前回は、地域通貨事業のモデル事例として、北海道苫小牧市「とまチョップポイントについて取り上げました。今回は、新潟県阿賀野市の「あがのポイント」について見ていきます。

市が予算計上してバックアップする「地域通貨事業」

事例④【新潟県阿賀野市(あがのポイント(略称:アポ))】

 

通貨プロフィール:あがのポイントは、新潟県阿賀野市のポイントサービスで、ボランティア活動や健康関連のイベントへの参加、教室や講座への参加でポイントを発行するなど自治体が積極的に導入・普及を支援しています。市内病院での分娩や人間ドックの受診などもポイント発行の対象になっています。

 

ポイント制度をあらゆる行政サービスとひも付ける人口4万3000人の新潟県阿賀野市では2016年3月から新たなポイント制度をスタートしています。ポイント運営事務局は、市との業務委託契約を結んだ地元の販促・広告会社であるあがのプラット株式会社が担っています。

                                                                                          

導入検討からスタートまでが1年弱というスピード感から阿賀野市の積極的な姿勢がうかがえます。運用面では市がポイント発行などにおいて600万あまりのポイント原資負担の予算を計上して地域通貨事業をバックアップしています。

 

ポイント制度の名称はあがのポイントカードで、カード名は阿賀野とポイントの頭文字をとってAPOカードとなっています。カードを保有すると加盟店で買い物をした時や、市が指定するボランティア活動や健康診断の受診などでポイントが獲得でき、貯まったポイントは1ポイント1円として市内の商店街などで使うことができる仕組みです。

 

加盟店情報はあがのプラットのウェブサイトで確認することができます。また、市が行うイベント、教室、講座などの情報をまちづくりポイントとしてまとめ、それらに参加することで獲得できるポイント数についても同サイトで情報を発信しています。

市民病院での分娩や人間ドックの受診もポイント対象

人口4万3000人という人口規模もあり、あがのポイントの市の予算は600万円ですが、その付与対象となる行政サービスの多様さは特筆に値します。この背景には、田中市長の地域通貨に関する造詣の深さがあります。市長が地域通貨の機能・役割や可能性をよく研究されていて、それを単なる知識に留めずに、実際の市の施策に取り入れるという具体的行動に結びつけています。

 

ポイント獲得できるイベントや行政サービスとしては、例えばウオーキングの会や料理教室、救命士の講習会などがあり、老若男女に向けたバリエーションの広さが特徴といえます。市民病院での分娩や人間ドックの受診などが対象となる点も他の地域通貨と異なる点です。さらに市では身近なところに塾をつくる塾のコンビニ事業を展開し、この事業とポイント制度も結びつけています。

 

主な塾としては、幼児の遊び塾、子供の学習塾、大人の健康塾、趣味を楽しんだり街を知る好奇心塾などを立ち上げ、ポイント制度と住民との接点を増やす予定。この方針と内容は、APOカードの説明記事とともに、市の広報誌の中で発表されました。市長自らがポイント事業の意味づけや塾の構想などをコラムとして執筆されていますし、住民にも参加を呼びかけています。このことからも市の前向きに取り組む姿勢や、地域通貨の普及を目指す意気込みが感じられます。

 

【図表 阿賀野市】

本連載は、2016年9月9日刊行の書籍『地域通貨で実現する 地方創生』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地域通貨で実現する 地方創生

地域通貨で実現する 地方創生

納村 哲二

幻冬舎メディアコンサルティング

本書は、地域活性化に興味のある人や自治体・企業・団体に向けて、地域活性化のための1つの有効な手段と思われる「地域通貨」を軸にした、事例紹介を含めた参考書・指南書です。 地域活性化は都市・地方の双方にとって喫緊の…

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