スイス発祥で、アクティブ運用戦略を得意とするファンドハウス「GAM」。同社の2つのファンドにおいて日本株のポートフォリオマネージャーを務める三戸玲子氏へのインタビュー。最終回のテーマは「富裕層マーケットの本場スイスの分散投資事情とは?」。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス銀行)の幾田朋彦氏である。

スイスにはそもそも「国内株」「海外株」の概念がない

幾田 最後の質問です。チューリッヒという場所は、ウェルスマネージャーがたくさんいらっしゃるのと、欧州という性格上かなり資産配分の分散が進んでいると想像していますが、実際のところはいかがですか?

 

三戸 一般的に株式の配分は相対的に低いという感触を受けていますが、という感触を受けてそもそも株式の配分は、グローバルエクイティというアセットクラスとして分けられており、あまり国別にはなっていないですね。MSCI等のインデックスそのままのアロケーションになっていることが多いかもしれません。

 

 

幾田 日本では国内と海外の株式が全く異なるアセットとして分類されることが多いのですが、そういった分け方はされていなさそうですね。

 

三戸 スイスの人口がせいぜい700万人と、ヨーロッパの中で小さいという認識があるにもかかわらず、カントリーバイアスはあると聞いています。

スイス企業と同様に「グローバル株」化が進む日本企業

幾田 それは良い事なのでしょうか、それとも悪い事なのでしょうか? 私も自問するときがあるのですが、リスク分散の観点からは投資先の国を分けた方が良いのですが、国内企業の方が馴染みもあるし、為替リスクも負うことがないので、下手に海外資産に投資をするより安全な面がないわけではない。スイスの投資家はこの点をどのように考えているのでしょう?

 

三戸 良い悪いは私も判断しかねます。一方で、スイスの企業は一般的に海外売上比率が非常に高いのです。有名どころではネスレが真っ先に浮かびますが、例えばABB(スイスに本社を置く重電大手)などは海外売上比率がおそらく9割近かったように記憶しております。

 

そこまで海外売上比率が高いとスイス株というより実質グローバル株ですよね。株式投資については、投資先企業が最終的にどこで収益を上げているか、という点が最も重要なので、そういった議論をする余地があまりないのかもしれません。

 

 

幾田 投資先が直接的・間接的に分散されているのが当たり前、ということなのでしょうね。国内株式なのに、実質グローバル株である企業が多いという意味では、日本もそうかもしれませんね。

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたので、GAMおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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