前回は、自社の業績分析では「部門別」の考え方を徹底すべき理由を説明しました。今回は、現在の「会社規模」が適正かどうかを見極める重要性、過大な場合のスリム化の進め方を見ていきます。

「コンパクトな会社なら、経営を引き継げたかも…」

ここまでは主に専門家の指導のもとに分析をしたり、専門家に任せることで効率的に進められるものについて説明しました。ここからは、それらの準備が整った上で実施すべき次の段階、つまり経営者と後継者の両者が主体的に考え、双方で意見交換すべき内容について挙げていきます。

 

分析や検討が必要にも関わらず見落とされてしまうことが非常に多いのが、「自社の規模」の問題です。現状の会社の規模は果たして適正と言い切れるものでしょうか。

 

経営者の子どもでありながら結局家業を継がなかった方から、よく聞く発言を紹介しましょう。それは「もっとコンパクトな会社であれば、経営を引き受けたかもしれない」というものです。

 

創業者や現経営者の時代は、高度経済成長からバブルを経てきた時代です。いわば、経済が成長しずっと右肩上がりが続く儲かる時代だったということです。それ故に、会社の規模も業績拡大につれて大きくなっていったところが多くなっています。

 

ところが、現状の経営環境に照らし合わせたとき、果たしてそれが正しい会社規模なのかどうかについては、ここで一度見直しをしてみるべきです。

 

平成バブルの崩壊をもたらしたともいわれる経済の成熟段階を迎え、ゼロ成長社会、いやマイナス成長社会にもなりかねないのが、これからの日本です。後継者の時代を考えたうえで、現状の会社規模を客観的に判断しなければなりません。中にはすべてを承継したことで、後継者が大きな負の遺産までをも背負ってしまうことさえあるのです。

 

そのような点を考慮した現状分析の過程で、もし会社規模が適正でないと明らかになれば、会社のスリム化をしていく必要があります。

会社のスリム化は「後継者」が先頭に立って行う

ただし、スリム化を実施するのであれば、基本的に後継者自身が先頭に立たなければなりません。なぜならば、自らの決定の下に行わなければ、「これは親が決めたことだ」という逃げ道になってしまう可能性につながりかねないからです。

 

もちろん、現経営者のアドバイスを受けることはたいへん有益ですから、十分に両者で考え取り組み、最終的な判断は後継者自身で行うというのがベストであろうと考えられます。何ごとであれ、自分でイメージできないことには周りを納得させることもできません。

 

また、後継者は承継によって今後経営者としてあらゆる場面での決断を迫られます。その準備という意味でも、スリム化にあたっての決断は後継者に託された重要かつ有効な仕事であると言えるものです。

 

この例からも分かるように、後継者がつらいのは「すべてを引き継がなければならない」というプレッシャーがかかるところにあります。事業承継の成功のためには「引き継げるものだけを引き継ぐ」ことも、ひとつの有益な選択肢となります。

 

くり返しになりますが、現代はすべてにおいて万能な経営者が生まれにくい時代環境となっています。特に業績については、右肩上がりが続き想像もつかない大儲けが可能となることはほぼ不可能である時代です。

 

従業員100〜500人程度の会社の後継者にとって、これは一番悩ましい問題かもしれません。なぜならそのような規模の会社で、はるかに大きな1000人規模や、下手をすれば1万人規模の会社と戦っていかなければならないからです。その結果、当然、全方位で戦うことは無理だという結論に至ることもあります。

 

したがって、会社の一番儲かっている部門に資本を集中することで、その分野に注力して勝負を賭ける選択がよいことも多いのです。

 

これはとても勇気が必要ではありますが、それも含め親子で十分に対話しなければなりません。縮小継承というのも立派な事業承継方法のひとつですし、今後、さらに増えていくのではないかと私は考えています。

本連載は、2016年6月24日刊行の書籍『たった1年で会社をわが子に引き継ぐ方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

たった1年で会社を わが子に引き継ぐ方法

浅野 佳史

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本の多くの中小企業が承継のタイミングを迎えています。承継にあたっては、親から子へと会社を引き継ぐパターンが多いのですが、親子間だからこそ起こるトラブルがあることを忘れてはいけません。 中小企業白書による…

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