を運んでくれた参加者の関心の高さを肌で感じることができました。那須塩原市の渡辺美知太郎市長も視察に訪れました。
「Trail inn 那須塩原」は、予定通り3月1日にオープン。全36室が完成し、トレーラーホテルにふさわしい外観が姿を現しました。売れ行きは好調。オープン前の完売は逃したものの、1カ月未満の3月下旬には「完売御礼」ののぼりが立ちました。
投資形態/Trail inn ホテルを購入、運営者に賃貸する事業
販売者/株式会社ヒーローライフカンパニー
ホテル運営者/株式会社ヒーローライフカンパニー
販売単位/530万円(税別) 1口から購入可能
固定賃料/半年ごと後払い。支払い開始3カ月間は運営開始免責期間による減額あり。※詳細シミュレーションは、セミナーにてご案内します。
トレーラーホテルに投資していただいた投資家の皆さんの顔ぶれも多彩でした。36室を購入したのは全14事業者。多くが企業経営者で、個人であっても資産管理会社を運営している投資家の皆さんです。最も大口客(法人)は10室まとめて購入。1室からホテルオーナーになれる点が大好評でした。
平日の長期滞在客確保して高い稼働率を目指す
「Train inn 那須塩原」はJR那須塩原駅よりクルマで15分。国道4号線・西那須野バイパス沿いにあります。産業道路ですから1日中クルマの往来はありますが、周辺は工場や倉庫が多く、人通りが多い場所ではありません。
このようにTrain innの立地戦略は、駅近・市の中心部に出店する通常のビジネスホテルとは真逆です。宿泊利便が悪く、郊外の工業団やプラント工場などに近く、しかもクルマ利用が前提ですから主要・幹線道路沿いがベスト。発電所やダムやトンネル工事といった大規模な建設プロジェクトがあれば理想的です。
もともと、メインターゲットは郊外の工場プラントや建設現場への出入り業者、メンテナンス事業者など。市況に左右されやすい観光客やインバウンド需要は想定していませんでした。平日の安定した需要を見込んでおり、そこに土日の観光客がプラスアルファされることで、75%以上の稼働率を見込んでいました。
第1号店の那須塩原ではこのマーケティング戦略が見事に的中。36室のうち半数の16室は、1カ月単位の長期滞在者で埋まりました。近くのゴルフ場に併設するホテルの建設工事関係者などでした。
そして肝心の稼働率ですが、3月1日のオープンから今日まで、「ほぼ満室」です。100%と言えないのは、いざというときのために空室を1~2部屋確保しているからです。平日、土日関係なく、前々日まで稼働率75%前後で推移しているのですが、前日と当日で満室になるという状況が続いています。まさしく想定外でした。
候補地選定が成功した那須塩原のロケーション
実は、那須塩原市はトレーラーホテルのロケーションとしては申し分ありませんでした。スキーができ、温泉があり、ゴルフができ、テーマパークあり、湖あり、キャンプ場もあります。皆さん前泊して、翌日朝早くから1日遊んで帰ります。
他にもコロナで本格的な旅行は無理なので、アウトドアやキャンプを楽しむ人たちもいました。クルマのナンバーを見ると、2~3時間かけて他県から来る人も。「ビジネスホテルは飽き飽き。一度はトレーラーに泊まりたかった」という初体験組も目立ちました。
実際の客室は、それがトレーラー(クルマ)であることを忘れてしまう快適空間です。広さは13㎡で、通常のホテル同様のユニットバス、トイレのほか、キッチン、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、クッキングヒーターを常備しているので簡単な調理が可能。レストランを併設していますが、近くにはコンビニもあります。
ホテルのオペレーションは、チェックイン・チェックアウトは非接触。事前にネットで予約&カード決済した顧客がフロントで自ら端末を操作、カードキーを発行する仕組みなので、フロントも無人です。部屋は完全に独立していて、通路は屋根もなく、ウッドデッキを並べただけの「密」とは無縁の構造です。
コストダウンを目的に始めたのですが、結果的にこれが時代(コロナ対策)にマッチしました。トレーラーホテルは、コロナが逆風ではなく追い風に作用した、数少ない業態といえるのではないでしょうか。
ここまでの説明で、トレーラーホテルの輪郭がつかめたと思います。次回はいよいよ投資物件としての「Trail inn」のスキームや利回りについてご説明します。
仲田幸嗣
株式会社ヒーローライフカンパニー 常務執行役員