前回に引き続き、地域通貨事業のモデル事例として、北海道苫小牧市の「とまチョップポイント」について見ていきます。

初年度で100の行政サービスにポイントを付与

前回の続きです。

 

苫小牧市の積極的な姿勢は、とまチョップポイントを発行する豊富なメニューからうかがい知ることができます。

 

分野は大きく四つに分けることができます。

 

まず福祉関連としては雪かきボランティア、介護福祉、認知症サポートなどがあります。二つ目はスポーツ関連で、市のマラソン大会、スポーツフェスティバル、アイスホッケーの試合観戦などでポイントを発行するほか、今後の案としてプロ野球や大相撲などとも連携を図ります。

 

苫小牧市はアイススケートリンクを保有し、王子イーグルスという地元のアイスホッケーチームが人気です。当然ながら、イーグルスの応援でもポイントが貯まります。三つ目は公共施設の利用によるポイント発行で、運動施設としてはスケート場や体育館など13施設とその他4施設でポイントを発行。文化施設は次年度以降の導入予定です。最後はその他の分野で、各種地域イベント参加でポイントが貯まります。今後は、選挙や議会傍聴などでのポイント付与も検討しています。

 

初年度だけで最低100の行政サービスにポイントを付与することを予定していますので、市民はポイント獲得する機会はかなり多いと言えます。図表は、サービス開始の初月度にポイントが付与されるサービスの一部です。こうして並べてみると行政と住民の接点となるいろいろな場面で、とまチョップポイントを貯めるチャンスとなっていることがわかるでしょう。

 

この点が、自治体が主体となって取り組むケースの良いところです。行政サービスは市民生活に不可欠なものですが、頻度には個人差があります。行政サービスと地域通貨の連携は、有効に機能すれ大きな成果が期待できると思います。

 

【図表 ポイントが付与されるサービス】

検討指示からサービス開始まで約1年で実現

苫小牧市のように、自治体が積極的に地域通貨を発行する事例としては先駆的であり、この取り組みは全国的にも注目されると思います。この先駆的取り組みは、岩倉市長のイニチアチブによるところが大きいと思います。

 

人口とお金の苫小牧市からの流出を、市長というお立場で大きな問題として捉えられており、その対策の一つとして地域通貨「とまチョップ」導入検討を指示されました。検討指示からサービス開始まで、予算編成・議会承認・地方創生交付金申請手続き、高松市のめぐりんや日野市の新撰組ポイントなどの視察をすべて含めて約1年というスピードでした。

 

苫小牧市のサービスは始まったばかりですが、3年間という実証期間を設けて、3年後に課題等含めて効果検証することになります。

本連載は、2016年9月9日刊行の書籍『地域通貨で実現する 地方創生』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地域通貨で実現する 地方創生

地域通貨で実現する 地方創生

納村 哲二

幻冬舎メディアコンサルティング

本書は、地域活性化に興味のある人や自治体・企業・団体に向けて、地域活性化のための1つの有効な手段と思われる「地域通貨」を軸にした、事例紹介を含めた参考書・指南書です。 地域活性化は都市・地方の双方にとって喫緊の…

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