早慶の受験生であっても“得点困難”なレベル…某私大2校で出題された「絶対に解けない世界史」2問【受験世界史研究家が解説】

早慶の受験生であっても“得点困難”なレベル…某私大2校で出題された「絶対に解けない世界史」2問【受験世界史研究家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載では、受験世界史研究家・稲田義智氏の著書『絶対に解けない受験世界史3』(パブリブ)より一部を抜粋し、大学入試で実際に出題された世界史の「難問」を紹介していきます。本書における難問とは、「一応歴史の問題ではあるが、受験世界史の範囲を大きく逸脱し、一般の受験生には根拠ある解答がおおよそ不可能な問題」。受験生から一般の歴史好き、腕に覚えのある方に至るまで、ぜひチャレンジしてみてください。

<前回記事>選択肢を見て愕然…某有名私大の入試で出た「絶対に解けない世界史の問題」3連発【受験世界史研究家が解説】

その名称、近年の教科書や参考書には載っていません

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【2020年度 成城大学 文芸学部 A方式

 

問題4 アフリカ諸国の独立後も先進国の経済的介入は続いた。コンゴ民主共和国はこうした国の一つである。同国は,当初ベルギー直轄の植民地ではなく,国王の私有地として支配されていた。その所有者[ c ]は天然ゴムの採取に現地人を酷使したため,『トム=ソーヤーの冒険』の著者として有名な[ d ]が批判的な著作を出版するなど国際的な非難を浴びた。その領地は20世紀初頭にベルギー政府直轄の植民地となり,1960年にコンゴ共和国として独立を果たすが,その後も現地の経済的利権を確保しようとするベルギーによる介入は続き,コンゴ動乱が引き起こされた。動乱が収束した後も,独裁体制が強まるなかで貧困などの経済問題が深刻化した。その間,コンゴ民主共和国に改名していた同国は,その後71年に国名を[ e ]に変更し,97年には国名にコンゴという名称を復活させた。

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【解答解説】

cの正解はレオポルド2世で、これだけが範囲内である。残りは厳しい。dの正解はマーク=トウェイン。かなり古い課程では「金ぴか時代」の語とともに範囲内であったが、現行課程では消えている。eの正解のザイールは盲点で、ザイールとなっていた期間は1971~97年であるから、2000年代の教材だとまだ併記されていたものも多かった。しかし、近年の教材では独立時と同じ国名に戻ったことからコンゴ民主共和国のみの記載になっている。教科書や用語集でもザイールの国名で登場することはないから、現在の大多数の受験生はザイールに改称していたこと自体を知らないだろう。

 

なお、この大問では他に「解放の神学」(用語集頻度②*)等の細かい用語が問われていて、早慶の受験生であっても厳しい難易度であった。

 

(*用語集頻度…用語集では、収録された用語の横には丸数字がついており、これが検定教科書に載っていた数を示している。たとえば「シュメール人⑦」であれば、7冊の教科書に「シュメール人」という記載があることを示す。)

地図問題の一部で難易度が爆上がり

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【2020年度 武庫川女子大学 一般入試A方式】

 

問題4 次の1~5は,16~17世紀にかけて海外進出を果たした国々に関する記述である。文中の[  ]に入れるのにもっとも適切な人物を,下の解答群から選べ。また,各国の海外進出の拠点を次ページの地図上*の①~⓪から2か所ずつ選べ。ただし,解答の順序は問わない。(20点)

(*編註:本稿では記述1~5に続く【図表】を参照。)

 

1 スペイン:[ 21 ]の治世は「太陽のしずまぬ国」とよばれる全盛期であった。

拠点=[ 22 ],[ 23 ]

 

2 ポルトガル:[ 24 ]はアフリカ西岸の探険を推進した。

拠点=[ 25 ],[ 26 ]

 

3 オランダ:[ 27 ]のもと,スペインから事実上の独立を果たした。

拠点=[ 28 ],[ 29 ]

 

4 イギリス:[ 30 ]の治世で,ドレークを中心にスペインの無敵艦隊を破った。

拠点=[ 31 ],[ 32 ]

 

5 フランス:[ 33 ]の治世に,アメリカ大陸に広大な土地を得て,ルイジアナと名づけた。

拠点=[ 34 ],[ 35 ]

 

【図表】2020年度 武庫川女子大 一般入試A方式より

 

<解答群>

①アンリ4世  ②ウィレム3世  ③エリザベス1世  ④エンリケ  ⑤オラニエ公ウィレム  ⑥カルロス1世  ⑦チャールズ1世  ⑧フェリペ2世  ⑨ルイ14世

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【解答解説】

人物は全て容易。スペインは⑧フェリペ2世、ポルトガルは④エンリケ、オランダは⑤オラニエ公ウィレム、イギリスは③エリザベス1世、フランスは⑨ルイ14世。

 

地図の拠点選びも、スペインが③(ラパス)・④(マニラ)、ポルトガルが⑤(マカオ)・⑨(ゴア)、オランダが⓪(ケープタウン)、⑥(バタヴィア)まではそこまで難しくないが、英仏になった途端に難易度が跳ね上がる。イギリスは片方が②(ボストン)で、フランスも片方が①(ケベック)までは特定できるとして、⑦・⑧のどちらがカルカッタかというのは極端な難題だろう。早慶の受験生でもほとんどの人は判別できまい。

 

正解はカルカッタの方が沿岸に近いので⑦がカルカッタでイギリスの拠点、⑧はシャンデルナゴルでフランスの拠点。シャンデルナゴルではなくニューオーリンズを聞いてくれれば良問であったのに。

 

 

稲田 義智

受験世界史研究家

 

受験世界史研究家。東京大学文学部歴史文化学科卒。世界史への入り口はコーエーの『ヨーロッパ戦線』と『チンギスハーン・蒼き狼と白き牝鹿IV』だったが、実は『ファイナルファンタジータクティクス』と『サガフロンティア2』の影響も大きい気がする。一番時間を費やしたゲームは『Victoria(Revolution)』。ゲームしかしていなかった人生だったが、奇縁にて『絶対に解けない受験世界史シリーズ』(パブリブ刊)を出すことになった。楽しい執筆作業だったが、ちょっと当分入試問題は見たくない。

 

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※本連載は、稲田義智氏の著書『絶対に解けない受験世界史3』(パブリブ)より一部を抜粋・再編集したものです。

絶対に解けない受験世界史3

絶対に解けない受験世界史3

稲田 義智

パブリブ

悪問・難問・奇問・出題ミス…大学入試にはたびたびこれらの「誰にも解けないような問題」が登場し、受験生を悩ませてきました。 しかし、2017年に前作『絶対に解けない受験世界史2』を出版して以来、早稲田や慶應では悪問…

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