不動産オーナーは、健全な不動産経営のために、常に管理費が適正かどうか注視しなければならない。しかし“エレベーター”に注目し、コスト削減を模索したことのあるオーナーは数少ないだろう。なぜなら「エレベーターの保守・管理コストは下げられる」という事実自体、あまり知られていないからだ。そこで今回、独立系のエレベーター保守専門会社であるジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社の代表取締役会長兼社長、CEOの石田克史氏にエレベーター保守・管理業界の現状とエレベーター・コストについて話を伺った。

なぜ安くできるのか?20〜50%のコスト削減が可能

マンションやビルに設置されるエレベーターには、いくつかの設置基準がある。まず建築基準法34条で、高さ31mを超える建物(7~10階建てに相当)に対して、非常用昇降機の設置が義務化されている。また高さ30m以下の物件であっても、各地方自治体の条例に該当する場合は、それに従わなければならない。さらに平成7年に国土交通省(当時、建設省)が発表した「長寿社会対応住宅設計指針」では、6階以上の高層住宅に関してはエレベーターの設置を義務化し、さらに3~5階建ての中層住宅等にもエレベーターを設置するよう求めている。

 

ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO 石田克史氏
ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO 石田克史氏

「3つの基準を考慮し、現状、4階建て以上の建物の多くにエレベーターは設置され、その台数は全国で100万台にも及びます」と語るのは、ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社(以下JES社)の代表取締役会長兼社長、CEOの石田克史氏。

 

少子高齢化の進むなか、エレベーターの必要性はますます高まっていくと考えられるが、設備である以上、経年劣化は避けられない。利用者を収納したうえで数10mの高さまで引き上げていくエレベーターの特性上、安全面から保守・管理は必要不可欠だ。

 

「建物内のエレベーターは、年1回の法定検査が義務付けられており、実施後には報告書を提出しなくてはなりません。また有人、無人に関わらず、月1回の任意点検が推奨されています」(石田氏)

 

年間を通して必ず計上されるエレベーターの保守・管理費用だが、コスト削減を試みたことのあるという声は多くない。エレベーターの保守・管理はメーカーが行うのものであり、「下げることのできないコスト」という意識が強いからだ。またJES社のように、エレベーターの保守・管理を専門に行う、いわゆる「独立系」という会社が存在することは十分に認知されていない。

 

 

「エレベーターの保守・管理は、全体の8割をメーカーが請け負っていますが、その保守・管理費用には、製造コストが上乗せされているため割高です」(石田氏)

 

ではエレベーター保守専門会社に依頼した場合、どのくらいのコストカットが可能となるのだろうか。

 

「該当するエレベーターのメーカーにより価格変動が生じますが、20~50%の削減が期待できるでしょう」(石田氏)

 

[図表1]エレベーターの保守・管理費用の構造

 

エレベーターの保守・管理費用に関し、無意識だったオーナーにとっては、驚きの数字ではないだろうか。

適正価格で「高品質なメンテナンスサービス」を実現

上記のように、エレベーターの保守・管理費用は、メーカーでなく専門会社へ依頼することで、大幅なコストカットが実現する。しかし利用者の命を預けるエレベーター、気になるのは安全面やサービスの質だ。

 

「弊社のコントロールセンターは、日々、進化しています。緊急時は直接通話のほか、二次元コードを読み取ることでWeb回線を通じて救出・復旧の依頼もできます。万が一、電話回線が寸断された場合でも安心です。また700名以上のエンジニアの位置をGPS端末でリアルタイムに把握し、現場に急行させる体制も確立しています」(石田氏)

 

またJES社のこだわりは、保守・管理で使用するエレベーターの部品にも現れている。

 

「エレベーターの保守・管理では、安全性に関わる部品はメーカー純正品を使用し、安全・安心を最重視しています。また各メーカーが部品供給を停止していますが、柔軟なエレベーター更新の提案ができるよう、リサイクル部品の調達にも力をいれています。これらのパーツをストックするのは、全国に8ヵ所あるパーツセンターです。部品の安定供給はもちろん、緊急時でも迅速に復旧できる環境を整備しています」(石田氏)

 

写真左上から時計回りで、JES社のコントロールセンター/JES社の質の高い保守・管理サービス/万一の災害時にも迅速に対応/多彩な部品が補完されているパーツセンター
写真左上から時計回りで、JES社のコントロールセンター/JES社の質の高い保守・管理サービス/万一の災害時にも迅速に対応/多彩な部品が補完されているパーツセンター

 

さらにJES社は遠隔からエレベーターの運転状況やコンディションを把握できる新技術『PRIME(プライム)』を開発。これにより故障の予兆をいち早く察知し、障害が発生する前段階での対応を可能にしている。『PRIME』ができることは、遠隔監視だけに留まらない。

 

「『PRIME』を導入することで、リモート遠隔点検が可能になります。いわゆる無人点検です。所要時間は5分程度で、もし途中で利用者が現れた場合は、そちらを優先することができます。有人点検の頻度を大幅に減らすことができるので、コストカットにも貢献します」(石田氏)

 

独立系のエレベーター保守専門会社で、遠隔監視、無人点検を実現しているのは、JES社、ただ一社である。JES社はメーカーと同等の安全性とサービスの質を担保し、さらにコスト削減を実現させる唯一の存在と言えるだろう。

 

次回はエレベーターの更新について話を伺っていく。

 

【動画でJES社のコントロールセンターのある最新研究開発施設「JES Innovation Center(通称JIC)」について知る】