「任意組合型」の共同出資型不動産の特徴
不動産投資において、長期間にわたって安定的に利回りを得て、トラブルなくその不動産を子孫に継承し、うまく出口を迎えることは想像以上に難しい。実際、不動産物件の管理や空室リスク、その運営のわずらわしさなどのハードルから、新たな不動産投資に踏み切れないという富裕層も少なくない。
この不動産投資のハードルの高さを解消するソリューションとして、近年、にわかに注目を集めているのが「不動産小口化商品」だ。人気の高まりとともに商品を提供する業者も急増しているが、さまざまな種類があり、業者や商品ごとに品質の差があるのが現状である。
不動産を小口化して販売する商品自体は昔からある。J-REITなども本質的には不動産を小口化して販売しているものだが、近年「不動産小口化商品」といえば、不特法(不動産特定共同事業法)に基づいて、匿名組合や任意組合などの組織を作り、特定共同事業として不動産物件の取得や管理を行うスキームを指すのが一般的となっている。
これには「匿名組合型」「任意組合型」など複数のタイプがあるが、現在、富裕層の間で人気が高いのが「任意組合型」による不動産小口化商品だ。簡単にいうと、一件の不動産を複数の投資家が共有し、その共有持分を任意組合に出資、そして任意組合が物件の管理、運営を行い、賃料などの収益を口数に応じて投資家に分配するというものである。そのため「共同出資型不動産」とも呼ばれる。
任意組合型の共同出資型不動産の特徴は、対象となる不動産物件の所有権を、個々の投資家が共有持分として直接保有する点だ。ここが、「匿名組合型」やREITなどと大きく異なる点である。
共同出資型不動産が「相続対策」にも向いている理由
持分は投資家の所有であるため、たとえば投資後、何らかの事情でキャッシュが必要になった場合、それを売却して換金することができる。また、相続の際の財産評価については、通常の不動産と同様の計算方法で評価されるのが原則である。つまり、小規模宅地等の特例などの減税制度、あるいは、相続税評価額と市場価格とのかい離による資産圧縮効果などについて、通常の不動産投資と同様のものが得られるということだ。この点が、実物不動産の持分を所有する共同出資型不動産の大きな特徴であり、他の不動産小口化商品と比較した場合の優位点である。
また、共同出資型不動産が相続対策に向いているとされるのは、資産圧縮効果があることだけではなく、口単位での分割購入・売却ができるため、譲渡や相続の際の評価が明確で分割しやすいという点もある。
たとえば3名の相続人を持つ人が、3億円の不動産を1件保有しているとしよう。相続が発生した場合、3名それぞれへ、不満なく遺産分割をするには手間もかかり、そもそも厳密な分割は難しい面も多い。しかし、1口500万円の共同出資型不動産を60口購入(3億円分)しておけば、1人それぞれ20口ずつという公平な遺産分割が簡単に実現できる。
特定の相続人に寄与分などの事情がある場合には、配分する口数を調整すればいいだけだ。不動産小口化商品の購入理由にいわゆる「争続」防止メリットを挙げる人が多いのもうなずける。
共同出資型不動産ならではの「エリア戦略」の重要性
その任意組合型の不動産小口化商品を提供する株式会社コスモスイニシアの「セレサージュ」ブランドが人気を集めている。2017年に代官山、2019年2月に表参道で物件を発売し、特に表参道においては早い段階で完売と好評のシリーズである。
「セレサージュシリーズで想定している利回りは、たとえばJ-REITなどと比べても、決して高いわけではありません。その点が投資家様からどう評価されるのかを、2件目の表参道までは、少し心配していました。ところが蓋を開けてみれば引き合いは非常に強く、私たちの想定以上に現物不動産を小口で所有したいというニーズが存在していることがわかりました」
このように語るのは、株式会社コスモスイニシアソリューション事業部投資運用商品課課長の北島祐二氏である。そして今回、代官山、表参道に続くセレサージュシリーズの第3弾として発売されるのが「セレサージュ中目黒」だ。
中目黒は、もちろん都内でも屈指の人気エリアだが、代官山、表参道という「王道」のブランドエリアに比べると、やや小規模で個性的なエリアという印象があり、全国的な知名度という点では、前2エリアには劣るかもしれない。しかし、その人気、商業地域としての安定性は高いという。
「弊社では、専門の物件仕入れ部隊が毎月1000件程度の物件情報を集め、精査しています。その中でも収益物件であるセレサージュシリーズは、将来にわたって安定した賃貸需要が見込め、長期的に物件価値が維持されるエリアが適切である、ということを第1に考えて選定しています」(北島氏)。
どんな投資用不動産物件でも、エリアの価値や将来性が重要であることは間違いない。しかし、共同出資型不動産スキームのセレサージュでは、とりわけその点を厳しく見ているという。
通常の収益物件の場合、基本的に販売によって取引は終了する。もちろん「売ったらあとは知らない」というわけではなく、さまざまなフォローが継続されるが、取引関係としては販売によって終了するのが原則だ。
一方、セレサージュの場合は、投資家が作る任意組合の理事長を「不特法事業者=コスモスイニシア」が務め、物件の運営管理や収益分配業務を引き続き行っていく。投資家と同社とのパートナー契約関係が続いていきながら、投資家の資産形成がサポートされる。そのため、長期的な安定性がさらに重視されているということだ。株式会社コスモスイニシアソリューション事業部投資運用商品課の山内崚汰氏はこう語る。
「現在、東京都内でも、中心区部の商業ビルの利回りはかなりの低水準になっています。そのため、『もっと高い利回りが見込める周辺エリアや、地方都市でセレサージュシリーズを出さないのか』というお問い合わせをいただくこともあります。しかし、高利回りが見込めるエリアは、賃貸需要や物件価値の長期的な安定性という面での懸念が払拭できません。そのため、お客様の長期的な資産形成を目的とするセレサージュシリーズには、マッチしないだろうと考えています」(山内氏)。
相続後まで見据えた長期的な資産形成に向いている共同出資型不動産だからこそ、強い需要が見込めるエリア選びが、やはり重要になるということだ。次回は、今回選ばれた「中目黒」が持つエリア特性や需要特性についてさらに探っていく。