コンビニ経営の成否を左右する「立地」をどう選ぶか?
第1回でご紹介したように、ミニストップでは4タイプのフランチャイズ契約を提供しています。
そのうち、ロイアルティがもっとも低く設定されている「Sタイプ」は、オーナー自身で土地・建物を用意していただくものです。
ただし、フランチャイズのチェーン店として展開する以上、「どんな場所でもいい」というわけにはいきません。本部では、加盟店の経営実績データから、繁盛店になりやすい立地、なりにくい立地の判断をしています。経営を希望される土地がコンビニ経営に向かないと判断した場合は、オーナーと本部の双方にとってメリットがないので、原則的にお断りをしています。
「Sタイプ」は、お持ちの土地がコンビニ経営に向く立地である場合や、以前に別の小売店を経営していた方が業態転換でコンビニにしたい場合などに向いている契約プランです。
◆SLタイプ、CLタイプ、向いているのはどんなケースか?
「SLタイプ」「CLタイプ」では、本部が用意した土地を利用していただきます。もちろん、その土地は本部がコンビニ経営に向いていると判断したものなので、立地面のリスクを軽減させることができます。そのため、ある程度の資金調達が可能な方には、どちらかのタイプを選んでいただくようおすすめしています。
「SLタイプ」は、オーナーが土地の賃借料を支払います(うち3割は本部補助)。そのため、土地賃借料が比較的低いエリア、たとえば、都心よりは郊外、駅前よりは駅から少し離れた住宅街などで開店したい場合に向いています。
一方「CLタイプ」では、内外装費をオーナーが負担します。内外装費は、入居する建物にもよりますが、通常は広い店ほど高く、狭い店ほど低くなります。そのため、どちらかといえば都心部や駅から近い場所で、小さめの店舗で開店したい場合に向いているといえるでしょう。
はじめてのコンビニ経営では、自宅からさほど遠くない場所を選んでいただくようおすすめしています。やはり、不測の事態が起きたときに、すぐ店舗へ駆けつけることができるかどうかは重要です。とくに、まだ経営に慣れていないうちは、自宅の近くに店舗があったほうが安心感を得られるでしょう。そこで、用意可能な資金に加え、自宅のエリアによって「SLタイプ」と「CLタイプ」のどちらが適切かを検討することになります。
具体的に検討いただく際には、候補立地による詳細なシミュレーションから、キャッシュフローや利益を確認します。そして、収益の核となる店舗を作り、そこから多店舗展開を目指すのがコンビニ経営の王道です。この多店舗展開を成功させる、すなわちコンビニ経営を大成功に導くには、やはり自分の分身となる人材を早い段階で育てることがポイントです。そして、その分身がまた次の分身を育てる。多店舗経営を実現させているオーナーは、この人を育てるという部分でうまくいっている方がほとんどであり、これこそがコンビニ経営成功の秘訣といえるでしょう。
なお、多店舗展開の場合は、必ずしもすべての店舗が自宅の近所である必要はありません。複数店を持ち、すべての店舗が違う市区にあるというオーナーも珍しくありません。こうした経営スタイルを支えるのは、やはり自らが育てた優秀な人材たちなのです。
コンビニ業界全体の成長を担う「潜在ニーズ」の発掘
◆コンビニ業界に成長の余地はあるのか?
日本フランチャイズチェーン協会の調査によると、2019年1月時点で、全国のコンビニ店舗数は55,779店となり、2018年から559店増加しました。すでに飽和状態に近いという見方もあり、業界全体としての将来性を疑問視されている方もいるでしょう。
しかし私たちは、その点についてはまったく心配していません。というのも、人々のライフスタイルが変化しつづけるなかで、より便利に、より良い商品が欲しいという新しいニーズは尽きることがなく、まだまだ成長の余地があるからです。
昔は仕事中に休憩しておやつを食べるといったことは考えられませんでしたが、今では当たり前の光景になっています。そのときに、オフィスビルの外にあるコンビニまで5分かけて歩いていたら、往復で10分以上かかります。それなら、ビルのなかにコンビニを増やせば、より便利になるでしょう。
また、街が再開発され、住宅の配置が変わったり新しい道路ができたりしたら、コンビニに最適な場所が新たに生まれるかもしれません。10メートルの立地の違いが、売上に大きく影響することもあるのです。
生活環境や習慣の変化によって、商品のニーズはどんどん変わっていきます。その一例として、冬のアイスクリームがあります。意外かもしれませんが、アイスクリームの売上は、夏よりも冬場のほうが上回っています。夏はかき氷が売れるので、氷菓全体としては夏場のほうが多いですが、高価格帯のアイスクリームは冬場のほうが売れるのです。昔であれば、冬にアイスを食べるという発想はありませんでしたが、実際に売ってみることで、隠れたニーズを発見することができました。どのコンビニチェーンでも、そういった潜在ニーズを積極的に探しつづけています。
◆日々進められている内部の効率化
一方、コンビニ店舗内部の効率化も、本部主導で日々進められています。
たとえば、レジ決済時に複雑な作業が伴う場合、画面上に作業マニュアルを表示することで、スタッフの負担軽減につなげています。また、店舗の床材に磨かなくても光る素材を使用することで、ポリッシャー(回転式の洗浄機)による床清掃が不要になりました。
また、宅配便の店舗受け取りなどの新サービスが導入される際には、歩数単位での導線改善を行っています。業務に伴うオペレーションを分解し、最適な物品の配置や動線を検討します。さらに、セルフレジの導入も徐々に進めているところです。
こういった内部の効率化により、スタッフの作業量を大きく減らせれば、以前は3人必要だったスタッフが2人で足りるようになるかもしれません。これは、大きなコスト削減につながります。そこまではいかなくても、スタッフに余力ができれば、品出しや接客に割ける時間を増やせるため、顧客満足度も向上していくでしょう。それらはいずれにしても、店に利益をもたらす要因となります。
このように、立地や商品ニーズなど外的要因のさらなる発掘と、内的な効率化を日々進めていくことの両輪により、コンビニ業界はまだまだ成長していけると私は考えています。
事業多角化、定年退職後の第2の人生、あるいは遊休土地の活用や業態転換を考えている方は、コンビニ経営を検討してみてはいかがでしょうか。