「老後は海外でのんびり暮らしたい」「子どもにいい教育機会を与えるために海外移住をしたい」――近年、海外の居住権や永住権を取得しようとする富裕層が増えている。そんな中、英語ができなくても、ビジネスをしなくても、移住する国の企業や不動産等に投資することで取得できる「投資家ビザ」が注目されている。本連載では、日本のみならず、世界の富裕層の間でも人気が高まっている「投資家ビザ」の概要とその魅力について、ポルトガル、米国等の実例をもとに徹底解説する。第2回目は、米国「EB-5」の魅力について、株式会社アエルワールド代表取締役社長・大森健史氏に伺った。

10年間有効のグリーンカード(通常永住権)が取得可能

前回は、英語ができなくても、現地でビジネスをしなくても、一定のお金を入れるだけで取得できる「投資家ビザ」の魅力について解説した(第1回)。移住先として人気の高い国はほかにもあるが、何といってもハワイを含む米国は、日本の富裕層にとって根強い人気がある国だ。

 

 

米国にも「投資家ビザ」に該当する外国人移住のための優遇制度がある。1992年に導入された「EB-5」と呼ばれる制度である。

 

株式会社アエルワールド代表取締役社長 大森健司氏
株式会社アエルワールド代表取締役
大森健史氏

「米国経済の発展と雇用促進を目的に制定されたグリーンカード(永住権)取得プログラムです。米国移民局が認可した不動産開発などのプロジェクトに50万米ドル(約5,400万円)以上投資し、一定の条件を満たせば、自らビジネスを始めて現地の人材を雇わなくても米国の永住権を手にすることができます」と、アエルワールド代表取締役の大森氏は説明する。

 

このプログラムで米国の永住権を取得するまでには、2つの大きなステップがある。まず、実際にプロジェクトに投資し、「条件付き永住権」を取得するための「I-526」と呼ばれる申請を行う。およそ2年の審査期間を経て申請が承認されると、移民申請を行い、大使館面接、渡米を経て条件付き永住権が与えられ、米国での2年間の居住が可能となる。

 

そこからさらに21ヵ月後に、条件付き永住権の「条件」(2年間のみ有効)を解除するために「I-829」と呼ばれる申請を行い、これが承認されると、晴れて10年間有効の通常永住権(グリーンカード)が取得できるという仕組みだ

 

「数年がかりにはなるものの、米国の一般的なビザ取得と違って、現地で直接ビジネスを起こし、人を雇うといった必要がなく、プロジェクトにお金を入れるだけで永住権が取得できることから、非常に人気の高いプログラムです」(大森氏)。

 

プロジェクトは1,100件以上…「業者選び」に注意を!

ただし、EB-5の利用に当たっては注意したい点がある。それは、投資をするプロジェクトがきわめて肝要であり、その管理業者(正式名称:リージョナルセンター)の実績が十分か否か、しっかり見極めることが必要だ。

 

当然全ての実績を開示していない管理業者は問題外である。

 

「EB-5は、米国永住権を取得したい海外の富裕層に非常に人気の高いプログラムであるため、対応するプロジェクトの数は全米で1,100件以上もあります。なかには、成功実績のないプロジェクトや、しっかり管理されず頓挫してしまうプロジェクトも多く、お金は入れたのに、グリーンカードの取得どころか、その前段階である条件付き永住権すら取得できなくなってしまうケースもあります」(大森氏)。

 

またEB-5を利用して投入した資金は、グリーンカードを取得し、プロジェクトが完了すれば返金されるが、プロジェクトの失敗によってお金が戻って来なくなる例もあるようだ。

 

「管理業者を選定する際には、過去のプロジェクト実績において、①条件付き永住権承認(I526)、②通常永住権承認(I829)、③投資した資金の払い戻し、④過去に失敗(I526やI829の承認)したプロジェクトがないこと、という4つの実績をしっかり上げている管理業者を選ぶことが大切です。残念ながら、上記全ての条件をクリアできている管理業者のプロジェクトは、全米で僅か1%未満であると思いますので、その確認はとても重要です。当社(アエルワールド)にご相談いただければ、プロジェクトの選び方から、上記4条件を満たしたプロジェクトや管理業者の情報のご提供が可能です」(大森氏)

 

そのひとつが、米国中西部の都市、ミルウォーキーで現在進行中の「BMOハリス・フィナンシャルセンターEB-5プロジェクト」だ。カナダ5大銀行のひとつであるモントリオール銀行を擁するBMOフィナンシャルグループの地域本部となるビルの建設プロジェクトであり、EB-5申請手続きにおいて米国屈指の実績を誇るプロジェクト管理会社が管理している。

 

[図表]BMOハリス・フィナンシャルセンターEB-5プロジェクト 完成図
[図表]BMOハリス・フィナンシャルセンターEB-5プロジェクト 完成図

 

ちなみにEB-5プロジェクトでは、1人のグリーンカード申請者につき最低10人の新規雇用を創出することが条件となっているが、同プロジェクトは最大32.57人と十分な雇用創出を見込んでいる。

 

「過去の申請者1人当たりの雇用者数が10人をどれだけ上回っているかという点も、管理業者選びにおいて重要なポイントです」と大森氏はアドバイスする。

50万ドルの投資永住権は11月20日まで!それ以降は?

最新情報だが、米国の投資永住権プログラムである「EB-5」の投資金額が2019年11月21日以降は50万ドル→90万ドル以上に値上がりすることが発表された。

 

つまり日本円で試算すると約5400万円(50万ドル)の投資で申請できたのに、11月21日以降は約1億円(90万ドル)以上にアップするということだ。

 

個人の状況によって異なるが、申請準備期間(2-3か月)を考えると、待ったなしの状況といえるだろう。

 

取材・文/渡辺賢一 撮影(人物)/永井浩
※本インタビューは、2019年7月3日に収録したものです。