高額療養費制度、生活保護・・・高齢者の生活を守る公的制度の例

前回は、病院に依存する日本の高齢者の現状について考察しました。今回は、高齢者の生活を守るために用意されている、「公的制度」の例を見ていきます。

高齢者に厳しい時代…早目に公的制度の利用を

ここまで説明してきたように、今後は高齢者にとって厳しい時代が訪れます。下流へ転落しないためには、自身の医療との付き合い方や生き方を見つめ直し、老後の人生設計をすることが重要です。

 

しかし、ここで紹介したように、小さなきっかけで経済的に困窮してしまうこともあります。高齢者は経済的に困窮しても、家族や周りの人に迷惑をかけたくない、もしくは経済的に困窮していることを知られるのは恥だと考えがちです。そうした高齢者がホームレスに転落したり、自ら死を選んだり、無理心中してしまうといった悲惨な末路をたどります。

 

しかし、そういった方々の状況を聞いてみると、もっと早い時点で公的な制度を利用していれば、転落は免れていたのではないかと思われる人は少なくありません。

制度についての正しい知識と理解で最悪の事態を回避

国は社会保障費の削減策を推進していますが、まだまだ「負担が軽減される制度」も埋もれています。しかし、これらの制度についてはあまり積極的に国民に周知されていないですし、申請や申告をしなければ利用できません。そこで最悪の事態を避けるためにも税金・医療・介護の負担を軽減する方法や、生活保護について説明しておきましょう。

 

税金を軽減する制度

 

●市町村税を軽くする「寡婦・寡夫」「障害者」

「寡婦・寡夫」とは夫または妻と死別・離婚・あるいは配偶者の生死が不明の人です。市町村税が無料もしくは所得に応じて低くなります。

「障害者」は要介護認定されている人や寝たきりの人にも適応されます。

 

●家族で合算して税金を軽くする「医療費控除」

1年間の医療費が10万円、あるいは所得金額の5%を超えた場合、最高200万円までの医療費控除が受けられます。

 

医療費や介護費を軽減する制度

 

●高額療養費制度

前でも説明しましたが、1か月の医療費負担がある一定の上限額を超えると超えた金額が申請により払い戻される制度です(詳しくは、書籍『長寿大国日本と「下流老人」』24ページをご覧下さい)。

●福祉給付金・福祉医療費給付制度

寝たきりや認知症の高齢者は申請して認定されれば、医療費の窓口負担が無料となります。

 

そのほかにも、

 

●無料の定額診療/無料の定額介護老人保健施設利用

実施機関に直接問い合わせます。

 

●介護保険の食事代・居住費軽減

所得に応じて負担が軽減されます。市町村役場に申請します。

 

●障害年金

うつ病や発達障害、脳梗塞の後遺症、心臓病、腎臓病、がんなどの方が対象となり、実施機関に直接問い合わせて利用します。

 

生活保護

 

生活保護を受けるというと、体面も悪く、また人様に迷惑をかけると、とてもハードルが高く考えてしまう人も多いようです。しかも、一般的に「生活保護を受ける」といえば全面的にすべての生活の面倒を見てもらうイメージが強いですが、実際はそうではありません。生活保護には、日常生活に必要な食費、被服費、光熱費などを扶助する生活扶助、家賃を扶助する住宅扶助、医療費を扶助する医療扶助、葬儀の費用を扶助する葬祭扶助などがあり、その人の状況により、必要な扶助を選ぶことができます。

 

また、よく家があるから受けられない、年金をもらっているから受けられないといった思い込みをしている人も多くいますが、それは誤解です。

 

生活保護に対する、よくある誤解を挙げておきましょう。

 

●貯金が0でなければ受けられない

●持ち家があると受けられない

●自家用車があると受けられない

●働いていたり、年金があると受けられない

●経済的に自立した親兄弟がいるから受けられない

 

これらはすべて誤解です。全国に相談窓口があるので問い合わせましょう。

 

[図表1]生活保護の種類と内容

厚生労働省ホームページ「保護の種類と内容」より作成
厚生労働省ホームページ「保護の種類と内容」より作成

 

[図表2]困ったときの相談窓口

全国各地に生活保護に関する窓口があります。 生活保護に詳しい弁護士などが相談に応じます。山田壮志郎 編著 「Q&A 生活保護利用ガイド―健康で文化的に生き抜くために」(2013 年/ 明石書店)より作成
全国各地に生活保護に関する窓口があります。 生活保護に詳しい弁護士などが相談に応じます。
山田壮志郎 編著 「Q&A 生活保護利用ガイド―健康で文化的に生き抜くために」(2013 年/ 明石書店)より作成

 

本連載は、2016年9月10日刊行の書籍『長寿大国日本と「下流老人」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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医療法人 八事の森 理事長

医療法人八事の森理事長(杉浦医院院長)。NPO法人ささしまサポートセンター理事長、NPO法人外国人医療センター理事、名古屋労災職業病研究会代表。1970年生まれ、1998年名古屋市立大学医学部卒。宗教法人在日本南プレスビテリアンミッション淀川キリスト教病院で内科・小児科から救急、ホスピスでの緩和医療まで幅広く研修。2000年名古屋市立大学臨床研究医、名古屋市立東市民病院(現・名古屋市立東部医療センター)で外科医として勤務。2010年4月から杉浦医院の副院長、2011年1月より院長に就任。

著者紹介

長寿大国日本と「下流老人」

長寿大国日本と「下流老人」

森 亮太

幻冬舎メディアコンサルティング

日本が超高齢社会に突入し、社会保障費の急膨張が問題になっている昨今、高齢者の中で医療を受けられない「医療難民」、貧窮する「下流老人」が増え続けていることがテレビや新聞、週刊誌などのメディアでしばしば取り上げられ…

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