今回は、補助金・助成金の受給に成功した企業の実例を見ていきます。※本連載は、福井泰代氏が代表取締役を務める「株式会社ナビット」による発行小冊子、『経営者のための助成金のすすめ』から、助成金と補助金によって、企業にどのようなメリットがあるのかを紹介します。

補助金受給の難関は「一次審査の書類選考」

昨年2014年は、とにかくネコも杓子も「ものづくり補助金」が話題だったため、当社もご多分にもれず、コンサルタントの会社にものづくり補助金の申請を相談しました。

 

ところが、申請内容がソフト開発だったため、ものづくりは「もの」が中心なので認められる経費が限られてますよ、と言われて、代わりに「新製品・新技術開発助成金事業」という最高額3000万のうちの1/2の1500万が支給される補助金を紹介されました。

 

当社はこれに、どうしても開発したい、当社の今後の根幹となるシステムの開発を、ダメモトで申請しました。金額はなんと! 一番高い3000万です。審査方法はまず一次審査は書類選考で、その次がいきなり面接で最終選考でした。

 

結論から言うと、当社はこの補助金の審査に見事に合格し、1500万の補助金の権利を獲得することができました。

 

その時に感じたのは、とにかく「費用として着手金がかかり、成功報酬を取られてしまっても、経験豊かな、専門のコンサルタントに頼むことが一番近道だ」ということです。というのは、とにかく一次審査の書類選考さえ通ってしまえば、もう通ったもと同じですよ、と言われて、正にその通りだったからです。

 

実際、殆どの会社が一次の書類審査で落ちてしまうのを目の当たりにしました。理由の大半は「申請書類の不備」。とにかく書類審査で殆ど落ちてしまうので、何度もコンサルタントに申請書類がこれでいいか? コンサルタントにチェックしてもらう、というのがアドバイスでした。

 

そのため、当社は何回も窓口とコンサルタントのところに足を運び、申請書類をみてもらい、言われた通りに直しました。

 

具体的に直した内容は、達成目標の数値をそのシステムを開発することでどれだけ時間が短縮されるか、ということがアピールできるようなものにする、スケジュール表には「基本設計」「製造」と大雑把な書き方ではなく、どの機能の設計なのか、製造なのか、外注に委託する場合はその会社名を明記する、など詳細に記載する、事業計画では3月末まで開発なのに4月からいきなり売上が上がっているのはおかしいので間をあけるなど、内容というよりは、矛盾がないか? をチェックするためのチェックシートがあり、それにスミ、スミ、スミとチェックを入れられるような「なんてことない」指摘が殆どでした。

 

これが高倍率を勝ち抜いた、一次審査の実態でした。10社のうち8社がここで落ちました。一次が受かった時点で「もうほとんど受かったようなものですよ」と言われたのを覚えています。

 

それでも金額が大きいため、最終の面接は万全の体制で臨みました。具体的にはコンサルタントに面接のシミュレーションをしてもらい、想定される質疑応答集を用意しました。キンコーズでパネルを作ってそれでプレゼンした方がいい、というアドバイスをもらい、パネルを何枚か用意しました。結果は1月後にきて、無事に合格でした!

 

この経験から学んだのは、とにかく経験豊かな専門家にアドバイスをもらうことの重要性でした。もしアドバイスがなければ、撃沈されていたでしょう。まず、適切な助成金まで辿りつけなかったし、ケアレスミスで一次の書類選考で落ちていたでしょう。

 

また、ものづくりでは、一次でダメでも、同じ内容で第二次で応募がかかるので、とにかく一次から申請した方が有利だったりと、各助成金・補助金ごとに微妙にノウハウが違い、「これだ」という決め手がありません。そのために、アドバイザーの経験値や勘どころが、実は重要なポイントなのです。

人気の助成金が「唐突に打ち切られる」こともある

2013年当社が取得した助成金が、「成長分野等人材育成視線報奨金支援奨励金」です。IT業界限定の研修のための助成金で、新しいプログラム言語を習得したりする研修費を、「全額」国が後から返してくれる、かなりの太っ腹な助成金だったため、とても人気がありました。

 

当時、業界的に圧倒的にアプリを開発するプログラマーが不足していました。そのために、応募をかけても人を確保できず、社内の人にてっとりばやく勉強してもらって、即戦力として使いたい、というニーズを、この助成金は見事にとらえていました。

 

当社も知り合いの会社にご紹介していただき、大急ぎで5月16日に研修の予定を記載した、申請書類を提出しました。とてもいい助成金などで当社でも研修を実施しようと思いきや、6月に、あまりにも唐突にこの助成金は「締切り」となりました。

 

終わり方があまりに唐突だったため、逆に、かなりインパクトがありました。周りには申請に間に合わなかった会社も多く、いかに助成金が「早い者勝ち」なのか? を痛感した出来事でした。

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