不動産投資が過熱し続けている。首都圏の新築マンション販売戸数は5年連続で増加中。地銀によるアパートローン残高も日銀の調査開始以来、過去最高額を更新中だ。いかに、安定的に高い利回りを生み出す物件を見つけ出すか? と頭を悩ましている人も多いだろう。そんななか、通常の中古物件はもとより、敬遠されがちな「訳あり物件」までもバリューアップして売り出している不動産会社がある。その独自のノウハウはいかにして確立されたのか? 前回に引き続き、日翔レジデンシャル株式会社の後藤正樹社長にお話を伺った。

誰も手を出さない物件を「普通の物件」に変える

――殺人がらみの物件(前回)以外には、どんな訳あり物件を扱ったことがありますか?

 

後藤 いわゆる反社会勢力がらみの物件を扱ったこともあります。それは、隣に“事務所”があるという小さなマンションで、その事務所周辺には数えきれないほど防犯カメラが設1置されていて、物々しい……。当然、怖い方が頻繁に出入りするので、オーナーも自分のマンションに近づきたがらず、物件の視察の際には、一本道路を隔てたところから指を差しながら「あのマンションなんですけど」と、買い取りを打診されたんです(苦笑)。あくまで隣に事務所があるだけだったので、相場よりも数十%安い価格で買い取らせてもらい、空室をリフォームして投資用物件として販売したところ、すぐに買い手が見つかりました。

 

――確かに、自分が住むのでなく、投資用であれば買い手は見つかりそうですね。

 

後藤 そのほかにも、立ち退き交渉が必要な物件を扱ったこともあります。大手のハウスメーカーはまず、手を出さない物件です。それを仕入れて、立ち退き交渉をまとめて、更地にしてからハウスメーカーに売却したこともありました。

 

弁護士の方から「私物もまとめて買い取ってほしい」と連絡を頂き、所有者が自殺した物件を買い取ったこともあります。身内はすでにおらず、相続される人がいなかったようです。おそらく、亡くなった方は趣味人だったのでしょう。自宅には水上バイクが2台もありました。一応、当社のほうで私物や物件のお祓いをしたうえで、私物を売却。建物は取り壊して、更地にしたうえで売却しました。

 

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不動産の新たな価値を創造するプロ集団・日翔レジデンシャル株式会社

知恵を絞り、不動産の価値を高めるのが「プロ」の役割

――そのような訳あり物件は、買い手がつかないリスクがついて回るかと思います。どのようにして目利きを行っているのですか?

 

日翔レジデンシャル 後藤 正樹 社長
日翔レジデンシャル 後藤 正樹 社長

後藤 簡単に言ってしまうと、経験ですね。私はこれまで15回の転職を経験し、その都度、引っ越しも15回くらしてきました。東京23区のうち、7区に住んだことがあります。そのため、売り出されている物件の情報を見ただけで、その周辺にはどんな人たちが住み、どれくらいの家賃を支払っているかイメージできることが少なくないのです。そこから逆算して、買い取り後の売り値を弾き出して、「この金額だったら買ってもいい」と交渉するわけです。訳あり物件である分、そういう交渉がしやすいという一面もあります。

 

――普通の不動産会社が扱う“売りやすい物件”よりも、利益率は高くなるのでしょうか?

 

後藤 本当にまちまちです。今まで赤字になったことはありませんが、仕入れてリフォームして売り出したのに、原価とほとんど変わらない価格で売らざるを得なかったという物件もあります。一方で、境界紛争を抱えた築古の物件を格安で購入した際には、測量していたときに隣地の方から「おたくが買ったの? そのままでいいから売ってくれません?」と声をかけられ、何の手間も時間もかけずに仕入れ値の数倍の値段で売却することができました。

 

また、神奈川県のある駅前に立つ築40年以上のビルを、仕入れ値の倍以上の値段で売ったこともあります。その物件の隣には反社会勢力の方の娘さんが住んでいたようで、それを理由に当時の管理会社はロクに客付をせず、空室だらけになっていたんです。おまけに、古ぼけたビルなのに、保証金は10か月。そこで当社が買い取ってすぐに、保証金を3か月に引き下げたところ、すぐに満室になって高値で売却できたんです。

 

要は、もともとの管理会社の怠慢です。不動産のプロであるはずなのに、そのビルの価値を高める提案を何一つしてこなかった。なぜ保証金を10か月に設定しているのか? と尋ねても、「ずっとそうやってきたから」としか答えていませんでしたから。このように、古い慣習に縛られ、知恵も絞らず、不動産をダメにしている不動産会社は少なくありません。駅前のビルが空室だらけなら、夜も真っ暗でその土地の活気も失われてしまいます。地域活性化を担う仕事という認識がないんです。

 

――実際は高い保証金だけでなく、保証会社をつけることを条件にテナント募集している物件も少なくありませんね。

 

後藤 利用者目線がない不動産会社が多いんです。いかにして買ってもらうか? 利用してもらうか? という発想が乏しい。当社が扱う訳あり物件は、「訳あり」な分、売り値はどうしても周辺相場の半値から7、8割程度に落ち着きます。ケースバイケースですが、そんな安さに惹かれて購入される方が多いので、必要最低限のリフォームに留めて原価を抑えることを心掛けています。

 

一方で、プロの仕事として、本来であればフルリノベーションが理想です。ただ、コストがその分かかってしまう。当然、コストが上がれば売値に影響し、お客さんにとってお得感のない物件になってしまうので、そこは歯がゆい…。

 

その意味で、古くからある、非常に競争が激しい不動産業界ですが、実は“改善”の余地がおおいにある。アイディアとノウハウを蓄積してきた当社のような不動産会社が、今後、生き残っていくと考えています。さらに、社会にある問題を不動産を通して解決していくことができれば理想的ですね。

 

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取材・文/田茂井 治 撮影(人物)/永井 浩 
※本インタビューは、2017年8月28日に収録したものです。

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