オーストラリアの地方都市に「移住」が多い3つの理由
シドニー、メルボルン、ブリスベンなどオーストラリアの6主要都市における不動産価格は、一時的に経済を休眠状態にするという政府の強硬策(都市封鎖等)の結果、一時的に下落しました。
しかしその後、感染拡大の抑制、緊急財政支援を含む政府による景気復興施策の効果が出始め、最終的にはシドニーとメルボルンを除くすべての主要都市で新型コロナ発生時と比較し、価格がプラスに転じました(関連記事『オーストラリア経済…コロナ禍から急回復が見込まれる理由とは』)。
ただし、オーストラリア全体の不動産価格を正確に説明するには、地方都市の価格も考慮する必要があります。そこで重要になる指標が、「地方都市の不動産価格の推移/Regional Property Price Trend」です。
地方都市というと、「規模も大きくなく伸びしろもそう大きくないのでは?」と思うかもしれませんが、こちらは少し事情が異なります。
たとえば、筆者が住む地方都市を代表するクィーンズランド州の「ゴールドコースト」は、統計上では地方都市のカテゴリーに分類されています。しかし、人口はオーストラリア国内では6番目の規模で、域内総生産についても常に上位にあり、経済規模は毎年3%前後で拡大しています。
もう少しわかりやすく説明すると、ゴールドコーストは、シドニー、メルボルン、ブリスベン、パース、アドレードに次いで6番目に人口の大きい経済圏です。実は、タスマニア州全体(首都ホバート)の経済規模よりも大きいことは、意外に知られていません。
地方都市はその土地に見合った独特の経済圏を発展させていますが、オーストラリアの特徴として、首都圏から離れた地方都市にも多くの人が移住してきます。それはなぜでしょうか?
その理由の一つに、賃金の格差があまりない、という点があげられます。日本では、東京都と沖縄県では最低賃金には3割程格差があり、地方に行くと賃金が下がっていくという現象が起こりがちです。
しかし、オーストラリアでは最低賃金、職業別、キャリア歴などに応じた賃金決定法が全国レベルで制定されていて、どこに移住しても政府の制度のもと、公平な待遇を得られるという仕組みができ上がっています。その制度が、人の移動の動機付けになっています。
また、今般の新型コロナ禍の対応策として制定されたリモートワークの新制度も地方都市への移住に拍車をかけていると考えられます。
さらに、これは価値観によりますが、「日本人は農耕民族で一つの場所に長く止まる一方、オーストラリア人は狩猟民族の類で、とにかくいい条件があれば次の場所に行く」という国民性があります。つまり、オーストラリア人は、他所に移住することに対して日本人ほどハードルを感じない傾向があります。