信託を活用した財産管理・・・「後見制度支援信託」の概要

今回は、信託を活用した財産管理の手法、「後見制度支援信託」の概要について解説します。※本連載は、山口明弁護士、田中貴一弁護士、高松志直弁護士の共著書籍、『民事信託活用の実務と書式  事業承継、財産管理、事業展開における積極的活用』(日本評論社)の中から一部を抜粋し、事業承継、高齢者の財産管理および新たな事業展開に信託を利用した場合のメリットと、申請時に使用する信託の文書書式の例を紹介します。

日常的に使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組み

信託を活用した財産管理ができる制度として、後見制度支援信託があると聞きました。どのような制度か、具体的に教えて下さい。

 

《関連ワード》

後見制度支援信託、信託銀行、信託契約、家庭裁判所

 

⑴制度の概要

 

後見制度支援信託とは、後見制度を利用する場合において、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を後見人が管理することを前提に、日常的に使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みです。日常的に使用しない金銭を信託銀行等が管理することになりますので、財産の適切な管理および利用のために活用できる制度といえます。

 

この制度は、

 

①成年後見の事件数は毎年増え続けていることを踏まえ、適正な資質を備えた専門職後見人を全国においてすべての事件で安定的に供給する態勢を確保すること

 

②事前のチェックを導入することによって不正を防止すること

 

を目的に創設された制度です。

 

具体的には、信託契約の締結までは専門性が高いので専門職後見人が携わるものの、信託契約締結後(将来の生活設計に沿った必要十分な財産が親族後見人の手元にくるような信託条件を設定します)の単純な事務処理段階に入った時点では専門職後見人が辞任し、親族後見人に交替することによって、専門職後見人の供給不足を補うことができます。また、家庭裁判所が発行する指示書がなければ信託財産からの払戻しができないという制度にすることによって事前のチェックを導入することができます。

 

後見制度支援信託は、成年後見と未成年後見のケースにおいて利用できます。

 

後見制度支援信託における信託財産は、元本が保証され、預金保険制度の保護対象になります。

 

[図表]後見制度支援信託のイメージ

 

家庭裁判所「後見制度において利用する信託の概要」より
 
 
家庭裁判所「後見制度において利用する信託の概要」より

後見制度支援信託で信託できる財産は「金銭」のみ

⑵対象となる財産

 

後見制度支援信託を利用して信託銀行等に信託することのできる財産は、金銭に限られますので、不動産、動産、株式等の金融商品については、後見制度支援信託の対象とはなりません。特に、多額の金銭の受領が見込まれるケースなどについては、専門職後見人が選任されることになると予想されます。

 

株式等の金融商品については、ケースによっては、後見制度支援信託を活用するために、個別事情を考慮して売却等を検討することがあります。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2015年7月25日刊行の書籍『民事信託活用の実務と書式  事業承継、財産管理、事業展開における積極的活用』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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日本橋中央法律事務所 弁護士

2005年弁護士登録、東京弁護士会所属。2005年から2011年に片岡総合法律事務所、2011年から2016年に野田総合法律事務所(パートナー弁護士)を経て、2016年に日本橋中央法律事務所を開設して現在に至る。特に、金融に関わる法務、不動産に関わる法務及び信託に関わる法務を得意にしている。

著者紹介

片岡総合法律事務所 弁護士

2007年弁護士登録、東京弁護士会所属。2013年から東京弁護士会金融取引法部事務局長。信託銀行、銀行、証券会社、クレジット会社、貸金業者などからの法律相談業務、各種紛争・訴訟への対応業務のほか、相続案件をはじめとする一般民事事件も手掛ける。

著者紹介

片岡総合法律事務所 弁護士

金融機関、信託、流動化取引等の金融法務を中心とする企業法務全般のほか、決済法務(クレジット・電子マネー・送金取引等)、情報関連法務(個人情報・マイナンバー)を手がけている。

著者紹介

民事信託活用の実務と書式 事業承継、財産管理、事業展開における積極的活用

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日本評論社

個人事業者等が民事信託を用いて事業承継や高齢者の財産管理、あるいは新たな事業展開を行う場合の利点や留意点を事例に則して解説。 [目次] 序 章 甲野家が抱える課題と展望 第1章 事業承継  第1節 相続におけ…

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