なぜ個人事業主は現金出納帳を「手書き」にするべきなのか?

前回は、お金の「公私」を明確にするための勘定科目の記載ルールを紹介しました。今回は、現金出納帳を「手書き」で記帳すべき理由について見ていきます。

毎日の帳簿づけが「残高不足」を防止

「財布が空っぽのまま、現金払いで買い物をすることは可能でしょうか?」

 

(何をバカなことを……)と思うでしょうが、うっかりしていると、帳簿上、こういうウソのようなことが起こるのです。

 

現金出納帳を記帳していったら、残高がマイナスになった──。これは、本来、ありえないことです。リアルな現金の受け取りだけを記録するのが現金出納帳の役目です。つまり、空っぽの財布で買い物ができないように、事業用の財布に入っている現金以上の支払いは発生しないはずです。

 

では、なぜ財布に入っているお金以上の買い物ができるのか。それは、不足した分を、個人の財布から立て替えているからにほかなりません。そう、事業主の「私」が個人の「私」からお金を借りた。つまり、「事業主借」が発生しているはずなのに、それをスルーしている。

 

現金のやりとりを一つ一つ、現金出納帳につけていれば、こんな事態は起こりえないですし、毎日つけることで残高を意識するようになります。事業の運転資金がいつの間にか枯渇するようなリスク防止にもつながります。

「手書き」の現金出納帳でお金の感覚を磨く

〝論より証拠〟。実際に、現金出納帳をつけたことで、ムダ遣いが解消された方の事例をご紹介しましょう。学習塾のAさんです。あまりにも「お金がない」「何にお金を使ったかわからない」と口にしているので、現金出納帳を記帳してもらったことがあります。

 

すると、現金の出入りがクリアになり、またたく間に使途不明金が減り、残高を意識することで、月末の現金残高もプラスに転じたのです。これには、Aさん自身も驚きを隠せない様子でした。

 

便利なデジタルツールが、お金を見る目を曇らせるリスクについてはすでに指摘した通りです。個人事業主の方には、お金もかからず、1日10分程度時間をつくればできる手書きの現金出納帳をつけることを強くお勧めします。

 

「あれっ、お金が予想以上に減っている」

「売上に対して、出費が多いな」

 

と、事業に点滅する黄色信号への嗅覚を研ぎ澄まし、現金の大切さをしっかりと肌感覚で認識していただきたい。電卓をたたき、手書きで記帳してほしいのです。

 

現金出納帳は100円ショップで売っているようなモノで構いません。地味な作業のようですが、コツコツ記帳を積み重ねていくことで、お金の感覚も磨かれていくはずです。

 

[図表]出納帳記入の練習問題

 

以下を出納帳に記入してみましょう。

以下を出納帳に記入してみましょう。

 

[図表]答え

本連載は、2017年2月24日刊行の書籍『どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

関東信越税理士会行田支部 税理士

1999年税理士資格取得。税理士事務所に所属しながら顧客を増やすことを考えていたものの独立を決意し、櫻井税理士事務所を開設。2017年4月より、埼玉県羽生市に「ふたば税理士法人」を設立し、代表社員として税務・会計はもとより、独立開業支援から相続・贈与、事業承継まで、個人事業主の経営を全面的に支える。
2007年11月より関東信越税理士会埼玉県支部連合会が開設した会員相談室の相談員として県内の税理士及び税理士事務所の職員からの相談業務を行っている。
関東信越税理士会行田支部所属、日本税法学会会員、租税訴訟学会会員、日本ファイナンシャルプランナーズ協会会員。

著者紹介

連載手書きで簡単にできる個人事業主のための「出納帳」作成術

どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理

どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理

櫻井 成行

幻冬舎メディアコンサルティング

個人事業主にとって、日々のお金の管理や確定申告は、頭を悩ませることのひとつです。忙しい仕事の合間を縫って、毎年〆切ギリギリに何とか税理士に資料を提出する、という人も少なくないでしょう。数字や計算が苦手な人は特に…

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