今回は、高齢化社会で想定される相続税負担増の問題について説明いたします。※本連載は、税理士・田中潤氏著『きっと今までになかった相続の権利調整を考える本』(メディアパル)から一部を抜粋し、相続を円滑に進める「権利調整」について、分かりやすく解説します。

「結婚をしない相続人」が高齢者となり・・・

日本では高齢者、そして、独り暮らしの世帯が将来的に急増することが見込まれています。これは戦後70年の平和な営みの中で夫婦の内1人が残り、そのまま1人暮らしになるケースが多くなっていることと、元々結婚をしないできた人が高齢者となり、親とも死別し、1人暮らしとなるケースが増えていることによります。

 

こうした人たちに相続が生じた場合、相続人の相続税負担額は大きくなる可能性があります。まず一つは、亡くなった人が居住していた土地を相続した場合、小規模宅地の特例による減額が使えないからです。

 

この制度は、被相続人が居住していた不動産に同居していた相続人がその後も住み続ける場合、土地については100坪(330㎡)までは評価額を80%減額出来るという制度です。

 

例えば、相続税評価額が6000万円である60坪の土地を相続し住み続けた場合、相続財産の価額は1200万円(6000万円×(1-0.8)=1200万円)となるのに対し、相続人が居住していなかった場合は特別な場合を除き6000万円がそのまま申告すべき価額となるのです。

 

相続人が1人の場合、すべての財産の合計額が3600万円を超えると相続税は課税されるので、この土地に居住していなかった場合はこれを相続しただけで相続税を納めなければなりません。

配偶者がいないケースで生じる問題とは?

今後はこうした形で、小規模宅地の特例が使えないために相続税を課せられるケースがどんどん増えていくと思われます。何故なら高齢化社会が進む中で、相続人自身が高齢化しており、1次相続では同居している相続人(妻)が小規模宅地の特例を受けることが出来たとしても、その相続人が亡くなった時には次の相続人(子)は同居していなかった、ということが多くなっていくからです。

 

もう一つの相続税課税拡大の可能性は配偶者がいなくなっていることです。相続税の申告上、相続財産の合計額の内、配偶者の法定相続分または配偶者の相続する財産が1億6000万円までの金額のいずれか大きい金額に対する相続税は免除されます。

 

1次相続、つまり、配偶者がいる場合は基本的に全体の相続税は最低でも半分は免除される仕組みです。この特例は親から子への相続では適用されません。つまり、配偶者不在の2次相続が今後確実に増していくことが予測され、当然これに伴なって相続税の課税を受ける人は多くなっていくことになるでしょう。

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    本連載は、2015年7月31日刊行の書籍『きっと今までになかった相続の権利調整を考える本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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