今回は、「アセット・ロケーション」について見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

どういった資産形成を、どこでおこなうのか

倹約家であれば、買い物をする際に食材についてどこで何を購入するのかについて考えますよね。

 

多くの食材はディスカウントストアで買い物をするけれど、肉や魚といった生ものは信頼できるスーパーで買うとか、ポイントが多く付く日はあのお店で買うなど、そのお店で何を買うべきかを冷蔵庫の中身とも相談しながら買い物全体の中で考えます。

 

このように、日常生活においてなにげなく買っている食材も、しっかり者はきめ細かく買う場所を考えて買い物をしています。資産形成でもこの考え方は大切です。資産形成をおこなうのは、どの金融機関のどういった口座でも同じではありません。頻繁に取引する可能性がある投資商品であれば、取引手数料の低い金融機関に口座を設けて取引をしたほうが得に決まっています。投資に不馴れで頻繁に相談したい人は、ネット取引よりも最寄りの金融機関との取引を優先するでしょう。

 

このようなリアルな取引金融機関の選択以上に大切なのが、税制を考えた資産形成です。資産形成における非課税制度としてはNISAや確定拠出年金(DC)があります。これら税制などのメリットを活用しつつ、お金をどういった資産にどこで投資をするのかについて考えながら資産形成をおこなうのがアセット・ロケーションです。

 

みなさんは、アセット・ロケーションという言葉をご存じでしょうか? そのまま直訳するとアセット(資産)のロケーション(配置)となります。これは、資産形成においてよく用いられるアセット・アロケーション(資産配分)と似た言葉ですが、その意味はまったく異なります。

 

アセット・アロケーションは、株式や債券、預金など、お金をどのような資産に配分するのかを指します。一方でアセット・ロケーションとは、たとえばNISA口座では債券、確定拠出年金では株式の投資信託といった具合に、税制や資金使途などを考慮して、どういった資産形成をどこでおこなうのか、資産形成全体のなかで投資目的に応じて非課税口座などお金の配分を使い分けることをいいます。

NISAより非課税効果が大きい「確定拠出年金」

アセット・ロケーションの考え方では、まず、確定拠出年金のような非課税効果が大きいものを優先的に活用すべきものとします。非課税といっても同じではありません。投資信託の取引において一般的に考えられる非課税は3点あります。それは、①資産形成にまわすお金に対する扱い、②投資信託の売却益や分配金の扱い、そして、③最終的にお金を手元に戻す際の扱いです。

 

非課税といえば一般的にはNISAが有名ですが、NISAによる非課税はこれら3点セットのうちの②と③だけです。それに対して、法改正により多くの現役世代が利用できることになった確定拠出年金は、非課税の3点セットすべての優遇を受けることができます。

 

この違いは大きなものです。イメージを持っていただくために、ものすごく簡略化してお話しますので、その点はご了承ください。たとえば、年収800万円の家庭の課税所得は一般的に400万円程度ですので、所得税率は20%になります。

 

この人が確定拠出年金で月々2万円の資産形成をした場合、この24万円が所得控除の対象になるので、24万円×20%=4万8千円も所得税の支払いが減るのです。しかも、所得税が減るということは、住んでいる地域に支払う住民税にも影響します。住民税の税率をわかりやすく10%とすれば、さらに2万4千円もお得になるのです。

 

これに対して、値上がり益や分配金にかかる非課税は意外と小さなものです。24万円で20%の利益が出たとしても、非課税効果は4万8千円の約20%=9千6百円(約1万円)です。この効果を逃す手はありませんよね。

 

 

ちなみに、最近人気のふるさと納税と比較してみると、年収800万円の人の家計構成や控除額にもよりますが課税所得をさきほどと同じく400万円とすれば、住民税は約40万円です。そのうちの20%の8万円はふるさと納税が活用できますが、返礼率を高めに50%と見積もっても金額換算ベースで4万円です。ふるさと納税のメリットも大きいのですが、確定拠出年金もどれだけ利用価値があるのかお分かりいただけますよね。もちろん、両方を活用すれば良いのです。

 

現在では、普通のサラリーマンが確定拠出年金の非課税枠を活用できる上限金額は2万円程度と大金ではないことから、可能であればフルに活用することを考えた方が良いというのが私の意見です。

 

自営業者の場合には最大で月に6万8千円まで利用できますので、さきほど説明した金額よりも効果は格段に大きくなります。ただし、金額によっては課税対象となる金額が変わることによって所得税率が下がる場合もありますので、効果が変わります。実際に行う場合には、シュミレーション・ツールでご確認したほうが確実です。

 

もちろん制約もあります。そのなかでも、もっとも気にしないといけないものは、お金の引き出しの制約でしょう。貯蓄をしているつもりでも、想定外の出費が急に必要になった時に使うことができなければ、老後まで頼りにすべきお金にはなりません。この点だけは注意しましょう。

 

老後への備えとして、保険会社が取り扱っている個人年金という商品があります。あたかも、公的年金の個人バージョンのようなネーミングです。日本では、この個人年金が広く普及していますが、新規に保険に加入した場合、節税効果だけを考えれば、年間4万円を上限とした生命保険料控除しかありません。所得税率が同じ20%とすれば8千円の節税効果になります。全額が所得控除の対象になる確定拠出年金のほうが、税制上は圧倒的に有利といえるでしょう。

 

アセット・ロケーションの答えは1つではないのですが、ここでは一般的にいわれている考え方を提示しておきましょう。

 

それは、株式などの成長性の高い資産に投資するものは、非課税の口座でおこなったほうがよいというものです。投資にリスクはつきものなので絶対ということはいえないのですが、成長性の高い資産は期待通りになれば、長期間で投資金額よりも大きな金額に成長します。この値上がり益が課税されず、そのお金を利用する場合も税金がかからないのであれば、それに越したことはありません。

 

普段の生活でお店を選んで買い物をし、こまめにポイントを貯めるのと同じように、お金を上手に増やすには、利用できるものを最大限上手に活用することです。

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