前回に引き続き、地域通貨事業のモデル事例として、茨城県笠間市「かぽかカード」について見ていきます。

廃食油になる再生エネルギーの仕組みづくりにも貢献

前回の続きです。

 

三つ目はNPO法人や社会福祉団体など市民活動団体への寄付です。寄付する事業の候補先はウェブサイトで公開され、寄付されたポイントが規定のポイントに達すると市から助成金が交付される仕組みです。助成金が交付された市民団体の事業としてはボランティアサークルのユニフォーム代支援、イベント時に使うガスコンロ購入代の支援などがあります。

 

珍しい取り組みとして、地域貢献事業の実施と市民活動団体の寄付については事業のメニュー案を市民からの提案を受け付けており、住民のニーズやリクエストが反映されやすい仕組みとしています。

 

また、2016年からは、各家庭で出る廃食油を回収し、リサイクルする環境保全の取り組みも実施しています。笠間市は笠間市型循環モデル社会の構築を目指し、NPO法人s茨城・エコ・カルチャー、株式会社テクモア、市の協働事業に茨城大学の協力を得て、全国初となる廃食油の回収とリサイクルシステムの仕組みづくりを実施しています。

 

市内で発生した廃食油を、NPO法人、行政、団体、民間が協力して再生エネルギーとなるバイオ重油として活用する仕組みづくりによって、CO2削減、地球温暖化防止を目指した施策を実施し、バイオ重油を市民活動支援事業への協力金付き商品とすることで、地域の活性化と新たな行政財源の確保を目指しています。

 

市は、学校給食などのほかに家庭の廃食油回収を呼びかけています。家庭の廃食油は、子供会等での買い取りに加え改修奨励金が支払われるほか、市民が廃食油を市役所へ持ち込む場合には、500ミリリットルにつき、かぽかポイントを付与しています。廃食油をリサイクルして精製された「バイオ重油」は、市の入浴施設である「笠間市いこいの家はなさか」でバイオ重油の試験燃焼を実施し、重油の代替エネルギーとして、CO2削減や燃料のコスト削減に効果があることが茨城大学の協力のもと実証され、「はなさか」で本格利用が始まっています。

 

また、NPO法人は、「協力金付バイオ重油」1リットルの販売につき1円を「循環型社会形成協力金」として市に納入します。協力金は、笠間市地域ポイント制度の財源となります。市は、かぽかポイント付与を動機づけにして、循環型社会の構築を促す新たな挑戦に取り組んでいます。

 

【図表 「KapoCa」制度のイメージ図】

アイデア次第で広がる地域通貨の利用方法

さて、ここでは地域通貨や地域ポイントを活用している事例をご紹介させて頂きましたが、事例は他にもたくさんあります。地域の特性や抱えている事情、歴史や風土、住民の気質などによっても活性化の効果が出やすい方法や、実行しやすい方法が異なります。

 

地域通貨の導入・運用の方法に王道も正解もありません。どの地域も、導入してすぐにうまくいったわけではありませんし、今なお試行錯誤しながら自分たちに最も良い仕組みを模索し、日々改善を重ねていらっしゃいます。

 

地域通貨を地域のインフラとして捉えると、あとはアイデア次第でさまざまな利用方法が発想されると思います。「自分たちならこんなことができるかもしれない」「こういう目的のために地域通貨が使えるかもしれない」と仲間たちと議論してみることも成功に向けた重要なことだと思います。

本連載は、2016年9月9日刊行の書籍『地域通貨で実現する 地方創生』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地域通貨で実現する 地方創生

地域通貨で実現する 地方創生

納村 哲二

幻冬舎メディアコンサルティング

本書は、地域活性化に興味のある人や自治体・企業・団体に向けて、地域活性化のための1つの有効な手段と思われる「地域通貨」を軸にした、事例紹介を含めた参考書・指南書です。 地域活性化は都市・地方の双方にとって喫緊の…

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