アメリカ・ヨーロッパ・APAC地域のM&A活動、それぞれの様相
下半期の始まり、アメリカ大陸におけるM&A(合併・買収)の取引量は、全業界・市場にわたって低迷しましたが、第3四半期の終わりには、いくつかの大型取引が成立したおかげで小さな活況を見せました。
ヨーロッパでは、厳しいマクロ経済環境が第3四半期のM&Aの減少を招いています。
一方、APAC地域のM&A活動は、同地域の止まることのない経済的勢いの象徴として、他の地域と対照的な活発さを見せています。APAC地域での取引量は、2022年を通じて、そして2023年初めにかけて、歴史的平均を大きく上回っています。
アメリカ大陸におけるM&A活動「減少傾向」に
アメリカ大陸における第3四半期の取引は、追い風も向かい風も混在する状況でした。利率の疲弊による取引量が低下していく一方で、第3四半期の市場の総取引額はアメリカの大型取引に頼っていました―最大のものはTMTセクターです。テクノロジーの分野では驚異的な95.3億米ドルの取引が行われ、取引量が37%減少したにもかかわらず、取引額を52%増加させました。
これらの大型取引によって支えられ、米国の西部および北東部市場はいずれも四半期ごとの増加を記録しました。取引の中には、ジョンソン・エンド・ジョンソンによる待望の420億米ドルのケンビューのスピンオフがあり、これは2023年のトップ5のグローバル取引の一つになると予想されています。7月から9月の間には、合計14の大型取引があり、すべて米国内で行われました。
米国はとくに沿岸地域で堅調さを保っていますが、ラテンアメリカとカナダでは第3四半期のM&A市場が厳しい状況に直面しています。
EMEAにおける大型取引の消失と取引量の減少
EMEA地域(ヨーロッパ、中東、アフリカ地域)のM&A取引量は、第3四半期に過去3年で最低に落ち込み、総額は年間および四半期ごとの両基準で減少しました。大型取引はほとんど存在せず、TMT(テクノロジー、メディア・エンターテイメント、テレコム)は弱まり、高い債務コストと縮小する資本市場が大型取引の資金調達の大きな障害となっていました。
それでも、いくつかのいいニュースはありました。取引額は今年初めに比べてそれほど低くはなく、多くの地域と業界において強みが見られました。また、パイプラインは依然として十分に供給されており、積極的に行動する人々にとって魅力的な機会が存在しています。
多くの地域で、TMTセクターは引き続き多くの機会を提供しています。これは、ヨーロッパの通信部門の再編、ソフトウェア分野の統合、そして常に必要とされるデジタル化の推進など、複数の要因に支えられています。また、以前は買収対象から外れていた多くの企業が、現在ではより手ごろな価格で入手可能になっていることも、影響を与えています。
APACで最も活発だったのは「TMTセクター」
第3四半期の活動が鈍化しても、APACは堅調にその地位を保ち、2021年の大半に比べて高い取引量を維持しました。この安定性が、APACを相対的に世界で最も優れた市場に押し上げています。
この地域では第3四半期に合計1,894件の取引が行われ、前四半期に比べ21%減少し、前年同期比で28%という大幅な減少を記録しました。しかし、これらの減少はアメリカやEMEAで見られた減少よりも少なく、世界で最も速いペースで成長している地域経済としての地位を反映していると考えられます。
総M&A額はさらに強固で、第3四半期には合計1790億米ドルが動き、前四半期からは2%の増加を見せましたが、昨年の同期に比べては10.5%の減少となっています。
各セクターのM&A活動において、APACで最も活発だったのはTMTセクターで、486件の取引、総額382億米ドルでした。
APAC経済の基盤であるI&C(インストルメンテーション・アンド・コントロールl:計装と制御)セクターは352件の取引でこれに続き、総M&A額317億米ドルで全体の第三位に位置しました。金融サービスセクターも大きな影響を与え、取引額が四半期ごとに158%増加し、総額325億米ドルに達しました。
とくに注目されたのは、金融サービスセクターに限らず、全セクターを通じて最大の取引である、リライアンス・インダストリーズによるインドのジオ・ファイナンシャル・サービスの194億米ドル規模のスピンオフでした。
清水 洋一郎
Datasite 日本責任者
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