(※写真はイメージです/PIXTA)

おひとりさまの場合、財産を譲る相続人がいないというケースも少なくありません。誰にも相続されなかった財産は国庫に納められることになりますが、あらかじめ遺言を残すことで「生きた財産」として活用する方法もあります。本記事では『「ひとり終活」は備えが9割』(青春出版社)から一部抜粋し、おひとりさまが終活で検討したい「財産の譲り方」について解説します。

相続人不在で国庫に入る遺産は年600億円に上る

突然ですが、〝600億円〟という数字、何だと思われますか?

 

これは相続人が不在で遺産を承継する人がおらず、国に納められた年間の総額です。この額は年々増加しており、相続人がいない相続がいかに増えているかを如実に表しています。

 

相続人不存在というのは、法定相続人が1人もいない状態のことです。亡くなった時に配偶者はもちろん、子ども、親、兄弟や姉妹、そして甥・姪すらいないということです。

 

なかには相続人がいたにはいたが、何らかの事情で相続を拒否するケースもあります。「相続放棄」と呼ばれるものです。亡くなったことを知り、自分が相続人であると知った時から、3カ月以内に家庭裁判所に対し申し出を行い、認められれば本来の相続人から外れます。

 

ただ、相続放棄については、プラスの財産より負債のほうが多い、処分に困る不動産があるといった特別な事情がある際に行われることがほとんどです。

 

とすると、先の600億円という数字の内訳の多くは、初めから相続人がいないおひとりさまが遺した財産が大部分を占めると推察されます。

 

実際のところ、おひとりさまであっても、自分が遺した財産を積極的に国に納めたいと希望する人は少ないように感じます。これまで実務を行ってきた中でも、何かしら自分が希望する人や団体に遺したいと考えている方はたくさんおられます。

 

問題は、特定の人や団体を指定できるかということにかかっています。どのような団体がいいかなど、こちらからアドバイスはできますが、結局は本人しか決定し得ないことなのです。

 

自分の希望を叶えるために遺言というしっかりした形を遺しておくのか、結局、手をつけられないまま終わってしまうのかで、その後の流れが大きく変わってきます。

 

相続人がいない、あるいは相続人以外の人や団体に遺したいという思いがあるなら、この章のテーマとなっている遺言を作成することになります。遺言があれば、相続人以外の人に遺産を渡すことができますし、国庫帰属を回避することができます。

 

おひとりさまにとって、遺言は自分の希望を叶えるための最大の相続ツールだといっても過言ではないでしょう。

 

「遺贈」を選択する人も増えている

最近では、相続人できない人や団体に遺産を遺す「遺贈」を選択する人が増えているようです。筆者も遺言執行者として公益団体に遺贈する業務に当たっています。守秘義務の関係で詳細はお伝えできませんが、子どもを支援するための公益財団が遺贈の対象となっています。

 

国庫は嫌だと言いつつも、なかなか遺贈先を決められない方もいらっしゃいます。また、遺族先に指定したいと思った相手が受け入れをしていないということがあるのも事実です。

 

筆者の依頼者の1人にも、ある自治体に遺贈することを望んだものの、事前に問い合わせると遺贈は受け付けていないということがありました。その時は市立病院を遺贈先にしてはどうかと提案されました。

 

このように、無事に遺贈先を決めたとしても受け付けないところもあるので、事前に確認しておいたほうがいいでしょう。

 

「国庫は嫌だが、どこに遺贈したいか思いつかない」という場合は、幼少期からこれまでの自分の人生を振り返ってみるといいでしょう。余裕があれば自分史を書いてみると、遺言の参考になると思います。

 

子どもの頃に交通事故に遭い大変な思いをした、奨学金で学校を卒業した、この趣味のおかげで充実した時間を過ごすことができている……など、過去や今の生活を振り返れば、いろいろな思いが込み上げてくるものです。そうして今度は、未来につながる遺言を作成すれば、自分の資産は生きた財産となります。

 

おひとりさまが社会に貢献できることはたくさんあるのです。

 

 

岡 信太郎

司法書士

 

※本記事は『「ひとり終活」は備えが9割』(青春出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

 

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