経済的自由を得るための「最短のパスポート」
この記事の読者で、賃貸住宅経営を本業にしている方は、おそらく少ないのではないかと想像します。本業として別のお仕事を持ちながら、副業や資産運用の一環として不動産投資をなさっている、あるいは、これからチャレンジしようとお考えの方がほとんどかもしれません。
私もかつては不動産とまったく関係のないアパレル商社などで働き、ごく普通のサラリーを得ながら少しの自己資金を貯め、多額の融資を受けて、中古の木造アパートを購入しました。これがまさに人生の転機となり、以後、そのアパート経営から得られるキャッシュフローをテコとしながら、2棟目、3棟目と物件を買い増しし、アパレル商社を辞めるときには、45部屋の大家となっていました。
そのような自分自身の経験、また不動産投資で成功した多くのお客様に接してきた経験からも、なるべく早く投資を始めること、それも可能であれば1棟不動産を購入することこそが、将来に向けて大きな資産を形成し、経済的自由を得るための最短のパスポートであると確信しています。
前職の不動産会社に勤めていた際、私が実際に販売に携わったお客様の中にも、普通のサラリーマンでありながら、1年で4棟、計8億円もの不動産を購入し、脱サラをして専業賃貸経営者に転身し、経済的自由を手に入れたお客様がいらっしゃいます。このように成功している方の特徴としては、決断力の高さがあります。「これは買いだ」と思える物件に出会ったら、迷わず購入を決めていることです。
しかし現在、いわゆる「スルガショック」と前後して、投資用不動産購入に対する金融機関の融資姿勢が非常に厳しくなっており、多くの金融機関で、投資用不動産に対する融資の取扱いを引き締めている状況です。もちろん皆無になったわけではなく、中には扱いを継続している金融機関もありますが、担保評価の見方が非常に厳しくなっています。このハードルをどう乗り越えるのかが、現状の不動産投資では、最初の関門になります。
「価値が高い不動産」を得られるチャンスが到来した⁉
投資用物件に対する融資を受ける際、ざっくり言うと、「積算評価」(土地、建物の価値評価の合計)と「事業性評価」(賃貸物件としての収益力の評価)の合計で物件価値が評価されて融資金額が決定されます。以前は、事業性評価を半分以上の割合で見て融資する金融機関が多くありました。ところが、現在では3分の2以上が積算評価で見積もられます。そのため、積算価格が高い物件でないと、どうしても希望する融資額が出にくいということになります。
では、どういう物件の積算価格が高くなるかというと、いろいろなパターンがありますが、代表的なのは、中古物件で土地の割合が建物に対して大きい物件です。たとえば、先日私たちが実際に販売した物件ですが、木造アパートで、全戸分の平置きの駐車場がついている中古物件がありました。積算価格のうち、中古の建物は評価が低く、土地は評価が高くなります。したがって、このように土地の割合が大きい物件だと、物件価格と積算価格の乖離が小さくなり、全額融資が受けやすくなります。
簡単に言うと、ほぼ「土地代だけ」に近い価格づけがなされている物件でないと、全額融資が下りなくなっているということです。当然ながら、そのような物件は、その数自体が非常に少なく、希少なものです。融資が下りる物件自体が減ってしまったため、投資用不動産業界では、不動産会社そのものにまで淘汰の波が及んでいます。業者にとっては、厳しい環境であり、まさに冬の時代だと言えるでしょう。
では、物件の購入を希望されている投資家の方にとってはどうかというと、やはり厳しいと言える面、そうでない面の両面があります。
厳しい面としては、金融機関が慎重になっているため、融資の際に求められる、いわゆる「属性」の条件がより高くなっていることです。
先に述べたように、物件に対する融資審査も非常に厳しくなっていいます。ただ、これは裏を返せば、現在の厳しい審査を通る物件は、少なくとも不動産の価値という面においては、超優良物件ばかりだということです。これが、将来の戦略の幅と、資産拡大の幅を大きく広げてくれます。つまり、たとえば5年経った後に売却する場合、価格が下がりにくく、上がっていてキャピタルゲインを得られる可能性があるということです。あるいは、その物件を担保として借り入れをして新たな物件を入手しようとする際に、担保評価が高くなるということを意味します。
積算評価が高いことは、必ずしも直接的に高い収益性やキャッシュフローを保証するものではありませんが、将来の戦略の幅が大きく広がることは間違いありません。
融資環境が厳しい時代だからこそ、もし融資を受けることができれば、必然的に評価が高い物件を入手できる可能性が高くなる……。逆説的ですが、物件に対する審査が厳しいことは、投資家にとっては必ずしも悪いことばかりではないと言えるのです。