(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査で否認されると、納税者側の申告内容が認められず、追加で不足分の税金を課せられることになります。否認とは文字通り、認められないことを指します。税務調査では、どのような場合に否認されることが多く、否認された場合はどのような対応が必要になるのでしょうか。本稿では、税務調査で否認されることが多い事例や、否認された場合の対応方法について、税理士法人松本が解説します。

税務調査で否認されることが多い事例

税務調査では申告内容が否認された事例としては次のようなケースがあります。

 

●一部の従業員のみの会食に充てた費用をいつも福利厚生費として経費に計上していた

●取引先との打ち合わせ後に飲食した費用を会議費として経費に計上していた

●社長のプライベートな旅行の費用を旅費交通費として経費に計上していた

●家族に購入した土産品を交際費として経費に計上していた

●社用車としている車をプライベートで使用し、税金やガソリン代などを経費に計上していた

 

経費は、事業活動をするうえで必要になった支出ですが、上にご紹介した例はいずれも、事業上必要であったとは言い難い支出であると言えるでしょう。このような支出は税務調査で否認されるケースが多くなります。

 

■経費の否認とは?

税務調査で、実際に否認されることが多いのは経費についてです。売上を多めに計上すれば、それだけ所得額が増え、納税すべき額が増えてしまうため、売上を多く計上する人はいません。しかし、経費は多く計上すればするほど所得額を少なく見せることができるため、納税額を抑えるために経費として認められない支出まで、経費としてしまうケースがあるのです。

 

本来は、経費としては計上できない支出まで経費として計上されていれば、税務調査でそのことを指摘され、経費として認めてもらえません。これが、経費の否認です。

 

■経費が否認されたらどうなる?

税務調査で経費が否認されると、売上から差し引ける経費の額が減るため、所得額が大きくなり、新たな税負担が生じます。つまり、追徴課税がなされるのです。経費が否認されると、本来納めるべき税額との差分、差分の10%にあたる過少申告加算税、納税が遅くなった利息としての意味合いを持つ延滞税の支払いが必要になります。税負担が大きくなれば、それだけ手元に残るお金は少なくなってしまうため、できるだけ追徴課税は避けたいというのが納税者の本音でしょう。

 

しかし、税務調査で経費の否認をされたら、調査官の指摘を受け入れて納税するしかないのでしょうか。

経費が否認されたときの対応は2つ

税務調査で経費が否認された場合には、指摘を受け入れて修正申告をする方法と経費の正当性を主張し、経費の容認を求める方法の2つがあります。それぞれの対応方法についてご説明します。

 

【①経費の修正申告をする方法】

税務調査で経費が否認され、否認された内容に納得し、指摘を受け入れる場合には修正申告を行います。修正申告とは、納税額が少なかった場合に申告期限後に納税者自らが行う手続きです。

 

修正申告は、申告書を正しい内容で作り直し、再度税務署に提出するものです。個人の場合は、修正申告書を提出すれば、所得税だけでなく住民税も修正されることになります。法人の場合は、税務署に修正申告書を提出しても、税務署で修正できるのは国税のみです。そのため、自治体にも修正申告書を提出法人道府県民税・法人事業税・法人市町村民税の修正を行う必要があります。

 

また、不足していた本税、過少申告加算税、延滞税も支払わなければなりません。

 

【②経費の容認を求める方法】

実は、経費にはどこまでを経費として認めるかという明確な基準があるわけではありません。そのため、調査官には経費ではないと否認されたものについても、納税者側からすれば事業に関わる支出であり、否認されることに納得がいかないというケースも生じます。経費を否認されたからと言って、必ずすぐに否認を受け入れ、修正申告をする必要はありません。納得がいかない場合には、経費であることを証明するための交渉を行えばよいのです。

 

調査官が納税者側の主張に納得すれば、一度否認した経費であっても、再度経費として容認される可能性があります。修正申告を受け入れれば、納税額が上がるため、支出が増え、事業にも影響が生じるでしょう。経費の否認に納得できないようであれば、すぐに修正申告をするのではなく、経費の正当性について主張し、調査官と交渉を行うことが大切です。

税務調査の対応

税務調査時に経費を否認された場合、調査官も根拠なく、経費を否認するわけではありません。経費と認めないと判断したからには、その理由となる根拠があるはずであり、税務調査時に調査官の主張に反論することは、決して簡単ではないのです。

 

■税務調査官との対応方法 ~納税者が自力で税務調査官と渡り合うのは難しい

まず、税務調査官は税務調査のプロであり、あらゆる可能性を考えたうえで調査を行います。そのため、調査官と同等レベルの税の知識と税務調査のノウハウがなければ、税務調査官が納得できるだけの反論をするのは難しいのが現実です。

 

税務調査で調査官の主張をそのまま受け入れるのではなく、納税者側の意見も主張し、納得できない追徴課税を防ぐためには、税理士に対応を依頼することをおすすめします。ただし、税理士と一口に言っても、全ての税理士が税務調査に詳しいわけではありません。税理士にも得意分野があり、税理士だからと言って全員が税務調査のノウハウを持っているわけではないのです。税務調査の際に、適切に意見を主張するためには税務調査の豊富な経験を持つ税理士に対応を依頼するとよいでしょう。

 

■税務調査での反論の仕方 ~「真っ向から反論」はおすすめしない

税務調査の経験がなければ、調査官の主張に対し、全て真っ向から反論した方がよいと考えるかもしれません。しかし、調査官も根拠を持って否認をしていることから、納税者の主張が100%通るとは限りません。そこで重要なのが、交渉の落としどころをどこにするかということなのです。主張をぶつけ合い、税務調査を長引かせても、お互いにとってメリットはありません。調査官も、複数の税務調査を担当することから、できるだけ調査を長引かせずに終わらせたいという希望を持っています。そのため、一定箇所については税務調査官の主張を認めるものの、ほかの箇所については納税者の主張を認めてもらうなど、税務調査では調査官との駆け引きが大切になるわけです。

 

しかしながら、どのあたりを交渉の着地点とすればよいのかの見極めは簡単ではありません。納税者側の主張に重きを置きすぎると交渉が長引いてしまい、調査官の主張を受け入れすぎると追徴課税額が大きくなってしまいます。どのあたりであれば税務調査官も納得しやすく、追徴課税を最小限に抑えられるのかを早いタイミングで見極めることができるのは、税務調査の経験を豊富に持つ税理士だからこそできることであると言えるでしょう。

まとめ

税務調査で経費を否認されてしまった場合、調査官の主張を受け入れて修正申告を行うか、納税者側の主張を伝えて経費の再容認を求めるかの2つの対処法があります。明らかに経費として計上できない支出であった場合や金額のミスなどがあった場合には、指摘を受け入れて修正申告を行い、追徴課税に従うようにしましょう。しかしながら、事業上必要であった支出であれば、解釈の違いによって否認されているケースもあります。経費の否認に納得できない場合は税理士に相談し、納税者としての意見を主張することをおすすめします。

 

 

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

 

税理士法人松本

税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。

 

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