東京オフィス賃料は下落継続。物流市場は大量供給の影響で空室率が上昇-不動産クォータリー・レビュー2023年第3四半期

東京オフィス賃料は下落継続。物流市場は大量供給の影響で空室率が上昇-不動産クォータリー・レビュー2023年第3四半期
(写真はイメージです/PIXTA)

2023年7月~9月の東京オフィス賃貸市場では、東京Aクラスビルの成約賃料が下落し、空室率が上昇する結果となりました。一方、物流賃貸市場でも、首都圏・近畿圏ともに空室率が上昇しています。本稿ではニッセイ基礎研究所の吉田資氏が、2023年第3四半期の不動産市場の動向について解説します。

1.経済動向と住宅市場

11/15に公表予定の2023年7-9月期の実質GDPは、前期比▲0.2%(前期比年率▲0.9%)と4四半期ぶりのマイナス成長になったと推計される※1。前期の高成長の反動に加えて、輸入が輸出の伸びを上回り、外需が成長率を押し下げる見通しである。

 

経済産業省によると、7-9月期の鉱工業生産指数は前期比▲1.3%と2四半期ぶりの減産となった(図表-1)。業種別では、「自動車」(前期比+0.7%)は5四半期連続の増産となったが、「電子部品・デバイス」(同▲2.0%)や「化学(除く医薬品)」(同▲1.1%)が減産となった。

 

ニッセイ基礎研究所は、9月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2023年度+1.5%、2024年度+1.4%を予想する(図表-2)※2。海外経済の減速から輸出が景気の牽引役となることは当面期待できないものの、内需中心の成長が続く見通しである。

 

 

住宅市場では、住宅価格が上昇するなか、前期まで低調であった販売状況は回復に向かっている。

 

一方で、2023年9月の新設住宅着工戸数は68,941戸(前年同月比▲6.8%)、7-9月累計では約20.7万戸(前年同期比▲7.7%)となった(図表-3)。建築コスト上昇の影響などを受け、着工戸数が減少している。

 

 

 

2023年9月の首都圏のマンション新規発売戸数は2,120戸(前月同月比+4.1%)、7-9月累計では6,180戸(前年同期比+13.1%)となり5四半期ぶりに増加した(図表-4)。

 

9月の平均価格は6,727万円(前年同月比+1.1%)、m2単価は101.8万円(同+0.6%)、初月契約率は67.7% (同+6.1%)で、価格が上昇基調で推移するなか、初月契約率は前年同期を上回った。

 

 

東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2023年9月の首都圏の中古マンション成約件数は3,191件(前年同月比+6.7%)(図表-5)、7-9月累計では8,794件(前年同期比+4.2%)となり、9四半期ぶりに増加した。

 

9月の中古マンション平均価格は4,618万円(前年同月比+4.5%)、m2単価は72.4万円(同+4.8%)となった。中古マンション市場では取引価格の上昇が続いている。

 

 

 


※1 斎藤太郎『2023年7-9月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2023年10月31日)

※2 斎藤太郎『2023・2024年度経済見通し-23年4-6月期GDP2次速報後改定』(ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2023年9月8日)

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月9日に公開したレポートを転載したものです。

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